決して他国事ではない『ヨーロッパ新世紀』

ドラマ映画

ここまで没入する17分があっただろうか

「吸血鬼ドラキュラ」の舞台になったことで有名なルーマニア・トランシルヴァニア地方の小さな村を舞台にした群像劇です。

監督はチャウシェスク政権下のおぞましい社会状況を描いた『4ヶ月、3週と2日』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した、ルーマニアの巨匠クリスティアン・ムンジウ。

ダニー
ダニー

ということは、カンヌっぽさの強い作品なんだね!

bitotabi
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そうだね。ラース・フォン・トリアーの映画が好きな人にはオススメだよ。

村のささいな対立が深刻な紛争へと発展していく様を描きつつ、多くの火種を抱えたヨーロッパ、そして分断された世界の危うい現状を、まざまざとあぶり出しています。

そして住民が一堂に会する集会所でのクライマックスは、17分間にもおよぶ固定カメラの長回しショットで撮影され、私たち日本人にとっても他人事ではない”壊れゆく世界”の有り様が鮮烈に映像化されています。

bitotabi
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今回の記事では、『ヨーロッパ新世紀』の感想や解説をお届けします!

トランシルヴァニア地方の村。出稼ぎ先のドイツで暴力沙汰を起こしたマティアスが、この地に戻ってくる。しかし妻との関係は冷めきっており、森でのある事をきっかけに口がきけなくなった息子、衰弱した父への接し方にも迷う彼は、元恋人のシーラに心の安らぎを求める。ところがシーラが責任者を務める地元のパン工場が、アジアからの外国人労働者を迎え入れたことをきっかけに、よそ者を異端視した村人たちとの間に不穏な空気が流れ出す。やがて、そのささいな諍いは村全体を揺るがす激しい対立へと発展し、マティアスやその家族、シーラの人生をも一変させていく…。

映画『ヨーロッパ新世紀』公式サイトより引用

原題『R.M.N』とは

本作の原題は『R.M.N』です。

これ、どういう意味かと申しますと、MRIと同じ意味なんです。

あの医療現場で使われるMRIです。

主人公の父親が病に倒れ、その際にMRI画像が登場します。

しかし、タイトルにまでしたのはそれだけが理由ではありません。

複雑なルーマニアの地方トランシルヴァニアを、MRIで撮影するように微細な部分まで見せようというのがタイトルの理由なのです。

しかもこの映画は、2020年に実際に起きた事件を基に作られているので、ほとんど実情と変わりありません。

bitotabi
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それではここから、トランシルヴァニアのどのような部分を見せてくれるのか解説していきましょう!

 



トランシルヴァニアでは出稼ぎに行く

ルーマニア全体がそうかは分かりませんが、賃金があまりにも低いので、ヨーロッパに出稼ぎに行くことが多いんです。

主人公もドイツへ出稼ぎに行っていて、故郷ルーマニアのトランシルヴァニアに帰ってきたという設定です。

出稼ぎに行ってしまうので、トランシルヴァニアのような田舎では人手不足となり、さらに賃金の低い国から労働者が出稼ぎにやってきます。

スリランカなど、アジアの国からくることが多いそうです。

トランシルヴァニアは反ムスリム

劇中で、「ムスリムの触ったものを食べたくない」というシーンがあります。

彼らはとにかくイスラム教徒を受け入れません。

その昔、オスマン帝国に攻め込まれたからですね。

ちなみに、その時に闘った英雄の名前がドラキュラなんです。

しかし、何となくイメージがあるかもしれませんが、スリランカ人のほとんどは仏教徒なんです。

どうしてこのような誤解を生んでしまったのか。

 



とにかく移民を受け入れたくない

劇中では、トランシルヴァニアの村人たちは、とにかく移民を受け入れたくないと描かれていました。

その移民の国のことをよく知らなくてもとにかく他国の人を受け入れたくないんですね。

やはりその理由は、これまでに支配されてきたという歴史にあります。

オスマン帝国、ロシア、ハンガリーからの支配を受け、もう外から入ってくることに異常な拒否反応を示しているわけです。

このあたりの描き方が、コメディっちゃあコメディなのかもしれませんが、あまりカラッと笑えるものではありませんでした。

他国の問題と思うなかれ

最後に、本作を観た感想をお伝えします。

私は本作をヨーロッパやルーマニアだけの問題であるようには思えませんでした。

賃金が低いから、ものの値段がなかなか上げられないなど、同じような課題を抱えているのはもちろんですし、移民に対して拒否する雰囲気も否めないですよね。

たくさんの移民を受け入れないと、社会が回りにくい状況がありつつ、よく思わない風潮はほとんど同じだと思います。

近頃日本の田舎で、野生動物が現れるニュースも増えています。

これもまた、田舎の過疎化が進行しているのが理由でしょう。

やがてインフラも映画の中の村のように、インフラも行き届きにくくなるのかもしれません…。

加えて、招き猫とか日本人という単語も出てきます。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます!

『ヨーロッパ新世紀』の解説をお届けしました。

bitotabi
bitotabi

結構グサッと刺さるし、危機感を覚えますよ…。

ダニー
ダニー

次は『理想郷』も観たいね!

 

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