当時を語るには遅すぎて、ノスタルジーに浸るには早すぎた。
午前十時の映画祭にて『ヘアー』を鑑賞しました。
アカデミー賞作品『カッコーの巣の上で』のミロシュ・フォアマン監督の作品です。
今回の上映は、町山智浩さんの解説付きだったので、めちゃくちゃ堪能することができました!
町山さんの解説で得たものを参考にしつつ、映画「ヘアー」を解説します!
この記事を読むと、カウンターカルチャーについてよく分かるよ!
STORY
徴兵され、ベトナムの最前線に赴くことになったオクラホマ出身の青年クロード(ジョン・サヴェージ)は、2日後の出征を前にニューヨーク見物をすることに。セントラルパークでヒッピーたちの奔放なパフォーマンスに圧倒された彼は、召集令状を燃やしていたヒッピーのリーダー、ジョージ(トリート・ウィリアムズ)と意気投合、行動を共にすることに。公園で目にした馬上の令嬢シーラ(ビヴァリー・ダンジェロ)に心奪われたクロードは―。
午前十時の映画祭紹介ページより引用
1960年代後半が舞台です。
タイトル「HAIR」とは
まず、今作で押さえておかなければならないポイントは、今作は1960年代後半、アメリカにおけるカウンターカルチャーをテーマに描いた作品だということです。
当時、社会や親世代に対し、反抗心を抱く若者が多数現れました。
それが、カウンターカルチャーであり、ヒッピームーブメントだったのです。
髪を伸ばすことは、世の中への反抗の象徴でした。
男性は髪を短く切り揃え、社会的にまっとうな仕事に就くのが当然とされていた時代への反抗という訳です。
カウンターカルチャー
この映画を観るにあたって、カウンターカルチャーについて知っておくと、より映画の味わいが深まります。
セックス
映画の序盤で、馬に乗りながら、卑猥なことを女性に向かって歌い上げるシーンがございます。
これは、一見、ヒッピーはとんでもないならず者で、ひどい奴らだと感じてしまうシーンなのですが、そうではありません。
1960年代のアメリカにおいては、卑猥な言葉や下ネタですら、映画やテレビで流すこともご法度とされていました。
キリスト教の文化においては、性の戒律は厳しいものがありますからね…。
そんな文化への反発として、下ネタを堂々と言うことも、性革命のひとつなのであります。
スピリチュアル・宗教
上記の通り、キリスト教への反抗や疑問視も、カウンターカルチャーの一つです。
このあたりは、「エクソシスト」でも強く描かれます。
若者のキリスト教離れを暗に込めていることが、「エクソシスト」の最大の怖さなのです。
「HAIR」では、冒頭に”アクエリアス”という曲が流れます。
アクエリアスとは、みずがめ座のことで、この歌が何なのかというと、占星術的なものを若者が支持しているということを象徴しているのです。
占星術は、キリスト教においてはタブー。
キリスト教以前からある文化であり、キリスト教に対する信仰のブレを恐れたためですね。
その他にも、今作では、ヒンズー教を支持する若者の集団も登場します。
その流れにある、中盤の結婚式の妄想のシーンは、スピリチュアルな反抗を示唆するシーンなのです。
ドラッグ
もちろん、ドラッグも登場します。
そこまで深くは描かれませんが、ドラッグを使用して、主人公がトリップするシーンで、上記の妄想のシーンも流れます。
ドラッグとスピリチュアルの強い結びつきのようなものを感じずにはいられないですね。
異人種間結婚
interracialという単語をご存じでしょうか。
異人種が混合するという意味を表す言葉です。
アメリカでは。1965年まで、異人種間の結婚が法的に認められていませんでした。
黒人と白人が愛し合う描写から、これに対する反抗もまた、今作では強く描かれています。
遅すぎて早すぎた
「HAIR」は、元々、1968年に作られた同名のミュージカルを基にした映画です。
ミュージカルを観た直後に、ミロシュ・フォアマン監督は映画化を検討したそうですが、資金的な面に加えて、ある事由から断念せざるをえませんでした。
その自由が、上記のinterracialを筆頭としたカウンターカルチャーと繋がります。
1965年に異人種間の結婚が認められたとはいえ、まだまだ、保守的な人には受け入れられない思想でした。
加えて、ハリウッド事態も、今のように、自由に映画を作れるようになったのは、1968年のハリウッド革命以降。
資金もないし、泣く泣く断念したわけでございます。
しかしながら、映画を公開した1979年では、ベトナム戦争を批判するにはもう遅すぎたのです。
また、戦争が完全に終結したのは1975年。
ノスタルジックに語るにはまだ傷跡が残っており、早すぎた。
そんなこんなで、素晴らしい作品でありながら、当時ヒッピーだった人には”あんなものじゃない”と批判され、リベラルな人にも当然たたかれ、今一つヒットしなかったのでした。
しかし、私は、戦争に対して中指を立てつつ、かつ、リアルなヒッピー像(親に反抗しているはずなのに、金の無心をしたりする)を描こうとした監督に心から拍手を送りたいです。
ビートルズ
ビートルズもまた、ヒッピームーブメントに火をつけたことをご存じでしょうか。
カウンターカルチャーが芽生える以前の音楽というのは、大人しいものや美しいものばかりでした。
大衆的な悲痛や、世の中への怒りを表したロックンロールこそが、カウンターカルチャーの基盤だったのです。
ビートルズもまた、世界的なアーティストでありながら、カウンターカルチャーを牽引する存在でした。
ラブ&ピースに賛同するだけでなく、インドへ渡り、ドラッグやスピリチュアルの世界へも浸透していました。
1967年にリリースされた、”Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”を聞いたことがない人は、ぜひ聞いてみてください。
この意味がよく分かるはずです。
ニコラス・レイ
今作で、偉い軍人役を務めたニコラス・レイ。
彼もまた、カウンターカルチャーに火をつけた一人です。
ジェームス・ディーン主演の『理由なき反抗』
この作品は、カウンターカルチャーを象徴する映画の先駆けです。
それを監督したのがニコラス・レイその人。
なかなか粋なキャスティングだと思いませんか?
カウンターカルチャー映画のおすすめ
ここまで読んで、カウンターカルチャーやベトナム戦争をテーマに描いた作品に興味が出た人は、以下の作品をぜひご覧ください。
どれも素晴らしい作品です!
フォレストガンプも当時を舞台にしています!
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
「HAIR」はカウンターカルチャーを象徴する、攻撃的でありながらラブ&ピースな映画でした!
シンプルに曲だけでも楽しめます。Easy to hardは涙がでるほど素晴らしい。
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