少女は寡黙だ。でもそれは悪いことじゃない。
映画『コット、はじまりの夏』をシネリーブルで鑑賞しました。
『わたしは最悪。』、『燃ゆる女の肖像』、『パラサイト 半地下の家族』など若く作家性の強い才能をいくつも世に送り出して来た、今最も注目の新進気鋭のスタジオ、「NEON」の配給作品で、監督コルム・バレードも、主演のキャサリン・クリンチも本作が長編デビュー作。
![ダニー](https://www.three-minutes-philosophy.com/wp-content/uploads/2022/11/danny.png)
あらすじはこんな感じだよ👇
1981年、アイルランドの田舎町。
https://www.flag-pictures.co.jp/caitmovie/
大家族の中でひとり静かに暮らす9歳の少女コットは、赤ちゃんが生まれるまでの夏休みを遠い親戚夫婦のキンセラ家のもとで過ごすことに。寡黙なコットを優しく迎え入れるアイリンに髪を梳かしてもらったり、口下手で不器用ながら妻・アイリンを気遣うショーンと子牛の世話を手伝ったり、2人の温かな愛情をたっぷりと受け、一つひとつの生活を丁寧に過ごしていくうち、はじめは戸惑っていたコットの心境にも変化が訪れる。緑豊かな農場での暮らしに、今まで経験したことのなかった生きる喜びに包まれ、自分の居場所を見出すコット。いつしか本当の家族のようにかけがえのない時間を3人で重ねていく―。
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今回の記事では、『コット、はじまりの夏』のネタバレなしで見どころをお伝えしていきます。
キャサリン・クリンチの透明感
![](https://www.three-minutes-philosophy.com/wp-content/uploads/2024/01/image-1.png)
本作一番の見どころは何と言っても主演キャサリン・クリンチの透明感あふれる演技。
主人公で9歳の少女・コットを演じるのは、観る人の心をつかんで離さない存在感と、圧倒的透明感を持つキャサリン・クリンチ。主人公コットが抱えてきた諦観と、生きる喜びにあふれていくさまを、本作が映画デビューとは思えない繊細な演技で見事に表現しきっている。 さらにすべてのカットが完璧に計算された緑豊かな田舎の美しさ、木々の間からのぞく陽の光のあたたかさ。主人公コットを優しく包み込むような、それらすべての映像美が彼女の心象風景を絶妙に表現しており、スクリーンから一瞬も目を離すことのできない、切なくも愛おしい時間を私たちに体験させてくれる。
https://www.flag-pictures.co.jp/caitmovie/
かなりセリフが少ないので、表情や仕草で見せねばならない、難しい役どころ。
でも、困っていることとか、嬉しいんだろうなということがよく分かります。
めちゃくちゃ素敵でしたね…。
2022年アイルランドのアカデミー賞といわれるIFTA賞(アイリッシュ映画&テレビアカデミー賞)では史上最年少の12歳で主演女優賞を獲得したことも頷けます。
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ここから先は、本作のメッセージについて解説していきます。ネタバレを含みますのでご注意ください。
沈黙は悪くない
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本作の原題は『An Cailin Ciuin』英題は『The Quiet Girl』です。
「静かな少女」という意味ですね。
もちろんこれは主人公のコットを指します。
コットは、本読みが苦手で、誰かに想いを伝えることも苦手です。
また、9歳でもまだ、おねしょが治らないんです。
やや、発達の遅れや、場面緘黙的な傾向のある女の子なのかもしれません。
そんな少女が親戚夫婦、特に夫のショーンとの関りの中で自分を認めていくお話なんです。
ショーンはコットに向かって、
「沈黙は悪くない」
と彼女の寡黙な一面を受容するような言葉かけをします。
ショーン自身も、とっても寡黙な人なんですよね。
二人の関係は、あの名著『ハイジ』にそっくりなんです。
実際に『ハイジ』の本も、映画の中に登場しますので、意識して作ったことは間違いないでしょう。
また、何でもベラベラ話すことで、周囲を傷つける少し嫌な登場人物も出てきます。
おしゃべり過ぎるよりも、寡黙な方がいいことだってある。
そんなことを伝えてくれるストーリーになのです。
子を育てるのは親じゃなくてもいい
![](https://www.three-minutes-philosophy.com/wp-content/uploads/2024/01/maxresdefault.jpg)
子どもを育てるのは、必ずしも親でなくてはいけないのだろうか。
私はこれが一番本作で伝えたいことだったんじゃないかなと思います。
コットの実家は、たくさん家族がいる上に、経済的にも苦しい状況です。
また、お父さんは酒やギャンブルやタバコ、おそらく浮気もしているといったダメおやじっぷり。
赤ちゃんも産まれるし、ひと夏だけいとこのところへ預けようか…。
お母さんがそんな想いをもって、ショーンとアイリンのもとへ預けるのです。
コットにとって、ふたりは母のいとこ。いとこ叔父・叔母の関係にあたります。
そこまで近い親戚という訳ではないものの、愛情たっぷりに接してくるアイリン。
寡黙ながら大事なことを優しく教えてくれるショーン。
果たしてコットにとって、本当の家族と、ショーンとアイリン夫妻に育てられることはどちらが幸せなのでしょう。
答えはラストシーンで分かるはずです。泣けますよ。
核家族化している現代では、子育てを手伝ってくれる人が近くにいないという現状が多いです。
でも、近しい親戚以外だって、優しく育ててくれるそんなことを伝えているのでしょうね。
『カモン・カモン』もそんな映画でした。
感想
私はかなりの傑作だと思います。
ラストがね、とにかく泣ける。
キャストの演技も抜群です。
キャサリン・クリンチはもちろんなんですが、アイリン役のキャリー・クロウリーも、品のある丁寧な女性を見事に演じますし、ショーン役のアンドリュー・ベネットもアルムおんじよろしくの不器用ながら優しい男性を演じています。
4:3のカメラもいいですね。
最近なんだか流行ってますよね。『ファースト・カウ』もそうでした。
自然の美しさを魅せるためには、意外と有効なのかもしれません。
とにかく傑作。オススメです。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『コット、はじまりの夏』の見どころと感想をお伝えしました。
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主演の少女の演技は抜群だよ!
![bitotabi](https://www.three-minutes-philosophy.com/wp-content/uploads/2023/07/SP-Studio-4.png)
社会的なメッセージも心に響いてきますよ。
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