映画史に残るパンデミック・サバイバルの最新章『28年後…白骨の神殿(The Bone Temple)』を鑑賞。
本作で突きつけられたのは、ウイルスよりも恐ろしい「信仰の形」と、絶望の淵で鳴り響くロックの衝撃でした。

ジミーズやケルソン医師について、ストーリーだけでなく音楽的文化的な側面も以て考察していきます。

めっちゃネタバレだから観てから読んでね。
暴力に祈りを捧げる「ジミーズ」の狂気
本作のヴィランである「ジミーズ」は、これまでのシリーズに登場したどの集団とも異なります。彼らはレイジウイルス蔓延後の世界で育ち、文明の倫理を知らぬまま暴力が常態化したネイティブ世代です。

特筆すべきは、リーダーのジミー・クリスタルの造形です。金髪のウィッグに派手なトラックスーツをまとい、ジャラジャラとした宝飾品を身につけるその姿は、実在したイギリスの元国民的スターであり、死後に数百人への性的虐待が発覚した「最悪の怪物」ジミー・サヴィルを彷彿とさせます。

2002年で文明が止まったこの世界において、ジミー・サヴィルは「悪事が暴かれる前の輝かしい偶像」のまま人々の記憶に焼き付いています。ジミー・クリスタルはその歪んだ過去のアイコンを、あえて「悪魔崇拝」という形に変質させ、自らのカリスマ性を構築しました。1960年代のカルト指導者チャールズ・マンソンを思わせる冷徹な統治と、かつてのスターを模した不気味なファッション。この融合が、まともな宗教が機能しない極限状態における、逃げ場のない狂気を作り上げています。
部下を統治するためにケルソン医師を「悪魔」に仕立て上げるその手口は、冷徹で計算高いものです。
ケルソン医師と、モルヒネによる「ヒッピー的共生」
一方、レイフ・ファインズ演じるケルソン医師が取った行動は、ジミーズとは対照的な「人間性の再獲得」でした。彼が最強の感染者サムソンに対して試みたのは、医学と精神的アプローチを融合させた二段構えの治療です。

まず強力なモルヒネによって、ウイルスがもたらす猛烈な攻撃性(怒り)を物理的に沈静化させます。そして、怒りの霧が晴れた脳に対し、音楽や薬物による多幸感という刺激を与え、埋もれていた古い記憶や感情を掘り起こそうとしたのです。
共にモルヒネを味わい、レコードを聴き、意識を混濁させながら心を通わせる。その姿は、かつてドラッグと音楽で既存のシステムから脱却し、愛と平和を説いたヒッピーたちの姿と重なります。ケルソンにとって、この「共有」こそがウイルスに打ち勝つための唯一の対抗策でした。ラストでサムソンが「月」と呟いた瞬間、それは医学的な治療を超えた、魂の救済が成功した瞬間でもあったのです。

カルトとヒッピー。文明が崩壊した世の中をどのように生きぬくべきか。両者の対立を描くことで暗に伝えているような気がしました。
世界を切り裂くサウンドトラック
本作の熱量を支えているのは、間違いなくその選曲です。 デュラン・デュランの「Girls On Film」やレディオヘッドの「Everything in Its Right Place」が、荒廃した景色に奇妙な彩りを与え、クライマックスではアイアン・メイデンの「The Number Of The Beast(魔力の刻印)」が炸裂します。

音楽がもはや娯楽ではなく、文明崩壊後の世界を生き抜くための「最後の武器」として機能しているのが印象的でした。
結末の先に待つ、伝説の合流
ラスト、ジミーは自身の支配体制を維持するためにケルソンを刺しました。しかし、ケルソンによって「心」を取り戻したサムソンにより、その歪んだ王国は終焉を迎えます。死にゆくケルソンに「ありがとう」と告げて去るサムソンの姿は、このシリーズがようやく手にした希望の光です。
そして、最後に姿を見せた初代主人公ジム。完結編『28年後…:復讐』では、伝説の男ジム、ケルソンの遺志を継ぐ少年スパイク、そして知性を備えつつあるアルファ感染者サムソンという、異色の三者が共闘する展開が予想されます。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
シリーズに見られるじっとりした雰囲気は本作では感じにくかったですが、人間讃歌的なメッセージは健在。
前作では勇気を見せて成長した主人公が、巨大すぎる悪意によって押し潰されそうになる展開でしたが、ケルソン医師の信念を受け継いで次作ではきっと大いなる活躍をしてくれるでしょう。

「感染者と人間の共闘」という胸が熱くなる展開が、この三部作をどのように締めくくるのか。期待に胸が膨らみます。

はやく観たいぜ!
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