KADOKAWAが主催する「日本ホラー映画大賞」の第3回受賞・ノミネート作品が、ついにAmazonプライムビデオで配信開始となりました。毎回非常に楽しみにしている賞ということもあり、さっそく一挙に鑑賞いたしました。
この賞の最大の魅力は、大賞受賞作が長編商業映画としてデビューできるという点にあります。第1回大賞の『みなに幸あれ』、第2回大賞の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』ともに長編化されて劇場公開されましたが、どちらも大変見応えのある面白い作品に仕上がっていました。
今回の第3回は例年のように映画館で観るタイミングを逃してしまっていたのですが、そのぶん配信で新鮮な気持ちのまま楽しむことができました。

未来のホラー映画界を担う才能たちが集まった全作品の簡単な解説と、個人的に深く心に刺さった作品についてご紹介いたします。

それぞれのストーリーの要となる部分や結末に関するネタバレはないから安心してね~。
ノミネート・受賞作品 ざっくり解説
まずは、今回配信された作品のあらすじと見どころを簡潔にご紹介します。
『逆廊』
妊娠した女性が義父の元へと出掛ける物語です。ほぼ寝たきり状態である義父の言動が、どこかおかしく不穏な空気が漂います。ストーリーの後半から一気に加速していく、奇妙で予測のつかない展開が見事な作品です。
『15時21分国民保護サイレン発令』
ある日突然サイレンが鳴り響く、緊迫感に満ちたゾンビものです。ゾンビによるパニックそのものだけでなく、そこに至るまでの「前日譚」が非常にしっかりと丁寧に描かれています。誰もが経験した近年のコロナ禍に対する、鋭い社会風刺としても読める構造が秀逸です。
『闇の経絡』
津波で行方不明になった息子をめぐる夫婦の物語です。夫はすでに息子は死んだものとして諦めていますが、妻はまだ帰ってくると信じ続けています。そんな中、同じように父親が津波で行方不明になったという一人の男と出会うことで、物語は静かに動き出します。
『リフレイン』
双子を身籠った女性が友人を伴い、誰も住んでいない、近々取り壊される予定の故郷へと戻るお話です。懐かしみながらその様子を動画で撮影している最中、突然友人の姿が消えてしまいます。正確には、お互いの姿が消えて認識できなくなってしまっている状況です。視点を変えながら同じ場面が何度も繰り返される構造が、底知れない恐怖を生み出しています。
『蠱毒』
地方から上京し、東京で一人暮らしを始めた大学生の友人を訪ねるシチュエーションから始まります。日常の延長線上にあるからこそ恐ろしい、逃げ場のない不穏な空気感が特徴的な作品です。三者三様に色々ありそうな雰囲気作りがいい。
個人的ベスト&長編で観てみたい厳選4作品
ここからは、今回のラインナップの中でも特に映像のセンスや物語のポテンシャルを感じた、私自身のお気に入り作品を深掘りしてご紹介します。
『ファータル』:80年代カルトホラーへのリスペクトと圧倒的雰囲気作り
タイトルは「致命的」という意味を持ちますが、その名に恥じない強烈なインパクトを残す作品です。映画『HOUSE』や80年代のホラー映画が持っていたような、独特のレトロ感とカルトな世界観が見事に再現されています。巨匠ダリオ・アルジェント監督を彷彿とさせるような色使いや美術のセンスが実に素晴らしいです。 ほぼワンシチュエーションという限られた空間でありながら、知恵と工夫を凝らして「どうすれば映画として怖くなるか」を徹底的に考え抜いて作られている印象を受けました。特に、背景だけがグニャリと歪む演出などは視覚的にも非常に面白く、センスの高さが光っています。
『2階に恐竜がいる』:あえて残された「余白」に惹かれる不条理の恐怖
粘土アーティストと小学校教諭のカップルを主人公にした作品です。ある日、パートナーが「来ちゃだめだ。2階に恐竜がいる」と言い出すところから不穏な空気が漂い始めます。さらに、教諭である主人公が受け持つ子どもの提出物にも、なぜか「きょうりゅう」の文字が散見されるように。 全体に流れる不気味な雰囲気が素晴らしく、何より主演の方の演技力が抜群で一気に引き込まれました。作中には多くの謎が残されますが、それが脚本のまずさによるものではなく、観客に想像を委ねるためのあえての「余白」として機能しています。個人的には、今回最も長編映画としてスケールアップした姿を観てみたいと感じた、可能性に満ちた一編です。
『異星人回鍋肉(エイリアンホイコーロー)』:センスが爆発する狂気のコメディホラー
まず何と言ってもタイトルのインパクトが素晴らしく、劇中でのタイトルの出し方のタイミングや演出の段階で、すでに高いセンスを感じさせます。 今回の受賞作の中では唯一といっていいほどコメディ色が強い作品なのですが、笑いながら観ているうちに、物語が徐々に狂気を増していくバランスが絶妙です。映像の切り取り方やキャスト陣の演技力も頭一つ抜けている印象があり、シュールさと恐怖が同居する唯一無二のエンターテインメントに仕上がっています。
『夏の午後、おるすばんをしているの 』:大賞受賞も納得の、映画的な品格漂う傑作
夏の午後、一人で留守番をしている少女が奇妙な怪異に遭遇していく物語です。 少女のそばのお人形が、彼女のイマジナリーフレンドなのか、はたまた超常的なものなのか、そしてそれは味方をしてくれている存在なのかが判然としません。そもそも、起きている出来事が本当に現実の怪異なのか、それとも少女の心理が見せている幻影なのかすら明確にしない語り口は、名作『シャイニング』のような映画的な面白みと品格を感じさせます。 今回の大賞受賞という結果にも心から納得がいくクオリティです。日本家屋というロケーションもいい。こちらも非常に「余白」の多い作品ですので、長編映画としてどのように物語が膨らむのかをしっかり観てみたいと思わされました。個人的に大好きな、友達がめんつゆをグビっと豪快に飲むシーンは、もし長編化されることになってもカットせずに絶対にそのまま残してほしいと願っています。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
第3回目を迎えた日本ホラー映画大賞ですが、今回もそれぞれの作品が独自の牙を持っており、非常にレベルの高いクリエイターたちが集まったコンテストであったと実感いたしました。
大賞を受賞した『夏の午後、おるすばんをしているの』をはじめ、ここで見出した新しい才能たちが、今後どのような長編商業映画としてスクリーンに現れ、私たちを驚かせてくれるのか。

映画ファンの一人として、今から楽しみで仕方がありません。

『夏の午後、おるすばんをしているの』の長編公開も第4回も待ち遠しいね!
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