映画を観終わった後、「もやもや」に蓋をしていませんか?
映画ファンであれば、一度は「アメリカン・ニューシネマ」というジャンルに向き合い、そしてその独特の幕切れに戸惑った経験があるのではないでしょうか。
明快なカタルシスや教訓をあえて排し、時に観客を突き放すようなエンディング見せる。
多くの傑作が名を連ねるジャンルだと知りつつも、「結局どうなったの?」「これでいいの?」という困惑が先に立ち、苦手意識を持ってしまうのは無理もないことです。実際、名作と称されるほとんどの作品を観た後に私が抱いた感想もそうでした。
しかし、その「はて?」という違和感こそが、当時の映画人たちが既存のシステムへ叩きつけた挑戦状でもありました。
今回は、そんなニューシネマ特有の「もやつき」を抱えている方にこそ、その魅力を再発見していただきたいおすすめの作品をご紹介します。

各作品には、以前鑑賞して釈然としなかったという方のために、時代背景や意図を紐解いた解説記事も添えています。

ぜひ、これまでの鑑賞体験と照らし合わせながら読んでみてください。
アメリカン・ニューシネマとは:なぜ「もやもや」するのか
日本で「アメリカン・ニューシネマ」と呼ばれる作品群は、1960年代後半から70年代にかけてアメリカで製作された一連の映画を指します。本国では「ニュー・ハリウッド」と呼ばれ、それまでの映画の常識を根底から覆しました。
かつてのハリウッド映画といえば、勧善懲悪のハッピーエンドが王道でした。しかし、ニューシネマが描くのは、社会のレールから外れたアウトローやアンチ・ヒーローたちです。彼らが体制に抗い、時に暴力や背徳的な関係に溺れていく姿を、冷徹なリアリズムで映し出します。
そして、このジャンルに苦手意識を持つ人の中で最大の要因となっているのが、その「曖昧な終わり方」ではないでしょうか。その後主人公は犯罪者となってしまうほどのことをしでかして終えるエンディングや、あるいは死んでしまったのではないかというエンディング。
物語構造や登場人物が従来のハリウッド映画から大きく変化した結果、観客を突き放すような幕切れが多くなり、鑑賞後にスカッとせず、もやっとした感覚が残ることも少なくありません。
しかし、その「正解を提示しない余白」こそが、当時の閉塞感を打破しようとした若者たちの葛藤や、自由への渇望をリアルに表現しているのです。

そんな「もやもや」を抱えながらも、ぜひ改めて触れてみてほしい作品たちをご紹介します。
理解できなくても大丈夫。みんなそうです。私はそのために解説を書いてます。
苦手な人にもおすすめしたい厳選作品
『卒業』

この映画が持つエネルギーは計り知れません。あらすじだけを追えば不倫を描いた物語のように見えますが、その枠に収めるのはあまりにも惜しい作品です。世間に縛られる若者の葛藤を数々のメタファー(隠喩)で描いた傑作です。

私も学生の頃に初めて観た時は、若い男、しかも娘といい関係になろうとしている相手に色仕掛けをするミセス・ロビンソンへの嫌悪が最も強く印象に残ってしまいました。でも、本懐はそこではないのです。
『卒業』の詳しい解説記事はこちら👇
『テルマ&ルイーズ』

アメリカン・ニューシネマの真骨頂と言える作品です。それまでは男性二人のロードムービーが定番でしたが、とうとう女性二人を主人公にして描いた点が非常に素晴らしいです。若き日のブラッド・ピットの姿や、あまりにもド派手なラストシーンにも注目してください。

アメリカの原風景を、英国出身のリドリー・スコットが思う存分描いている点にも注目です。
『テルマ&ルイーズ』の詳しい解説記事はこちら👇
『パリ、テキサス』

本作の展開やラストに関しては、もの凄くモヤモヤしてしまう人も多いかもしれません。「え、それってどうなの?」と。でも、これがニューシネマなのです。自分がしたいように生きていい。でも真っ当な人にも惹かれたっていい。親子のロードムービーが物語の肝ですが、切なくてメロドラマ要素もかなり強いため、そういったジャンルが好きな人には特におすすめな1本です。

弟夫婦にも感情移入しやすいように作っているのがまた、よくできた作品だなと思います。
『パリ、テキサス』の詳しい解説記事はこちら👇
『バニシング・ポイント』

またまたロードムービーですが、本作はほとんどがドライブシーンで構成されています。あまりにも爆速で走り抜け、警察の包囲を切り抜ける主人公の姿は、自由な者の強さを表しています。時折登場するDJがまたクールで、作品に独特のリズムを与えています。

こちらは主人公の行動が突き抜けていて、かつ多くの人にフォローされているので、比較的共感しやすいと思います。
『バニシング・ポイント』の詳しい解説記事はこちら👇
『タクシー・ドライバー』

ニューシネマの筆頭とも言える作品かもしれません。描かれるのは、かなり歪んだヒーローのかたちです。「こんな終わり方ありなの?」と初見では思ってしまうかもしれませんが、当時のスコセッシ監督の作家性が色濃く反映されています。観客に問いかける手法や、映画『JOKER』のような危うい主人公像は、随分前から確立されていたことが分かります。

結末に関する解釈が、人によって様々である作品の先駆け的な作品でもあるのではないでしょうか。
『タクシー・ドライバー』の詳しい解説記事はこちら👇
『カッコーの巣の上で』

輝かしい受賞歴もあってか、アメリカン・ニューシネマの代表作として挙げられやすい本作。ですが、個人的に鑑賞ハードルは割と高いと思っています。実話ベースなので真っ直ぐ鑑賞しても面白くはあるのですが、当時の空気を体験している人でなければ、この映画が何を暗に示しているのか分かりづらいからです。ジャック・ニコルソンの奔放さや、あのラストは何を意味しているのか、ぜひじっくり見届けてください。

実は初見で最も「はて?」となった作品です。でも色々分かった上で観たら泣いちゃいました。
『カッコーの巣の上で』の詳しい解説記事はこちら👇
今日の映学:正解のない物語を楽しむ
最後までお読みいただきありがとうございます。
アメリカン・ニューシネマが描くのは、わかりやすい解決ではなく、私たちが生きる現実と同じような「ままならなさ」です。
観終わった後に残る「もやっとした感覚」は、映画があなたの心に深く入り込み、問いを投げかけた証拠。
もし以前に観て「よく分からなかった」と感じた作品があれば、ぜひ解説記事を読みながらもう一度その世界を覗いてみてください。

今回ご紹介した作品たちが、少し風変わりで、けれどあまりにも人間臭い映画の世界に深く触れるきっかけになれば幸いです。

名作には名作たる理由あり!
X(旧Twitter)はこちら
https://twitter.com/bit0tabi
Instagramはこちら
https://www.instagram.com/bit0tabi/
Facebookはこちら
https://www.facebook.com/bit0tabi/
noteはこちら
https://note.com/bit0tabi








コメント