「フーテンの寅」こと車寅次郎が、日本中の人々に愛され続ける国民的映画『男はつらいよ』。
数ある名作の中でも、第6作となる『純情篇』は、寅さんの優しさ、故郷への想い、そして妹さくらとの絆が深く描かれた、シリーズ屈指の傑作として多くのファンの心に刻まれています。

個人的に、第一作と並ぶくらい好きな作品です。

まずは作品概要から魅力を語っていくよ!
作品概要
『男はつらいよ 純情篇』は、1971年に公開されました。
- 監督: 山田洋次
- 脚本: 山田洋次、小林俊一
- 出演:
- 車寅次郎:渥美清
- 諏訪さくら:倍賞千恵子
- 御前様:笠智衆
- おいちゃん:森川信
- おばちゃん:三崎千恵子
- 諏訪博:前田吟
- 桂梅太郎:太宰久雄
- 源公:佐藤蛾次郎
- 美保:杉山とく子
- 加代:津島啓子
- 明石夕子:若尾文子(マドンナ)
- 絹代:宮本信子
- 絹代の父・千造:森繁久彌
あらすじ
旅先で、さくらの面影を感じさせる赤ん坊を連れた若い女性・絹代(宮本信子)と出会った寅さん。情にほだされた寅さんは、一夜の宿を世話しただけでなく、彼女と共に故郷の五島列島福江島で暮らす父親・千造(森繁久彌)のもとへと向かいます。福江島で過ごす中で望郷の念にかられた寅さんが柴又へ帰ってくると、そこには叔母のつねの遠縁にあたる美しい人妻・明石夕子(若尾文子)が、夫と別居し二階に間借りしていました。案の定、寅さんはこの美人人妻に一目惚れしてしまい、騒動を巻き起こします。
キャストに注目
本作の大きな魅力の一つは、豪華なキャスト陣が織りなす演技の競演です。大映のトップスターとして活躍した女優・若尾文子、そして日本映画界を代表する名優・森繁久彌といったベテラン勢と、我らが寅さんこと渥美清の共演はまさに圧巻です。

特に印象的なのは、若尾文子演じる夕子のセリフです。「私が今まで暮らしてきた周りには 自分の気持ちを隠さずに笑ったり怒ったり泣いたりすることは一度もなかったわ 私たちの生活なんて嘘だらけなのね そう考えたら急に涙が出てきちゃって」。この言葉は、寅さんという破天荒な存在が、閉塞感のある日常を生きる人々に与える影響を端的に示しています。
また、絹代を演じた宮本信子の演技も秀逸。身体で感謝を伝えようとする絹代に対し、寅さんが見せる聖人君子のような振る舞いは、寅さんの純情な一面を際立たせ、観る者の胸を打ちます。


マドンナとのやり取りにおいても、スケベな医者との対比が生まれていて、より一層寅さんの聖人っぷりが際立ちます。
さくらへの想い
本作では、寅さんの妹さくらへの深い愛情が物語の前半で丁寧に描かれています。このさくらへの想いが、ラスト近くの柴又駅でのさくらと寅さんの別れの場面に繋がり、シリーズ屈指の名シーンとして語り継がれています。別れ際に、さくらが寅さんを気遣う姿と、それに応える寅さんの複雑な表情は、観客の涙を誘わずにはいられません。
そして、本作のラストで寅さんが口にする「故郷ってやつはよ…」というセリフもまた、さくらとの絆を強く感じさせます。具体的な言葉は明かされませんが、そこには故郷である柴又、そしてそこに暮らすさくらという存在が、寅さんにとってどれほど心の拠り所であるか、彼の人生にとってどれほど大きな意味を持つかが凝縮されているかのようです。

例えば、この言葉の続きは、「故郷ってやつはよ…、帰る場所があるっていう安心、拠り所であると共に、そこから離れていく強さをくれるもんなのかもしんねぇな」といった、寅さんのフーテンとしての生き様と、さくらとの絆がもたらす心の支えが表現されているのではないでしょうか。さくらの存在こそが、寅さんがどんなに辛いことがあっても、また立ち上がって旅を続け、そして必ず柴又に帰ってくる原動力なのです。
柴又や人々に対する郷愁
『純情篇』は、柴又という故郷、そしてそこに暮らす人々への寅さんの想いが切なくも美しく描かれています。ノスタルジックな魅力に溢れ、フーテンとして各地を渡り歩きながらも、心のどこかで常に故郷を思う寅さんの胸の内が実によく分かるプロットになっています。
観る者は、寅さんの視点を通して、故郷が持つ温かさや安らぎ、そしてそこから離れて生きる者の切なさを感じ取ることができます。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
『男はつらいよ 純情篇』は、寅さんの根底にある優しさや純情が存分に描かれ、観る者に温かい感動を与える作品です。
豪華な共演者たちとの名演、そして何よりも故郷とさくらへの変わらぬ愛情が、寅さんという稀有な人物の魅力を一層際立たせています。

寅さんの聖人っぷりが特によく伝わってくる名作と言えるでしょう。

これは泣けるよね~。
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