考えすぎるくらい考えましょうよ
映画『ミッシング』を鑑賞しました。
監督は『空白』『ヒメアノ～ル』の吉田恵輔。
石原さとみを主演に迎え、オリジナル脚本で作った作品です。
『空白』もそうでしたが、悲惨な事件にあった当事者たちの心の動きや周りの冷たさのようなものを絶妙に描くので観ていて本当に辛くなります。
いい意味で、もう一度観るのはしんどいというか、エネルギーを要する作品です。それだけパワフルな作品。
本作では、大きく2つの視点に分かれます。
被害者夫婦サイドと、
報道サイドですね。
私は先日『妖怪の孫』というドキュメンタリー映画を鑑賞したんです。
その中で、自民党とテレビ局や新聞社との癒着が取り上げられ、日本の報道の歪みを何となく感じています。
ですので、『ミッシング』を観ながら、どうも報道サイドの視点が気になってしまいました。
ジャーナリズムの在り方みたいなものが。
そこで、今回の記事では、報道サイドも踏まえて解説や感想をお届けしたいと思います。
公式サイトのあらすじはこちら！
とある街で起きた幼女の失踪事件。
あらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。娘・美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里は、夫・豊との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々だった。
そんな中、娘の失踪時に沙織里が推しのアイドルのライブに足を運んでいたことが知られると、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となってしまう。
世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じてしまうほど、心を失くしていく。
一方、砂田には局上層部の意向で視聴率獲得の為に、沙織里や、沙織里の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材の指示が下ってしまう。
それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。
その先にある、光に—
https://wwws.warnerbros.co.jp/missing/
ジャーナリズムの在り方とは
本作では、中村倫也演じるテレビ局の記者の葛藤を強く描いています。
上司からは、数字を取れる内容を求められ、そういった報道を迷いなく選択する後輩には追い抜かれてしまう。
数字を取れる内容とは、えげつない内容。または刺激的な内容です。
被害者妻の弟が犯人に見えるように報道した方が、視聴率は取れるのではないか。そういったことを上司に言われ、時には従わざるを得ない。
こんなことをニュースで流したら、被害者らの溝はさらに深まるし、SNSやニュースサイトだって荒れるに決まっている。
まあ、テレビ局だって、慈善事業じゃないんだから、仕方がない部分もあるのかもしれませんが…。
しかし私がドキリとしたのが、真実を貫く揺らぎが、彼に生まれてしまったという点です。
私は『妖怪の孫』を観て、真実をありのまま報道することは正義ではないかと感じていました。
ですが、被害者家族に寄り添って報道するとなると、ストップをかけた方がいい内容もあるんだということが分かりましたね…。本作では弟の違法賭博。
あるいはでっち上げをするという場合も。本作では誕生日パーティ。
前者は、真実だけど、今それを取り上げると被害者らにとって何のメリットもない。
後者は、それくらいならいいだろうと思うけれど、偽りの報道であることには違いない。
メリットはデメリットは、誰にとって設定すべきか。
これくらいなら大丈夫って、どれくらいまで許されるのか。
これを考えるのは、非常に難しい。
もし、ここまで報道について考えすぎるくらい考えているジャーナリストがいるのであれば、頭が上がりません。尊敬に値します。
しかし、果たして、今の日本のテレビにそこまでの人物がいるのか。いや、そもそもできるのか。
報道の内容にもよるのかもしれませんが、よくよく考えていきたいものです。
映画の感想
ここからは、ジャーナリズムではない部分の感想を書いていこうと思います！
誘拐事件で大きく報道される未解決事件って、こういう感じなんだろうな…。っていうのを被害者側で体験できるのはかなり貴重。
もう本当に観ていて苦しい。
いたずら電話のシーンなんて、目を背けてしまいそうでした。
見つからない限り、辛いことしかないけどそれでも見つけ出すために、生きていかなければならない。
そんな生きるための営みの中でも、SNSのせいで監視されているような気がする。
これはもう、本当にしんどい。ちょっとああいう事件に対してはめったなことを言うことじゃないなと改めて思いました。
そんなハードなドラマを演じるにあたって、俳優陣の演技は、かなりよかったように思います。
石原さとみの真に迫る演技はかなりのものです。私がこれまで観た石原さとみの演技では抜群でした。
中村倫也は、先述の内容を見事に演じ切っていますね。記者として何の違和感もありませんでした。
夫を演じた青木崇高もリアリティがありましたし、弟役の森優作の不安定さも素晴らしい。
小野花梨もまたいい。ここのところ彼女が出てる映画は間違いない感じがします。ナイス鼻水でした。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます！
映画『ミッシング』について感想をお伝えしました。
ジャーナリズムについて、深く考えさせられましたね…。
ニュースの見方も変わってきそうだね。
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