あえて悲劇のヒロインにしない。
等身大の。普通の。人間として描く心意気。
映画「ケイコ 目を澄ませて」を鑑賞しました。
岸井ゆきのさんが、聴覚障害で両耳の聴こえないプロボクサーを見事に演じます。
世界中で話題沸騰中の今作のメッセージは、”可哀想”とか、”優しくしてあげよう”とかそういうところではありません。
えぇ、違うの？？？
ひと味違うよ。
では一体何なのか。
今回の記事ではその正体をお伝えしていこうと思います。
STORY
嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。母からは「いつまで続けるつもりなの？」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まっていく。「一度、お休みしたいです」と書き留めた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出す――。
公式ページより引用
それではここから解説に参りましょう！！
自然なストーリー
今作は、いくらでも悲劇や逆境のヒロインにしたてることが出来るテーマですが、あえてそうはしていません。
耳が聞こえないことやそれにまつわることを大きくフューチャーしないストーリーが良かったです。
普通に働いて生活するシーンを描くから、”あぁこういう風に生活してるのか“ってことがするりと入ってきました。
耳が聴こえない人が、どうやって朝起きてるか知ってますか？
大きな生活音の演出
今作では、時折大きな音が流れます。
電車や、ジムの音、着信音など。
あえて大きい音にすることで、”ケイコにはこの音が聴こえてないんだな“とはっと我に返る瞬間がありました。
あまりにも自然に描くゆえに忘れてしまいそうになる聴覚障害の事実を再認識できます。
日本語字幕付き
今作は聴覚障害の方向きの、日本語字幕付きが準備されています。
テーマに沿った、素晴らしい取り組みですね。
聴覚障害の方はもちろんですが、
日本の作品の字幕版を映画館で観る経験もなかなかありませんので、可能な方はぜひ。
貴重な体験を得られると思います。
実在の人物をモデルに
今作は小笠原恵子さんの「負けないで！」を原案にした作品です。
小笠原恵子さんは、主人公ケイコと同様、聴覚障害と向き合いながら実際のプロボクサーとしてリングに上がった経験を持ちます。
ボクサーにとって、耳が聴こえないというのはかなり大きなハンデです。
セコンドやレフェリーの指示が聴こえないし、なんならゴングが聴こえない。
それでプロ入りしたことも、試合まで辿り着いた本人もチームもすごいですよね。
岸井ゆきの
岸井ゆきのさんの主演を観るのは、「愛がなんだ」ぶりでした。
「愛がなんだ」での演技も凄まじかったですが、今作も強烈。
序盤のミット打ちの速さは惚れ惚れします。
あれはすごい。
また、ボクサーとしてだけではなく、聴覚障害者にしか観えない演技も素晴らしかったですね。
終盤のシャウトからは魂が漏れているような気がしました。
長井恵里
主人公の友人役として出演したろう者の俳優・長井恵里さん。
非常にお美しいです。
短い出演時間でしたが、とても印象に残りました。
近年、人種も障害も関係なく、様々な人を映画に出演させる多様性が求められているので、今後の活躍に期待です！
16mmフィルム
今作の舞台は2020年です。
最新鋭のデジタルカメラが使えるなか、あえて使用した16mmフィルムならではの、レトロな色が味わい深いです。
下町の雰囲気を感じつつ、昔あった出来事かのような錯覚も楽しめます。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます！
すごく気になる映画だね！
「ケイコ 目を澄ませて」の感想や見どころをお伝えしました。
さらりと、じわりと、たっぷりと、耳の聴こえないケイコに寄り添える作品です。
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