数年前のディズニー映画は多様性を謳っていた

アニメ映画

現在、アメリカにおける情報規制や第二次トランプ政権の圧力が強すぎるから、DEI推進的な面においてディズニーも無難な立ち位置を取ってます。

パラマウントによるワーナー買収の動きもあって、どの映画会社も逆らわない方向に舵を切っているのが現状と言えるでしょう。

でも、ディズニーって、2016年~2023年くらいはかなり攻めてました。DEI全盛期と言えるでしょう。皆さんも『リトル・マーメイド』の実写版で黒人俳優のハリー・ベイリーがヒロインに抜擢されたことは印象に残っているのではないでしょうか。

2023年は第一次トランプ政権。この頃はまだファイティングポーズをとってたんですよ。全盛期における作品をいくつか紹介しようと思います。

ズートピア

 2016年、オバマ政権の頃に公開された『ズートピア』。肉食動物と草食動物が一緒に暮らす世界を描いた作品です。ヒロインは小さなウサギの女の子。彼女はウサギ初の警察官として働きます。これだけでもなかなかグッとくるところがありますが、この作品はもっとすごい。
 肉食動物が誘拐されるという事件をウサギとキツネのコンビが追うというのが主なストーリー。その理由は凶暴化・野生化してしまったことを市長が隠蔽しようとしたというものなんです。で、ヒロインはその事件解決に一役買ったことでインタビューを受けるんですが、その際に「肉食動物のDNA的なものが目覚めちゃったんですかね」みたいなことを何の気なしに言っちゃうんです。これにキツネの相棒も幻滅するし、町中もパニック!「やっぱり草食動物たちは肉食動物を危険だと思ってるんだ!」「肉食動物は凶暴で危険だ!」という風に大炎上してしまいます。

 実は『ズートピア』の肉食動物って、圧倒的少数派。全体の10%です。草食動物の方がマジョリティだったと。アフリカ系アメリカ人のメタファーだという解釈もあります。力が強くて凶暴。みたいなステレオタイプですね。劇中、豚がチーターに向かって「森に帰れ!」と言い「私はサバンナ生まれだ!」みたいに言い返すシーンなんかもあります。

 さらに、キツネは幼少期に、草食動物からいじめを受けて「キツネは卑怯でずる賢いとみんなが思ってる、だから詐欺師になった」という発言もありました。

 こういった、半端なステレオタイプに物申す、そういった力強さのある作品なのです。

ちなみに『ズートピア2』は金と力を持ってるものが元居た人を悪者に仕立て上げて追い出し、利権も土地も自分のものにしようというストーリー。どこの植民地にもあてはまるようなメタファーになってたようにみえました。ネイティブアメリカンとヨーロッパからやってきた人々のような構図をうっすらと感じさせる仕掛けですね。1ほどではないものの、それなりに攻めてはいます。



トイストーリー4

 『トイ・ストーリー4』は2019年の作品です。

フォーキーというおもちゃが登場して騒動を起こしてウッディがそれに付き添うというのが大まかなストーリー。このフォーキーは障害者だったり何かしら不自由な人、あるいはまだ適切な判断が出来ない幼い子どもなんかを象徴しているキャラクターです。

 フォーキーは、ウッディたちの持ち主、園児のボニーが手作りした人形です。先割れフォークやモール、アイスの棒などから作られているため、自分のことをゴミだと思っています。ゴミだと思っているため、自分からゴミ箱へ入ろうとします。それを優しく助け、手を取り、ゆっくりとボニーにとってフォーキーがどれだけ必要な存在であるかを諭すウッディ。ウッディはフォーキーを、明らかに自分よりもできることが少なく、社会的に未熟で弱い存在であると認識しています。これまでの作品の中で、ウッディは自分の考えが一番まっとうで、正しく、おもちゃとしての価値も高いことを信じているような節がありました。しかし、フォーキーという、明らかに支援の必要な存在と出会うことで、自分の使命に気づくことができたのです。ウッディは、正にインクルーシブな学びを得たという訳ですね。

 さらに、ウッディは今回の冒険の中で、保育園のおもちゃ、遊園地の景品おもちゃ、アンティークショップのおもちゃなど、様々なおもちゃとも出会います。ウッディ自身は、決まった持ち主のもとで一緒に遊ぶことがおもちゃにとって最大の価値であると考えていましたが、おもちゃによっては、「保育園でいろいろな子どもたちと遊ぶ」「アンティークショップで誰にも見つからずにひっそりと暮らす」「持ち主と長らく遊んでいないことにも慣れる」などなど、多様な生き方や価値観を持っていることに気づいていきます。もちろん、ウッディの考え(決まった持ち主と暮らす)を理想とするおもちゃともたくさん出会います。ウッディを通して、様々なおもちゃたちの考え方や生き方に触れることは、多様な生き方や、働き方が認められつつある現在に生きる我々にとって、自身の人生に置き換えて考えることができるはずです。



マイ・エレメント

最もダイレクトにアメリカ社会の多様性に関するテーマを取り上げていたのが2023年の『マイ・エレメント』です。

ピクサー始まって以来の、大人のラブストーリー。火・水・風・土の4つの原子のキャラクターたちが暮らす「エレメントシティ」という町が舞台。

 監督のピーター・ソーンは、韓国にルーツのある、アジア系アメリカ人。両親は韓国からアメリカへ移住してきたんです。また、ソーン監督は、白人の女性と結婚しています。

 『マイ・エレメント』では、火の種族はアジア系、水の種族は白人というメタファーがこめられています。監督自身の体験が投影されているわけですね。多様な人種が暮らすニューヨークと照らし合わせているんです。

 街の一部では、火の種族が集まって暮らしています。つまりアジア人街です。韓国料理は辛い(HOT)ということを念頭に入れて観ると面白いですよ。私も韓国人の友だちが何人かいますが、彼らの辛い物に対する耐性はいつも目を見張るものがあります。

 また、風の種族は黒人、木の種族はネイティブアメリカン、といったメタファーにもなってます。冒頭2分くらいに、エレメントシティの歴史をざっくり解説しているので配信で観る人は一時停止するといいと思います。

 火の種族、エンバーの家の家宝「ブルーファイアー」は伝統を示唆しているのだと思います。形や場所を変えながらも、その国の伝統は大事にされているよという。

 種族の違いを乗り越えて、深い関係になろうとする、ウェイドとエンバーの恋は、とても感動的。監督夫婦も乗り越えてきたんだなと思うとより感動も大きくなる。

泣けるし、勇気をもらえますよこれは。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

2016年~2023年のDEIを強く推進していたころのディズニー映画を紹介しました。

bitotabi
bitotabi

擬人化するからこそ、子どもにも道徳的アプローチができる。それがディズニーの一番の強みだと私は思います。

ダニー
ダニー

逆も然りだよね。昔はドナルドが戦争するやつとかあったような。

頼んまっせ。ディズニーさん。

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