「きりこはぶすである」
このあまりにも衝撃的な一文から始まる物語をご存知でしょうか。
西加奈子さんの『きりこについて』は、ページをめくるたびに「ぶす」という文字が太字で迫りくる、視覚的にも精神的にもインパクトの強い一冊です。
しかし、読み終えたあとに心に残るのは、呪いのような言葉ではなく、自分自身を抱きしめたくなるような温かい肯定感でした。
作品概要
- 作品名:きりこについて
- 著者:西加奈子
- 出版社:角川書店(文庫版は角川文庫)
- 発表年:2008年(西加奈子さんにとって5番目の長編作品)
【あらすじ】 美しさを至上命題とする両親のもとに生まれたきりこ。彼女は自分が「ぶす」であることを知らずに、愛に満ちた幼少期を過ごします。しかし、小学校でのある事件をきっかけに、自分が世間一般で言う「ぶす」であることを突きつけられ、引きこもり生活へ。そんな彼女の傍らには、いつも賢い愛猫「ラムセス2世」がいました。猫との生活、そして再会や出会いを経て、きりこは「美しさ」の真理へと近づいていきます。
作品を通して得た気づき:全肯定が持つ救済の力
本作を読み進める中で、いくつかの大切な学びがありました。
「可愛い」の正体は主観のズレ
主人公のきりこが物語の後半で悟るように、「ぶす」や「可愛い」という言葉は、結局のところ「自分の主観」と「世の中の基準」が一致しないと成立しないのです。世間一般で認められているとはいえ、誰が決めたかわからない物差しで自分を計る虚しさを、きりこの心の変化が鮮やかに描き出しています。
容れ物と中身、そして歴史
人間を構成するのは外見——いわゆる「容れ物」だけではありません。その中にある精神、そしてその人が歩んできた歴史の積み重ねこそが、本当の意味での「その人」自身を構成しているのだと強く感じました。また、それらを一切の偏見なく見守る猫という存在の偉大さも、本作の大きな魅力です。
肯定し続けることの価値
今の世の中では、厳しく叱ることや客観的であることが「正しさ」とされがちです。しかし、きりこの「マァマ」と「パァパ」は、心底から彼女を愛し、ひたすらに「可愛い」と伝え、肯定し続けました。
たとえその肯定が、一時的に世間とのギャップを生んだとしても、最終的にその深い愛情が報われていく展開には大きな感動を覚えました。人と接する際、まずは肯定し、相手の自尊感情を高めること。その積み重ねが、一人の人間が世界と対峙するための揺るぎない土台になるのだと教えられた気がします。
結び
最後までお読みいただきありがとうございます。
コンプレックスという重荷を、西加奈子らしい力強い筆致で軽やかな哲学へと変えてくれる傑作です。「自分は自分でいいのだ」と心から思えるこの物語は、映画ファンにとっても、キャラクターの生き様を深く味わうような読書体験になるはずです。
もしあなたが、誰かの視線に少し疲れてしまったのなら。ぜひ、きりことラムセス2世の世界を覗いてみてください。
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