『ROMA/ローマ』が「画」で語る切ない記憶とメキシコの分断

ドキュメント・ノンフィクション系映画

世界中の映画賞を席巻し、Netflix作品として初めて日本の劇場でも公開された金字塔、アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』。

一見、モノクロームで綴られる静かな家族の物語ですが、その一コマ一コマには、監督の記憶とメキシコの激動の歴史が緻密に編み込まれています。

bitotabi
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白黒かつ外国語映画ながら、印象的なショットに唸る映画体験でした。

今回の記事では、本作をより深く味わうための「画が語るメッセージ」と「歴史的背景」を紐解いていきます。

ダニー
ダニー

まずは作品概要として、監督自身の物語でもあることを知っておこう!

作品概要:監督が最も愛した人へのメッセージ

本作は、アルフォンソ・キュアロン監督の半自伝的な物語であり、1970年代初頭のメキシコシティにある「コロニア・ローマ」を舞台に、中流家庭とその家政婦の日常を描いています。

第75回ヴェネツィア国際映画祭での金獅子賞受賞を皮切りに、アカデミー賞では外国語映画賞、監督賞、撮影賞の3部門を受賞しました。

主演のヤリッツァ・アパリシオ演じる家政婦クレオのモデルは、監督が幼少期に最も愛した乳母、リボリア・ロドリゲス(愛称リボ)です。彼女への深い敬愛が、この圧倒的なリアリティを生んでいます。

Xにて投稿された監督とリボのツーショット

「画」で伝える:台詞を超えた視覚的演出

キュアロン監督は、説明的な台詞を極限まで削ぎ落とし、カメラの動きや構図で多くの情報を伝えます。

  • 冒頭のタイルが暗示する「分断」 映画は、床のタイルを水で洗い流すショットから始まります。この規則正しく並んだ「白と黒のタイル」は、メキシコ社会における明確な階級の対比を象徴しているかのようです。また、後に明らかになる「不在がちな父」と「残された家族」との、決して交わることのない心の距離や、生活の質の乖離をも示唆する非常に象徴的なオープニングとなっています。
  • 無数の家政婦たちが支える日常 洗濯物が手洗いにも関わらず真っ白に仕上がっているカットからは、クレオがいかに誠実で丁寧な仕事をしているかが分かります。カメラが垂直に上がると、同じように洗濯に励む女性たちが近隣に溢れていることが映し出され、彼女が「特別な誰か」ではなく、当時の社会を影で支えていた無数の労働者の一人であることが示されます。
  • 地震、墓地、および死の予兆 新生児を見つめるカットで突如起こる地震、そしてその後の墓地の描写。これは1985年のメキシコ地震をはじめ、コロニア・ローマで多くの命が失われた歴史を静かに示唆しています。また、新年を迎える瞬間にクレオのカップが割れる演出は、その後の彼女を待ち受ける過酷な展開を暗示する見事な伏線です。
  • 群衆の中に埋没する個人の悲劇 デモの混乱の中でクレオが破水し、病院へ運ばれるシーン。あえてロングショットで捉えることで、同じように苦しむ人々の中に彼女が紛れ込み、「どれがクレオか判別しづらい」状態になります。彼女の悲劇もまた、時代の巨大な渦中にある一つの出来事に過ぎないという冷徹な視線が、観る者の胸を打ちます。



知識解説:白黒の画面に刻まれた「格差」と「動乱」

この映画を理解する上で欠かせないのが、当時のメキシコが抱えていた社会構造です。

肌の色が物語る階級社会

モノクロ映像であっても、雇用主一家と家政婦たちの「肌の色」のコントラストは明確です。

  • 白人系(スペイン系): 経済的・政治的強者である雇用主一家。
  • 先住民(インディヘナ): クレオたちのように、独自の言語(ミシュテカ語)を持ち、低賃金労働に従事する層。

「聖体祭の虐殺」という歴史的悲劇

劇中、ベビーベッドを買いに行った先で遭遇する暴動。これは1971年6月10日に実際に起きた「聖体祭の虐殺(エル・コルポ・デ・フエベス)」がモデルです。 学生デモに対し、政府が密かに組織した準軍事組織「ロス・ハルコン(隼)」が襲撃した事件。かつての恋人フェルミンがその一員として銃を向ける姿は、個人的な関係が国家の暴力によって引き裂かれる残酷さを象徴しています。

また、 劇中の冒頭で子どもが食事の談話の中でさらりと語る「軍隊をからかった友だちが頭を撃たれて死んだ」というエピソードからも、当時のメキシコシティがいかに混沌としていたかが伺えます。

今日の映学:静寂の後に残るもの

最後までお読みいただきありがとうございます。

「死んでるから話せない」 序盤、戦争ごっこをしていた末の子が放った無邪気な一言は、終盤、深い失意の中で沈黙し続けるクレオの姿と重なり、観る者に重くのしかかります。

しかし、ラストシーンで再びカメラが空を見上げる時、私たちは絶望だけではない、ある種の「浄化」を感じるはずです。日常という名の荒波に揉まれながらも、確かにそこにあった愛の記録。今こそ、腰を据えて鑑賞すべき傑作です。

bitotabi
bitotabi

これがまた、最初のショットと同様に、飛行機を映し出しているのがたまらないんですよ。

見下げる視点と見上げる視点になってるわけです。

ダニー
ダニー

たくさんの賞の受賞も納得だよね。

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