塚本晋也監督最新作『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』が2026年9月現在公開中。
東京・神奈川・兵庫・大阪・福岡・沖縄のわずか9館でだけ。
当初は全国公開を予定されていたのですが、公開直前になって配給元であるキノフィルムズより上映館縮小の告知がなされ、こういう結果に。
どうして縮小されたのかは特に言及がなく、謎のまま。

どうしてなの…?

少し、考えてみたいと思います。
タイトルから分かる通り、この映画かなりハードな内容です。
ベトナム戦争で従軍したアレン・ネルソンが自らの戦争体験と戦争を終えて帰ったからの葛藤を綴ったノンフィクション書籍が原作です。
戦争加害者の傷をテーマに描いたドラマですね。
多くの戦争映画は、周囲が一層おかしくなっていくのを主人公がサポートしたり、一歩引いてみたりするものがほとんどですが、本作ではアレン・ネルソンが戦争という異常な世界の中で、どんな訓練を受け、戦地でどういったことをし、どのように狂い、今日に至るのか。これを辿っていくお話なのです。
塚本晋也監督は『野火』でも戦争についてかなりショッキングな描写を見せていました。生々しさというか、暑さや臭いまで感じるような。『野火』では戦争に参加した味方同士が殺し合ったり食料を奪い合ったり、果てはカニバリズムまで描いています。しかし、『野火』と『ネルソンさん』が決定的に違うのは、中心に描かれるのがアメリカ人であるということ。『野火』は日本兵の話ですからね。
日本映画として、ベトナム戦争をここまで具体的に描いたもの自体珍しいですし、米軍の行った残虐で非道な行いをストレートに描いたものもなかったでしょう。しかも想像の産物ではなく、本人が綴った著書が原作ですからね。
さて、本題に参りましょうか。
どうして上映館が縮小されたのか。
一番嫌だけど、一番そうかもなと思うのが、情報統制的な圧力。
アレン・ネルソンは、沖縄のアメリカ軍基地で「人を殺すための訓練」を受けベトナム戦争で従軍しています。
沖縄県知事選で12年ぶりに県知事が変わった事、軍拡に熱心な現政権…。これらと無関係だとはどうも思い難いというのが率直な思いです。
さらに、この映画はジェフリー・ラッシュというアカデミー俳優が出演しているし、ニューヨーク・ベトナム・タイと海外ロケも慣行しており、このまま9館だけの上映ではおそらく赤字でしょうね。過激で攻めた戦争映画に対する映画産業全体への警告のようにも見受けられます。
政府からなのか、戦争で得をする人間からなのか、両方からなのか分かりませんがね。
もしかしたら逆に、縮小することで注目を集めてその後徐々に拡げていくというストラテジーかも。そうだったら嬉しいな。
考えすぎかもしれません。でも、考えすぎていいと思います。
塚本晋也監督が言うように、日本も含めた世界全体がきな臭い状況ですから。偏った考え方に支配されるのはよくないけど、考えることから逃げてはいけない。
ちなみに、鑑賞した知人の一人は本作を観て、
「いままで観た映画で一番衝撃的だった。これが少ししか上映されないのはおかしい」
と言ってました。
それを聞くと、単純に勿体ないなと思います。塚本監督の映画って、どれも面白いんですもん。
さてさて、観た人は絶賛した上に、ベネチア国際映画祭で「金の小獅子賞」を日本作品として初受賞した本作。

はたしてこれから、上映館は拡大されるのか。

海外ではどうなるんだろうね。
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