俳優としてその名を馳せてきたマイケル・シャンクス監督が、満を持して監督デビューを飾った『Together』は、2025年を舞台にしたホラー映画です。
恐怖体験にとどまらず、人間の存在そのものに深く切り込んでいく、忘れがたい作品となっています。

日本公開に先駆けて鑑賞してきましたのでネタバレなしで見どころを紹介していきます。

ボディホラーか…、恐そう。
作品概要
- 監督・脚本: マイケル・シャンクス
- キャスト: アリソン・ブリー, デイヴ・フランコ
- ジャンル: ホラー
- 公開年: 2025年
あらすじ
ミリー・ウィルソン(アリソン・ブリー)は小学校の英語教師の仕事に就いたため、長年の恋人でミュージシャンを目指すティム・ブラッシントン(デイヴ・フランコ)と共に引っ越すことを決める。引っ越しの直前に友人たちが開いてくれた送別会で、ミリーはティムにプロポーズするが彼は返事をためらった。わだかまりはあるものの新しい家へと引っ越した近くをハイキングしていたところ、彼らは洞窟に落ちてしまう。一晩そこでキャンプした二人は、洞窟の水たまりから水を飲んだことで、翌朝目覚めると、ティムとミリーは足が部分的にくっついていることに気づく…。

実際の夫婦が演じる新境地
本作で主演を務めたアリソン・ブリーとデイヴ・フランコは、実生活でも夫婦であることから、作品に並外れた説得力と深みをもたらしています。コメディからドラマまで幅広いジャンルで活躍してきた彼らにとって、この映画はまさに新境地です。
例えば、『21ジャンプストリート』や『グランド・イリュージョン』などのヒット作で知られるデイヴ・フランコと、『コミュニティ』や『GLOW』といった人気ドラマで確固たる地位を築いたアリソン・ブリー。
長年培ってきた親密な関係性と、お互いへの深い理解は、役柄としてのケミストリーを超越し、パートナーとの険悪なムードや倦怠に加え、愛する人との距離が縮まることへの喜び、そしてそれが自己の喪失へと繋がる過程を驚くほどリアルに表現しています。
彼らは、演技の境界線を曖昧にすることで、愛が究極の恐怖へと変貌する様を、観客の心に深く突き刺さる形で描き出しています。
ボディホラーの系譜に連なる新星
『Together』は、ホラー映画の歴史、特に「ボディホラー」というジャンルの系譜にしっかりと連なる作品です。
その源流には、肉体が変容する恐怖を描いたアンドレイ・ズラウスキー監督、イザベル・アジャーニ主演の『ポゼッション』(1981年)や、

デービッド・クローネンバーグ監督の『ザ・フライ』(1986年)が挙げられます。

また、塚本晋也監督の『鉄男 THE IRON MAN』(1989年)が持つ、身体と機械の融合というテーマも、本作と共通する部分があります。

多くの作品に特徴して言えるのは、一気に心と身体が変化してしまうのではなく、徐々に心身ともに変化していく過程を描いている点ですね。
『Together』は、これらの先人たちの作品が描いてきた恐怖を現代的な視点で再構築し、新たな次元へと昇華させています。
これまでのボディホラーに無かった2つの新要素
本作は、これまでのボディホラーではあまり見られなかった新要素が2つあるのではないかと思います。
一つは、二人一緒にというか、二人が肉体的に変化(本作では同化)していくという要素です。
先述の『ザ・フライ』『ポゼッション』『鉄男』のどれもが、主要キャラクターの一方が変化するというプロットです。
そしてパートナー的立ち位置の人物や、周囲の人間との絆を試されたり、関係の崩壊を描いたりすることが多いですよね。
でも、本作は違うんです。二人とも変わっていく。ここが新しいし、ロマンティックな要素と恐怖が生まれやすいポイントだなと思いました。
二つ目は、同化の原因を考察するストーリーであることですね。
理解不能な超常現象として放置するのではなく、2人の身体の変化の要因は何であるのか、これを明らかにしようとするストーリーがまた斬新でした。

タイトルについて
本作のタイトル『Together』は、結婚の誓いを連想させると同時に、物理的に二つの体が一つになるという恐怖を暗示しています。
究極の愛の物語と、肉体的なホラーが持つ二重の意味をタイトルに込めることで、観客は「果たして、これは愛の物語なのか、それともただのホラーなのか?」という問いを投げかけられることになります。
この絶妙なバランスこそが、本作の最も面白い点の一つでしょう。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
『Together』は、ホラー映画の枠を超え、人間や愛について考えさせられるホラー映画を求めているなら、必見の一本です。
この映画は、あなたに忘れられない夜をもたらし、スクリーンから立ち去った後も、あなたの心と身体にその爪痕を残すことでしょう。

日本での公開は未定ですが、なかなか面白い作品なので公開、または配信された際はぜひ!

ボディホラー好きは特にね!
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