ガリシア地方の男は 野生の馬を素手で捕まえ印をつけ 再び野に放つ
映画『理想郷』を鑑賞しました。
本作はフランスとスペインの合作で、ロドリゴ・ソロゴイェン監督、ドゥニ・メノーシェ、マリナ・フォイスらが出演しています。
実話を基にしたスリラー作品です。
タイトルだけじゃどんな映画かよくわからないね。
すごく恐い映画だよ。原題はもう少しわかりやすいんだけどね。概要とあらすじの後に、いろいろ説明していくよ。
ヴェネチア国際映画祭で高く評価された前作『おもかげ』（19）で新たな才能として名を知らしめた新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督が、スペイン全土に激震が走った実際の事件をベースに映画化。名作『わらの犬』（71/サム・ペキンパー監督）でも描かれた“田舎と都会の対立”という題材を、人間の暗部に潜む独りよがりな思考、憎悪、凶暴性に深く迫り描き出す。観客はいつの間にかガリシアの村に引きずりこまれるような緊張感漂う心理スリラーを体験することになるだろう。また、女性の精神的な強さと揺るぎない愛の深さも大胆に描いており、計算しつくされた様々な対比、伏線、カメラワークが生かされた重厚感ある傑作がここに誕生した。
映画「理想郷」公式サイトより引用
フランス人夫婦アントワーヌとオルガはスローライフに夢を抱き、緑豊かな山岳地帯スペイン・ガリシア地方の小さな村に移住する。しかし、ある出来事をきっかけに地元の村人たちと敵対関係が激化していき……。
映画「理想郷」公式サイトより引用
キャストについて
本作のメインキャストはドゥニ・メノーシェと、マリナ・フォイス。夫婦を演じています。
ドゥニ・メノーシェ、個人的には『ジュリアン』の父親役がめちゃくちゃ恐かった俳優です。
本作『理想郷』でも、第35回東京国際映画祭で最優秀主演男優賞、第37回ゴヤ賞にて主演男優賞を受賞しています。
2023 年に開催された第76回カンヌ国際映画祭では審査員を務めるなど、今フランスでもっとも期待されている俳優です。
彼は身体が大きくて強面なので、簡単には手を出しにくいというか、近寄りがたいというか、そういう役がはまりますね。
だからこそ、本作で彼に食って掛かる隣人兄弟のクレイジーさが際立ちます。失うものがない強さや、お山の大将の恐さのようなものを感じましたね。
マリナ・フォイスは、『私はモーリーン・カーニー』でフランスの原発の会社の女社長を演じていました。
それが今度は風力発電を反対する夫のパートナーです。
映画俳優ってすごいなぁと思います。
原題『As bestas』
日本語タイトルは『理想郷』ですが、原題の『As bestas』はかなり意味が違います。
ポルトガル語で”獣たち”という意味です。
この映画の冒頭は、
”ガリシア地方の男は 野生の馬を素手で捕まえ印をつけ 再び野に放つ”
という字幕で始まり、その様子をスリリングに映像で見せます。
これ、いったい何なのかというと、「ラパ・ダス・ベスタ」というガリシア地方の伝統儀式なんです。
毎年、夏には馬のたてがみと尻尾を切り、寄生虫駆除をする儀式があるんだそうです。
森に住んでいても馬の所有者はいるという考えだそうで、産まれた子馬には、その所有者を示す印がつけられるというわけなんです。
この儀式は、今なお、いくつかのガリシアの村で伝統的な仕事として継承されていて、これは人間と馬の体と体のぶつかりあいで、どんな道具も使わずに馬を操るというものです。
冒頭の映像、一体何のことか分からないと思うんですが、
この情報をインプットしておけばその意味が分かってくると思います。
獣たちとは誰なのか、ガリシア地方の男とはどんな男たちなのか。
本編映像が公開されていますので、ご覧ください👇
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます！
映画『理想郷』について解説しました。
原題とキャストをおさえておくと、グッと深みの増す作品です。
これが実話だと思うと、背筋が凍るよ…。
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