『男はつらいよ 望郷篇』第5作 山田洋次の想いが色濃い

コメディ映画

「フーテンの寅」こと車寅次郎が日本中を旅し、行く先々で騒動を巻き起こしながらも、人々の心に温かい光を灯していく――。国民的映画シリーズとして愛され続ける『男はつらいよ』

bitotabi
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その数ある名作の中でも、特に寅さんの「恋の切なさ」と「兄妹の絆」が色濃く描かれているのが、シリーズ第5作となる『望郷篇』です。

ダニー
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まずは作品概要から!


作品概要

1970年公開の『望郷篇』は、前作を監督した森崎東に代わり、山田洋次監督がシリーズに復帰した記念すべき作品です。脚本も山田洋次が担当し、おなじみのキャストである車寅次郎役に渥美清、妹のさくら役に倍賞千恵子、おいちゃん役に森川信、おばちゃん役に三崎千恵子らが名を連ねています。


山田洋次監督の復帰とマドンナ

前作の『男はつらいよ フーテンの寅』でメガホンを取ったのは森崎東監督でしたが、この第5作目にしてシリーズの生みの親である山田洋次監督が、再びメガホンを握ることになりました。これは、第4作がこれまでのシリーズとは異なる作風であったため、改めて山田監督が描く「寅さん」の世界観と、国民的シリーズとしての方向性を再確認するために、制作陣が強く復帰を望んだ経緯があります。

そして、その山田監督の強い意気込みは、本作のマドンナ人選にも見て取れます。テレビドラマ版「男はつらいよ」で初代マドンナ・冬子役を務め、視聴者にも馴染み深い長山藍子さんを、映画版のマドンナ・節子として起用。これは、テレビ版からのファンにもアピールし、シリーズを自身の確固たるビジョンで再興しようとする山田監督の意思の表れとも言えるでしょう。長山藍子さん演じる節子への恋の破れ方は、これまでのシリーズの中でも特に切なく、寅次郎の気の毒さが際立つ回として知られています。報われない恋に打ちひしがれる寅次郎の姿は、観る者の涙を誘います。


あらすじ

早とちりで、おいちゃんの葬儀の用意までして大騒ぎを起こした寅次郎。そんな中、昔世話になった義理ある親分、正吉(木田三千雄)が危篤との報を受け、舎弟の登(津坂匡章=秋野太作)とともに札幌へ向かいます。親分は息子に会いたいと懇願しており、寅次郎は機関士の息子・石田澄雄(松山省二)を説得しようとしますが、拒まれてしまいます。

親分の死を看取った寅次郎は、妹さくらの説得もあり、浮草稼業に嫌気がさし、一念発起して堅気になろうと決意します。様々な職を転々とした後、たどり着いたのは浦安の豆腐店「三七十屋」。そこで一人娘の節子(長山藍子)に一目惚れした寅次郎は、豆腐作りに精を出し、店を継ぐことまで考え始めます。しかし、節子にはすでに婚約者がいることを知り、寅次郎の恋はまたしても失恋に終わるのでした。失意の中、寅次郎は再び旅に出ることを決意します。


家族からの寅への厳しい扱い

寅次郎が柴又に帰ってきても、相変わらず家族からの風当たりは強く、「早く出て行ってほしい」というような雰囲気や発言が目立ちます。

これまでのシリーズでは少なからず温かく寅次郎を迎えていたおいちゃんやおばちゃんですが、本作ではその態度がこれまでで最も厳しく、時に冷たく突き放すような場面も見られます。

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この作品以降、このおいちゃん、おばちゃんやタコ社長の態度は、やや冷ややかさをまとうような印象です。


さくらと寅の絆、そして時代のミニスカート

おいちゃんやおばちゃんが寅次郎に厳しく当たる「だからこそ」際立つのが、妹・さくらが寅次郎を気遣う優しさと、二人の間に流れる温かい絆です。 家族の中で唯一、寅次郎の心を深く理解し、常に寄り添おうとするさくらの姿は、寅次郎の孤独を和らげるとともに、観る者に深い感動を与えます。こうした兄妹の絆を際立たせる演出こそ、山田洋次監督らしさが光る部分と言えるでしょう。また、劇中でさくらが着ているミニスカート姿にも注目です。

当時の流行を反映したファッションは、作品に時代の息吹を感じさせます。




シリーズ初の札幌ロケ

本作『望郷篇』は、『男はつらいよ』シリーズで初めて北海道・札幌の地で撮影が行われた記念すべき作品です。物語の冒頭、寅次郎は義理の親分である政吉(木田三千雄)の危篤の報を受け、舎弟の登(秋野太作)とともに札幌へ向かいます。

具体的なロケ地としては、政吉親分が入院する漢薬堂ビルにある病院が物語の重要な舞台となります。また、寅次郎と登が札幌市内を巡るシーンでは、大通公園札幌市電テレビ塔など、当時の札幌を象徴する各所の風景が随所に登場し、北の大地の情景が作品に新たな奥行きを与えました。この札幌ロケは、寅さんの行動範囲の広がりを示すだけでなく、観客に北海道の魅力を伝える役割も果たしています。




地道に働く寅:浦安の豆腐屋で油まみれに

札幌での出来事の後、妹さくらの説得もあり、堅気になろうと一念発起した寅次郎は、様々な職を転々とした末、浦安の豆腐店「三七十屋」で働くことになります。ここでは、油揚げ作りや配達を任され、文字通り油まみれになりながらも懸命に働く寅次郎の姿が描かれます。普段のテキ屋稼業とは異なる、地道な労働に励む寅次郎の姿は、彼の人間味と、堅気になりたいという強い思いが伝わってきます。


今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

『男はつらいよ 望郷篇』は、寅次郎の報われない恋、家族との軋轢、そしてさくらとの絆など、様々な人間模様が交錯する中で、寅次郎の温かさと哀愁が深く描かれた作品です。

bitotabi
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シリーズの中でも、感動度は高めの作品です。

ダニー
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北海道の町や電車にも注目!

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