『One of Them Days』に学ぶアメリカのシビアな現実:家賃滞納、献血、クレジットスコアの正体

コメディ映画

映画『One of Them Days』(タチノキカイヒノススメ)を鑑賞しました。

本作はアメリカが舞台で、家賃支払いの期限が迫る、二人の女性の1日を描いた作品です。

とにかく焦りに焦って、それゆえにドタバタの騒動に発展していくコメディなのですが、「いやいや、家賃の支払期限が1日過ぎるだけで、あんなにパニックになるもの?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。

物語は、切っても切れない親友同士の主人公二人が、家賃の支払期限である「明日」までに資金を工面しようと街中を駆けずり回るドタバタ劇です。劇中では、献血センターへ駆け込んだり、電線に吊るされたスニーカーを売ろうとしたりと、笑えるほど必死なサバイバルが繰り広げられます。

しかし、この映画をコメディとして片付けるには、そこに描かれている「格差」と「システム」があまりにリアルです。アメリカにおいて家賃の滞納は文字通り人生の破綻を意味し、自分の体の一部を売ってでも現金を作らなければならない切実な背景がそこにはあります。

ダニー
ダニー

かなり日本とはギャップがあるんだね。

bitotabi
bitotabi

今回は、映画のシーンを紐解きながら、私たちが知っているようで知らないアメリカ社会の過酷な裏側について深掘りしていきましょう。

1. 「家賃の支払い」が命懸けな理由

劇中の主人公たちが必死なのは、アメリカの賃貸契約が驚くほどシビアだからです。

まず、多くの契約で家賃の支払日は毎月1日と決まっており、3日から5日程度の猶予期間を過ぎれば即座に高額な遅延損害金が発生します。そして、日本のように「生活の基盤だから」と手厚く守られることは稀で、支払いが滞れば大家は迅速に「立ち退き(Eviction)」の手続きを開始できます。

特にテキサス州やジョージア州といった「大家に有利な法律」を持つ地域では、数週間のうちに保安官がやってきて、鍵を替えられ、荷物を外に出されるという状況が現実的に起こり得ます。住宅が生活の場である以上に「ビジネスの契約対象」として扱われる、アメリカ特有のドライな文化が背景にあります。

2. 体を張った資金調達:アメリカの献血事情

劇中、彼女たちが献血で一人70ドルを稼ごうとするシーンがあります。

日本の感覚では「献血でお金がもらえるの?」と不思議に思いますが、これはアメリカでは一般的な光景です。

正確には「血漿(けっしょう)提供」と呼ばれ、民間の製薬会社が運営するセンターで行われます。これはボランティアではなく、提供者の時間と労力に対する「報酬」が支払われる仕組みです。

新規ドナーなら100ドル以上のボーナスが出ることもあり、低所得層にとっては、学歴や職歴に関わらず「その日のうちに確実に現金を手に入れられる最後の砦」として機能しています。まさに、自分の体を切り売りしてでも今日を生き延びるための、ストリートの知恵なのです。



3. ストリートの象徴:電線に吊るされたスニーカー

電線に靴がぶら下がっている「シューフィティ」という光景。これを見つけて売ろうとするシーンもありましたが、これにはストリート特有の都市伝説があります。

有名な説では「ギャングの縄張り」や「ドラッグの販売拠点」を示す合図と言われていますが、実際にはいじめや卒業のお祝いなど、単なるいたずらであることも多いようです。

映画ではよくそういったことを示唆する演出として扱われ、本作についても同様で、これを機に彼女らは騒動に巻き込まれます。

さらに、劇中でわざわざ電線からスニーカーを回収しようとしたのは、それが高級な「エア・ジョーダン」という資産価値があるものだったからです。レアなスニーカーは現金と同等の価値を持つアイテムであり、それを必死に手に入れようとする姿は、彼女たちの追い詰められた状況を象徴しています。

4. クレジットスコア「477」が突きつける絶望

そして、物語の最後に映し出される「477」というクレジットスコア。これがこの映画で最も重いメッセージかもしれません。

アメリカのクレジットスコアは300から850の範囲で評価されますが、477は「Poor(悪い)」の中でも極めて低い数値です。

  • 740以上: 非常に良い(ローンの審査も余裕)
  • 670〜739: 平均的
  • 580以下: 悪い
  • 477: 絶望的

このスコアでは、まともなアパートの入居審査は通りません。車を買うにも超高利貸しを利用するしかなく、就職の選考で不利になることさえあります。一度でも家賃を滞納してスコアが落ちれば、負のループから抜け出すことは困難を極めます。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

映画『One of Them Days』は、爆笑のドタバタ劇として楽しめる一方で、その裏側には「一歩間違えれば社会から脱落する」という、現代アメリカの鋭い社会問題が隠れています。

特にアフリカ系アメリカ人のコミュニティにおいて、立ち退きのリスクは他の人種に比べて統計的にも非常に高いという現実があります。ハッピーエンドのように見えて、最後にあの「477」という数字を突きつける演出は、システムという大きな壁に立ち向かう彼女たちの、長く厳しい戦いが続くことを示唆しているようにも感じられます。

bitotabi
bitotabi

主演が『NOPE』のキキ・パーマーで、彼女の新たな魅力を発見できる映画でもありましたよ。

ダニー
ダニー

次にアメリカ映画を観るとき、背景に映る電線のスニーカーやお金のやり取りに注目してみると、より深い人間ドラマが見えてくるかもしれないね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました