タランティーノが仕掛けた緩急の神業『キル・ビル Vol.2』が魅せる愛憎の終着点

アクション・パニック映画

クエンティン・タランティーノ監督による復讐劇の完結編、『キル・ビル Vol.2』は、前作の怒涛のバイオレンスから一転、より深く、感動的な人間ドラマへと焦点を移します。

主人公ザ・ブライド(ユマ・サーマン)の過去と、彼女とビル(デヴィッド・キャラダイン)との複雑な絆、そして母親としての新たな人生への挑戦が描かれる、必見の一作です。

bitotabi
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最後まで観てなんぼという噂は本当ですね。気楽なアクションとして終わらせたいのであれば別ですが、2まで観るとグッとドラマに深みが増します。

ダニー
ダニー

まさか泣けるとは思わなかったよね。

シリーズを通しての「緩急」の妙:最後まで観てこそ感動

この『キル・ビル』シリーズの真髄は、タランティーノ監督による構成の見事な緩急にあります。

『Vol.1』が、日本のサムライ映画やアニメーションの要素を大胆に取り入れ、ハイテンションかつ「おふざけ」ムードとも言えるエンターテインメントに振り切っていたのに対し、『Vol.2』は、そのムードを引き継ぎつつも、徐々に物語の核心へと迫ります。

序盤・中盤こそ1の風味を残したコミカルアクションですが、過去の修行回想シーンから、墓場の生き埋めシーンがまさかあのように繋がるとは思いもよりませんでした。しかもなぜか感動的。音楽もいいし、ブライドのガッツにもまた泣けてくるんですよね。不思議なシーンです。この土の中から這い上がる決死のシーンを境に、物語のトーンは劇的に変化します。

それまでの軽妙な雰囲気から一転、究極のサバイバルを経て、ザ・ブライドの「復讐」が「愛」と「生存」をかけた闘いへと昇華し、感動的なクライマックスへと向かう構成は圧巻です。このシリーズは、まさに二作を通して観て初めて、真のカタルシスが得られるように設計されています。

bitotabi
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正直、キル・ビルって、タランティーノ作品の中では軽視してましたが、このシーン以降で評価がガラッと変わりました。ちゃんと表向きのドラマとしてもよくできているなと。



カンフー映画への愛とタランティーノ流オマージュ

『Vol.2』では、カンフー映画、香港アクション映画への深い愛が随所に感じられます。

  • ズームインの多用: 修行の回想シーンなどでは、タランティーノ監督らしい香港映画特有の「香港ズーム」が多用されており、師弟関係の緊張感やアクションの迫力を高めています。この回想シーンも、香港ムービー特有の様式美とユーモアが混在しており、中盤までのムードを支えています。
bitotabi
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ちなみにマスター・パイ・メイを演じたリュー・チャーフィーは1970年代から活躍するカンフー映画を支えた名優の一人です。

  • キャスティングの妙: ビルの弟役として登場するマイケル・マドセンの存在も見逃せません。彼がカメラを見上げるショットは、タランティーノ監督の初期作『レザボア・ドッグス』での印象的なシーンを彷彿とさせる、監督自身の作品へのセルフオマージュとなっています。ブライドが襲撃を受けるシーンもそうですが、これもまた同じ構図です。
ダニー
ダニー

タランティーノ、めちゃくちゃ気に入ってんだね。

ビルとブライド、そして「Kiddo」:愛憎の絆の終着点

物語の核となるのは、ビルとザ・ブライドの関係です。ビルは終始、ブライドに対して「kiddo」と呼びかけます。

この言葉は、単なる愛称ではなく、彼らの間にあった師弟関係、恋人関係、そして支配と従属が入り混じった、複雑な愛憎の絆を象徴しています。

「kiddo」という言葉が持つ意味と背景

「kiddo」は、もともと「kid(子供)」のスラングで、主に以下のニュアンスで使われます。

  1. 親愛の情を込めた呼びかけ:子供や年下の人物に対して、「坊や」「お嬢ちゃん」といった親しみや愛情を込めて使われます。

  2. 相手を軽く見る、あるいはからかうニュアンス:場合によっては、「(青二才の)お前さん」のように、相手を下に見たり、少しからかったりするニュアンスを含むこともあります。

『キル・ビル』における「kiddo」

『キル・ビル』では、この「kiddo」がビルからザ・ブライドへの呼びかけとして繰り返し使われます。

  • 親愛と支配: ビルはブライドの師であり恋人でもあったため、この呼びかけには深い愛情や親愛の情が込められています。しかし同時に、彼女を自分の影響下にある存在として見ている、支配的なニュアンスも感じられます。

  • 名前との関連: 映画の終盤で、ザ・ブライドの本名が「ベアトリクス・キド」であることが明かされます(特に『Vol.2』)。この「Kid」という姓と「kiddo」という呼びかけが、意図的に関連付けられていると解釈されることもあります。ビルが彼女に付けた愛称が、実は彼女の姓をベースにしたものでもあった、という見方です。

タランティーノ監督が、この愛憎と支配が混じり合った独特な関係性を表現するために、あえてこの言葉を多用したと言えるでしょう。

そしてついにビルと対峙する終盤、この長きにわたる復讐劇は、思いがけない感動的な結末を迎えます。



新たな挑戦へのエールと感動のエンディング

この物語は、単なる復讐譚に留まりません。娘を守り、愛する母親として生きるというブライドの選択は、過去と決別し、新たな人生に踏み出す人への力強いエールのように感じられます。

そして、映画の感動をさらに高めるのが、エンドロールの粋な演出です。ユマ・サーマンのクレジットが「UMA THURMAN a.k.a. Mommy(別名 ママ)」として表示されます。これは、彼女が復讐者から一人の母親へと回帰したという、物語の真の着地点を見事に示しており、深い余韻を残します。


タランティーノ流の技巧とセンス

『キル・ビル Vol.2』の魅力は、深い物語性だけでなく、随所に光る監督の技巧と芸術的なセンスにもあります。

  • 斬新なアクション描写: 終盤の、座ったまま行われるアクションシーンは非常に印象的で斬新です。タランティーノ監督ならではの、予測不能な展開が最後まで観客を引きつけます。
  • サウンドトラックのセンス: 劇中で流れる「ゾンビーズ」の楽曲ミックスも非常にクールで、映画のムードを盛り上げています。タランティーノ作品の魅力の一つである、優れた選曲センスも堪能できるでしょう。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

『キル・ビル Vol.2』は、血と暴力の裏に、愛と家族、そして自己の解放という普遍的なテーマを秘めた傑作です。

ダニー
ダニー

ぜひ、その深い余韻を体験してみてね。

bitotabi
bitotabi

新たな挑戦や、愛情を優先して生きることへの、エールももらえますよ。

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