1985年に公開された『バタリアン』(原題:The Return of the Living Dead)は、モダン・ゾンビの父ジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』へのオマージュでありながら、そのルールを鮮やかに裏切ってみせたパンクな傑作です。
本作がいかにして後のポップカルチャーにおける「ゾンビ像」を決定づけたのか、その裏側に迫ります。

英題のとの違い、脳みそを食べる理由、そこに込められたメタファーを詳しく解説していきます。

きっと読んだ後は『バタリアン』が違って見えるはずだよ~。
奇才ダン・オバノン:SF・ホラー界の「裏の支配者」が放つ毒
本作を語る上で欠かせないのが、監督・脚本を務めたダン・オバノンの存在です。彼の経歴を振り返ると、本作がいかに贅沢な才能によって作られたかがわかります。

- 『エイリアン』:原案・脚本を担当。
- 『トータル・リコール』:脚本。
- 『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』:デス・スター攻略画面などのコンピュータ・グラフィックスを手掛け、視覚効果の黎明期を支えました。
- 『スペースバンパイア』:脚本。
オバノンは、黎明期のデジタル技術からSFの古典までを網羅した、いわば「映像表現の最前線」にいた人物です。そんな彼が初監督作として選んだのが、ロメロ流ゾンビの定石をあえて破壊する「全方位への反逆」でした。

多くの革新的な作品で脚本を書いていることから分かる通り、アイデア性や意外性に富んだ人物だということがよく分かりますね。
Q1. なぜ「バタリアン」という邦題になったのか?
本作のは『The Return of the Living Dead(リビングデッドの帰還)』。
邦題の『バタリアン』とは似ても似つきませんが、これには当時の日本独自の宣伝戦略が関係しています。
- 軍団を意味する「Battalion」 英語で「大隊」や「軍団」を意味する単語です。多数の死体が押し寄せるイメージから採用されました。
- 独自のブーム形成 結果として、劇中の人気キャラクター(上半身だけの女性ゾンビ)から「オバタリアン」という流行語が生まれるなど、日本において独自のカルチャーとして定着することに成功しました。
Q2. なぜゾンビは「脳みそ」を食べるのか?
本作のゾンビたちが「脳みそ(Brains!!)」を執拗に求めるのには、切実な理由があります。
「死んでいることの苦痛を和らげるため」
彼らにとって、腐敗していく体で生き続けることは耐え難い痛みであり、生きた人間の脳を食べることで、その痛みが一時的に緩和されるという設定です。この「ゾンビ=脳みそ」というイメージは本作が発祥であり、後の多くの作品に影響を与え続けています。

また、この設定にはゾンビ映画につきものである社会風刺も込められていますので、後ほど詳しくお伝えします!
Q3. なぜ本作のゾンビは走るのか?
ロメロ作品のゾンビは「ゆっくり歩く」のが基本でしたが、オバノンは「知能を持ち、言葉を話し、さらに全力疾走してくる死体」を描きました。これは、2000年代以降の『28日後…』などに先駆ける描写であり、逃げ場のない絶望感を演出するための画期的な発明でした。
1980年代のメタファー:なぜ「脳」が狙われたのか
本作が公開された1980年代半ば。この時代背景を考えると、「脳を喰らう」という描写には重層的な風刺が読み取れます。
1. レーガン政権下の「思考停止」と消費主義

レーガン大統領時代のアメリカは、消費主義が加速した時代でした。欲望のままに消費を続ける大衆を、「生者の思考(脳)を奪い取る死者」として描いた皮肉とも取れます。自分に欠けている「生きた意識」を外から取り込もうとする姿は、精神的な空虚さを抱えた現代人への警鐘のようです。
2. 情報化社会の黎明と「個」の喪失

1980年代は、インターネットの前身であるネットワークが広がり始めた時期です。オバノン自身、コンピュータ・グラフィックスの現場で情報のデジタル化を間近に見ていました。 誰もが同じ情報を摂取し、群れとなって同じ言葉を叫ぶゾンビの姿は、主体性を失い「外部からの情報(脳)」を注入されなければ動けなくなる、高度情報化社会の危うさを予言していたのかもしれません。

個人的にはメタファーとしてこのインターネットが人間の思考を奪うという点が一番強いんじゃないかと思ってます。
3. 国家という巨大なシステムへの不信
劇中の元凶は軍が開発した化学兵器であり、その隠蔽工作が被害を拡大させます。個人の知性(脳)が国家のシステムによって無慈悲に処理される構造は、ベトナム戦争後の社会不安や、冷戦下の管理社会に対する強烈なアンチテーゼとなっています。

今日の映学:絶望を笑い飛ばすパンク精神
最後までお読みいただきありがとうございます。
本作の登場人物がパンク・ファッションに身を包んだ若者たちであることは象徴的です。「No Future(未来はない)」を掲げる彼らが、旧時代の遺物であるゾンビに知性を食いつぶされていく。
ダン・オバノンという「テクノロジーの進化を内側から見ていた男」が撮ったからこそ、『バタリアン』は不気味でシニカルな予言書として今なお輝きを放っているのです。
アマゾンプライムでの配信を機に、この「脳みそ」を求める狂騒曲をぜひ再評価してみてください。

笑いと恐怖の中に、情熱やカッコよさもまた感じられるのではないでしょうか。

特殊効果もかなりハイレベルだよね。
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