タイの映画館に足を運ぶと、他のジャンルに比べてホラー映画の存在感が際立っていることに気づくかもしれません。
なぜタイではこれほどまでにホラー映画が好まれ、多く制作されているのでしょうか。その背景と人気の秘密に迫ります。

私は現在、タイに生活拠点を移しているのですが、とにかくもうホラー映画の公開が多いこと多いこと。

どうしてなんだろうねぇ?
1. ホラー映画はタイ映画界の重要ジャンル

タイで制作される映画におけるホラー映画の割合について、正確な統計データは一般に公開されていません。しかし、現地で映画をよく観る人々の体感としては、公開されるタイ国産映画の「およそ20%〜30%程度」、つまり4〜5本に1本はホラー、あるいはホラー要素の強い作品だと感じるほど、その存在感は非常に大きいです。実際、興行収入ランキングで上位に食い込むことも珍しくなく、コメディ映画と並び、タイ国産映画の二大看板ジャンルと言えるでしょう。
例えば、2023年にはホラー要素を含んだコメディ・ラブストーリー『サッパルー!街を騒がす幽霊が元カノだった件』が7億バーツを超える大ヒットを記録しました。また、純粋なホラー作品では『女神の継承 (The Medium)』が世界的にもヒットし、2024年には『ティーヨッド2(ธี่หยด 2)』のような超自然的なアクションホラー映画が公開からわずか数日で大ヒットを記録するなど、ホラーは常にタイ映画界の「稼ぎ頭」の一つであり続けています。
2. なぜタイではホラー映画がこれほど好まれるのか?
タイのホラー映画人気には、文化、宗教、社会背景など、複数の要因が深く関わっています。

- アニミズム・精霊信仰の根強さ: タイには古くからアニミズム(精霊信仰)が根付いており、森羅万象に精霊や霊が宿ると考えられています。小さな「ピー(霊)の家」があちこちに見られるように、日常の中に霊の存在が当たり前のように溶け込んでいる文化です。そのため、幽霊や心霊現象を題材にしたホラーは、観客にとって「フィクションでありながら、どこか現実味を帯びた、身近な恐怖」として受け入れられやすいのです。
- 仏教との融合と輪廻転生: タイの主要な宗教は仏教ですが、輪廻転生や因果応報の思想は、幽霊が前世の悪行や未練によってこの世に留まる、といったホラーのテーマと親和性が高いです。報われない魂や怨霊の物語は、観客の共感を呼びやすい部分があります。
- 大衆娯楽としての需要: ホラー映画は、スリルやドキドキ感を求める大衆にとって、手軽に楽しめるエンターテイメントとして非常に人気があります。また、低予算でも効果的な演出が可能であるため、制作会社にとっても比較的作りやすいジャンルであるという側面もあります。
- 社会風刺やメッセージ性: 単なる恐怖だけでなく、タイのホラー映画の中には、社会問題や人間の心の闇、倫理観などを風刺するメッセージが込められている作品も少なくありません。例えば、家族の絆、裏切り、貧困といったテーマが幽霊と絡めて描かれることで、観客に深い印象を残します。
- 独特のユーモアとの融合: タイのホラー映画には、日本や欧米のホラーとは異なり、コメディ要素が強く取り入れられているものが多いのが特徴です。恐怖と笑いが絶妙にブレンドされることで、観客は緊張と緩和を繰り返し、よりエンターテイメントとして楽しめます。「怖いけど笑える」というバランスが、広い層に支持される要因となっています。
これらの要素が複合的に作用し、タイではホラー映画が非常に愛され、映画館でも大きな存在感を示していると言えるでしょう。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
タイの映画館でホラー映画が多く見られるのは、その文化、信仰、そして市場の特性が深く関係しています。
正確な統計はないものの、タイ国産映画の約20%〜30%がホラーまたはホラー要素の強い作品であり、その人気の背景には、精霊信仰や仏教思想との親和性、大衆娯楽としての需要、社会風刺、そして独特のユーモアとの融合があると言えます。
タイを訪れた際には、ぜひ現地のホラー映画を体験し、その奥深さを感じてみてはいかがでしょうか。

割と英語字幕付きが多いので、何となくストーリーも分かりますよ!

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