1996年4月28日、タスマニア島ポート・アーサーで発生した無差別銃乱射事件を題材にした映画『二トラム』。
この事件で犯人のマーティン・ブライアントは35人の命を奪い、15人を負傷させました。
事件の背景や犯人の動機に迫るこの映画は、観る者に深い考察を促します。
今回の記事では、映画『二トラム』に関して、どうしてあのような事態に陥ってしまったか、如何に防ぐことができたかを、教育関連、発達障害関連の免許を所有する私の観点から解説していきたいと思います。
この映画のあらすじはこんな感じ。
1990年代半ばのオーストラリア、タスマニア島。観光が主な産業の閉鎖的なコミュニティで、母と父と暮らす青年ニトラム。彼は小さなころから周囲になじめず孤立し、同級生からは名前を逆さ読みした「NITRAM(ニトラム)」という蔑称で呼ばれ、バカにされてきました。
成人したニトラムは、未だに花火で遊んだり、地元の小学生に爆竹を与えるなどの行為を続け、近隣から疎まれていました。彼の父親は融資を受けてB&Bを購入し、ニトラムに経営を手伝ってもらおうと考えていましたが、計画はうまくいきませんでした。
ある日、ニトラムは元女優で裕福な中年女性ヘレンと出会い、彼女と親しくなります。ヘレンは彼に車を与え、二人は一緒に暮らし始めますが、ニトラムの行動は次第にエスカレートしていきます。彼はヘレンの庭でエアライフルを使って遊び、本物の銃を購入したいと頼みますが、ヘレンは拒否します。
その後、ニトラムはヘレンの遺産を相続し、酒に依存し始めます。彼は地元の銃器店で半自動小銃や拳銃を購入し、本格的な射撃訓練を始めます。そして、1996年4月28日、ポート・アーサーで無差別銃乱射事件を引き起こし、多くの命を奪いました。
なぜ問題行動につながったか
まずは、どうしてマーティンが繰り返し問題行動を起こしてしまうかを解説します。
注目を浴びたかった
マーティンは注目を得るために問題行動を起こしていた可能性があります。
例えば、彼は学校でのいじめや家庭内での無視に対して、過激な行動で注目を集めようとしました。
人との関わり方がわからない
適切な方法で人と関わることができず、問題行動を通じて関わりを求めていました。
例えば、友人関係がうまく築けず、孤立感を深めていったことが考えられます。
どうすれば防げたか
次に、どうすればあの悲劇を防ぐことができたのかを、解説します。
危険物を扱うルールを設定する
花火やレプリカ銃などの危険物を自由に使える状況を避けるためのルールが必要です。
例えば、家庭内での危険物の管理を徹底し、学校でも彼だけではなく全体に危険物の持ち込みを厳しく制限することが考えられます。
もちろん、これらの効果を存分に発揮するためには、よりよい信頼関係とコミュニケーションが必須です。
そのためにすべきことは…
対話の機会を増やす
保護者や信頼できる人物との対話の機会を増やし、公的なサービスを活用することが重要です。
例えば、学校でのカウンセリングや地域のサポートグループを活用することで、問題行動の早期発見と対応が可能になります。
もし、お子様の行動やコミュニケーションで悩んでいる方がいらっしゃれば、積極的に行政サービスを利用しましょう。
それは決して恥ずかしいことではないし、悪いことではありません。
もしお子様に合わなければ、すぐに他のサービスに切り替えればいいのです。
オーストラリアの発達障害の現状
最後に、オーストラリアの発達障害に関する現状について解説します。
オーストラリアでは、発達障害を持つ人々に対する支援が進んでいます。
ニューロダイバーシティの推進により、発達障害を「違い・特性」として捉え、個々の能力を最大限に発揮できる環境が整えられています。
特にインクルーシブ教育が積極的に取り入れられており、特別支援学校や学級を廃止し、すべての生徒が通常学級で学べるようにする取り組みが進行中です。
例えば、2005年に制定された「Disability Standards for Education 2005」がその基盤となっており、発達障害の生徒には個別の学習方法やサポートスタッフの配置、カウンセリングルームでの支援などが提供されています。
また、多民族国家であるオーストラリアでは、人との違いを受け入れる文化が根付いているため、インクルーシブ教育に対するネガティブな感情は少ないとされています。
このような背景を踏まえると、それでもなお、発達障害に対する認知はもっともっと広げるべきで、監督がインクルーシブ教育に対しても細心の注意を払うべきだと感じるのも理解できます。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『二トラム』から学んだことを、専門的な観点から解説しました。
ただの狂気じみたノンフィクションではなく、日本を含めた世界中で真剣に考えるべきメッセージが多分に詰まった映画です。
恐がらずに、どう向き合えばいいのか、考えていかなきゃね。
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