偽善の檻を壊す野生:『17歳のカルテ』リサという鏡

映画

映画『17歳のカルテ』には、主人公スザンナの物語と並行して、私たちの視線を釘付けにして離さないもう一人の圧倒的な主人公が存在します。

それが、アンジェリーナ・ジョリー演じるリサです。

ダニー
ダニー

強烈なキャラクターだったよね。

bitotabi
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今回は、施設のカリスマとして君臨した彼女の魅力の正体、そして役者の魂が宿ったその演技の凄みについて、原作の視点も交えながら深く掘り下げていきます。

誰もが抗えないカリスマ性の正体

劇中の患者たち、そして画面越しの鑑賞者までもがリサに一目置いてしまうのは、彼女がこの閉塞した世界において、唯一「剥き出しの真実」を生きているように見えるからでしょう。

彼女の最大の魅力は、周囲の大人が取り繕う健全さや良心の裏にある欺瞞を、一瞬で見抜いてしまう鋭い観察眼にあります。原作において彼女はソシオパス(社会病質者)と診断されています。良心の呵責を欠き、他者を操作する性質を持つこの診断名は、現代の基準では反社会性パーソナリティ障害の一部に分類されます。

しかし、彼女の場合、その性質は社会の嘘を暴く鏡として機能していました。誰もが直視したくない自分たちの醜さや弱さを、容赦なく突きつけてくる残酷なまでの誠実さ。嘘をついて社会に適応するくらいなら、狂気の中に留まることを選ぶその徹底した姿勢が、型に嵌まって生きる私たちにとって、恐ろしくも眩しい輝きを放つのです。

役柄の魂を宿した、アンジェリーナ・ジョリーの圧倒的な演技

このリサというキャラクターを唯一無二の存在にしたのは、若き日のアンジェリーナ・ジョリーによる、神懸かり的な演技です。

彼女は後に『トゥームレイダー』や『Mr.&Mrs. スミス』といった作品で、強く、美しく、戦う女性のアイコンとして世界的に定着しました。私生活を含めて聖母的なイメージや強固なスター像が確立された今の視点から振り返ると、本作で見せた「壊れゆく魂」の叫びは、より一層の衝撃を私たちに与えます。

ここでの彼女は、反抗的な少女という枠に留まらない深みを見せています。瞳の奥に潜む底知れない虚無感、支配欲の裏側に張り付いた震えるような孤独。それらを剥き出しの肉体を通して表現した演技は、高い評価という言葉だけでは語り尽くせないほどの、凄まじいリアリティを持っています。スターとしてのアイコン化が進む前の、一人の表現者が役柄と心中するかのような熱量は、今なお観る者の心を激しく揺さぶります。

脱走が意味する自己証明と、消えない孤独

リサは繰り返し施設を脱走しますが、原作を読み解くと、その目的は自由な生活を手に入れることではなく、自分を枠に嵌めようとするシステムをいかに出し抜くか、という点に置かれています。彼女にとって外の世界は安息の地ではなく、自分の力を証明し、アイデンティティを保つための戦場でした。

常に周囲を支配し、奔放に振る舞っているように見えますが、その実、彼女ほど自分を映し出す他者を必要としていた者はいません。支配することでしか他者と繋がれず、しかし同時に、同じ景色を見てくれる存在を切望していた彼女の矛盾。脱走してもなお施設という抑圧される場所に戻らざるを得ない彼女の足跡からは、行き場のない深い孤独が滲んでいます。



リサのその後:再会か、それとも永劫の停滞か

物語の最後、スザンナは施設を去り、現実の世界へと戻っていきます。しかし、リサのその後については、映画でも原作でも明確な答えは示されていません。

彼女はその後、施設を出てスザンナとどこかで再会できたのでしょうか。あるいは、施設にいる年老いた患者たちのように、一生をあの冷たい壁の中で過ごしたのでしょうか。

リサのような性質を持つ人間が、当時の保守的な社会で折り合いをつけて生きていくことは、決して容易ではなかったはずです。しかし、たとえ彼女が施設で人生を終えたとしても、彼女がスザンナの心に刻んだ「中断された時間の重み」は消えることはありません。スザンナという再会すべき友を得たことが、彼女のその後の人生に、一筋の光を投げかけたことを願わずにはいられません。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

私たちはリサの中に、自分たちが社会で適応するために押し殺している野性や本音を見出します。

彼女が放つ剥き出しのエネルギーは、時代を超えて、観る者の心にある「自分らしくありたい」という切実な願いを揺さぶり続けています。

リサという鏡に照らされたとき、私たちは自分が本当に「自分の人生」を生きていると言えるのか、もう一度自分に問い直すことになるのです。

bitotabi
bitotabi

今まで観た映画の中のサブキャラとして、非常に印象に残る役の一人でした。

どこか他人事とは思えないし、強烈に惹かれてしまう。

ダニー
ダニー

毒なのか薬なのか、あるいは羨望なのか。

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