お化けが視えるのに、全力で無視する女子高生。そんな斬新な設定が世界中で話題を呼んだコミックを実写化した映画『見える子ちゃん』は、ホラーコメディの枠を超え、予測不能な展開と心揺さぶる感動が待つ傑作です。
恐怖に立ち向かう主人公の姿を通して、あなたは現代の日常に潜む「見えない」恐怖と、それを取り巻く人間の情けなさを、時にゾッと、時に笑い、そして涙腺を緩ませながら体感することになるでしょう。

かなり話題となったこちらの作品。これから鑑賞する人、あるいはいまいち分からなかった人に向けた解説記事です。

この話題作の魅力の深部を解説するけど、ストーリーの結末に関するネタバレは一切含んでないから、安心してね~。
作品概要、あらすじ
作品概要
本作は、泉朝樹による同名ホラーコメディ漫画を原作としています。ある日突然、普通の人には見えない異形な“ヤバい霊”が見えるようになってしまった女子高生・四谷みこ(原菜乃華)を主人公に、彼女が選んだ生き残り術「見えていないフリ」を貫く姿を描きます。
監督・脚本を務めたのは、『残穢(ざんえ)―住んではいけない部屋―』や『殿、利息でござる!』など、多彩なジャンルで手腕を発揮する中村義洋。
彼はJホラーの金字塔『仄暗い水の底から』の脚本家としても知られており、その特性は本作にも色濃く反映されています。恐怖描写だけでなく、人間関係の絆や情愛を深く描き出す手腕により、ホラーでありながらも涙腺を刺激する感動的な要素が物語に深みを与えています。中村監督は、恐怖とユーモア、そして青春の要素を絶妙にブレンドし、全く新しい体感型ホラーエンターテイメントを創り上げました。

あらすじ
ある日を境に、異様な姿の霊が見え始めた女子高生のみこ。霊たちに「見えている」と悟られれば、何が起こるか分からないという恐怖から、彼女はどんなにヤバい霊が周りにいようとも、ひたすら全力で無視するという過酷な日常を送ることを決意します。
親友のハナ(久間田琳加)には、いつも生命エネルギーに満ちているせいで、巨大で危険な霊が引き寄せられています。さらに、自称・霊能者の同級生ユリア(なえなの)には、みこが「すご腕の霊能者」だと勘違いされ、行動を共にすることに。
そんな中、産休の担任の代理として遠野先生(京本大我)が赴任してきますが、彼には特に異様な霊が憑いていました。遠野の影響か、ハナの様子に異変が生じ、ついには倒れてしまいます。親友の危機に「無視」を貫いてきたみこは、ついに「無視できない」恐怖に立ち向かうことを決意します。

用語解説
六条の御息所(ろくじょうのみやすどころ)
作中、ハナの周りに現れる強力で悪意のある霊の性質を説明する際に、その霊が持つ強い怨念や嫉妬深さを指し示す例えとして登場します。

「六条の御息所」とは、古典文学『源氏物語』に登場し、生霊(いきりょう)となって人を呪い殺したとされる、「嫉妬深く、強い怨念を持つ女性の象徴」として非常に有名です。ハナが引き寄せてしまう霊の危険性を、この古典的な怨霊のイメージに重ねることで、みこが直面する恐怖の深刻さが表現されています。
刀印護符(とういんごふ)
物語の重要な要素として登場する護符(ごふ)です。これは、日本の陰陽道などで人差し指と中指で「刀」の形を作り魔を断つとされる「刀印」の秘術を札に封じ込めたもの。

霊を遠ざける強い力を持つとされますが、作中ではその効力や取り扱い方に注意が必要なものとして描かれ、みこが藁にもすがる思いで手にする、物語に更なるサスペンスを加えるアイテムです。

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エネルギッシュなギャルは憑かれやすい
作中において、主人公みこの親友であるハナが常に大量の、しかも強力な霊を引き寄せてしまうのは、彼女の底抜けの明るさと生命エネルギーの強さが原因だと解釈されています。
この設定は、ホラーにおける「霊は暗く、弱っている人を狙う」という定説を覆す、非常にユニークで現代的な解釈です。ハナの持つ「エネルギッシュなギャル」的な明るさや、常に前向きなオーラが、飢えた霊にとって最高の栄養源のように映っている、という皮肉が効いた設定は、コメディとしての面白さも生み出しています。

二段構えのオチが非常にいい!
本作は、恐怖やコメディの面白さだけでなく、物語終盤に用意された「二段構えのオチ」が秀逸だと評判です。
一見、問題が解決したかのように思わせる第一のオチの後に、実はまだ全てが終わっていなかった、あるいは「霊的な世界観の根幹に関わる」より深い真実が提示される第二のオチが待っています。
この構成により、観客は物語が終わった後も「あれは一体どういうことだったのか?」と考察を巡らせることになり、作品の余韻と奥深さを何倍にも増幅させています。中村監督の伏線回収とミスリードの巧みさが光る、見事な結末です。

Jホラーでここまでのオチは中々なかったような気がします!
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
映画『見える子ちゃん』は、Jホラーのエッセンスと青春コメディの楽しさが融合した、新感覚の作品です。
みこが「見えていないフリ」を貫く姿の緊張感と、時折見せるユーモラスな表情、そして親友への深い愛情。様々な感情を揺さぶるこの物語を、ぜひ体感してみてください。

あんまり怖くはないので、苦手な人やお子さんでも観やすいと思います。

感動するしね!
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