「⿃には巣、クモには網、⼈間には友情」
映画『ファースト・カウ』をシネリーブルで鑑賞しました。
最も高い評価を受ける監督のひとりであるケリー・ライカート。
配給はA24です。
世界中の映画祭で計157部門にノミネート、27部門を受賞しています。
ものすごく評価が高いんだね。
物語の舞台は1820年代、西部開拓時代のオレゴン。
http://firstcow.jp/
アメリカン・ドリームを求めて未開の地にやってきた料理人のクッキーと、中国人移民のキング・ルー。
共に成功を夢見る2人は自然と意気投合し、やがてある大胆な計画を思いつく。
それは、この地に初めてやってきた“富の象徴”である、たった一頭の牛からミルクを盗み、
ドーナツで一攫千金を狙うという、甘い甘いビジネスだった――！
今回の記事では、『ファースト・カウ』をより深く楽しむためのポイントをネタバレなしで解説します！
オープニングをよく観ておくべし
本作は、昔の映画のような正方形に近い４：３のアスペクト比で作られています。
そのことに気持ちが持っていかれそうになりますが、ぜひ冒頭のシーンを集中してご覧いただきたいんです。
コンテナ船が川を流れるシーンの次に、ダウンジャケットを着た女性と犬が登場します。
服装や船から推察するに、これは現代なのでしょう。
そこで、女性があるものを発見するのですが、この時の表情にもご注目いただきたいんです。
終盤に繋がる重要な伏線ですので、お見逃しなく！
開拓時代のオレゴン州
私は開拓時代のアメリカについて知識が乏しいので、1820年代のオレゴン州について、少し調べてみました。
1812年からの米英戦争で、イギリスはパシフィック毛皮会社の拠点全てを支配下に置いた。1818年の条約ではイギリスとアメリカがロッキー山脈の西、太平洋までの地域を協同で管理することが決められた。1820年代と1830年代にはハドソン湾会社がバーンクーバー砦（1825年にジョン・マクローリンが建設）にあるコロンビア地区本社から太平洋岸北西部を支配した。バンクーバー砦は現在のオレゴン州ポートランドからコロンビア川を挟んで対岸（ワシントン州）にある。
Wikipediaより引用
米英戦争というのは、カナダ・イギリス・先住民（インディアン）VSアメリカ合衆国の戦争です。
トビー・ジョーンズ演じる仲介商はイギリス人なんですね。だから、インディアンとも仲良さげだったというわけです。
ちなみに、仲介商の妻で、かつ通訳をしていたをしていた女性は『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』にも出演していたリリー・グラッドストーン。
映画の中で、砦と呼ばれる場所は都市の支配者・武力集団を堅固に防護する目的で建てられるもので、支配者が居住する城館を兼ねることも多いんです。
その近所は、ちょっとした村のようになっており、人が集まってくるんですね。
そして、その村には「RWP」という旗が立てられていました。
ハドソンズ・ベイ・カンパニーが「HBC」と呼ばれているので、それを模したものなのかなと思います。
もしこのあたりの詳細を知っている人がいればコメントいただければ幸いです。
ソフトゴールド（毛皮）
主人公は、毛皮を手に入れるためのハンターの一行と行動を共にしていました。
先述のハドソンズ・ベイ・カンパニーは、毛皮の貿易を中心とした企業だったので、そこに買い取ってもらうんです。
ビーバーや鹿、ラッコなどの毛皮は大変価値が高く、ソフトゴールド（柔らかい金）と呼ばれていました。
しかしやがて、1850年頃にはゴールドラッシュが起きると毛皮の威力は弱くなっていきます。
貝殻や紙の価値
本作を観て気になったのが、賭け事や売買の支払いに、銀貨だけでなく、細長い牙のような物や紙も用いていたことです。
あの細長いものは、「ツノガイ」と呼ばれる貝なんですって。
とくに、アメリカインディアンは、ツノガイをひもで通して貝貨としていたという歴史があるんです。
まだ通貨の流通が十分でなかったので、こういったものも貨幣として価値があったんですね。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます！
映画『ファースト・カウ』をより楽しむための解説をお届けしました。
ストーリーもとっても面白いので、ぜひ劇場でご鑑賞ください。
開拓時代の勉強にもなるよ！
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