80年代SFXブームの中で、あえて「白黒」で「特殊メイク」を魅せようとした狙いと異端の美学

映画

前回の記事では、映画『エレファント・マン』のモデルとなった実在の男性や、19世紀ロンドンの過酷な背景について触れました。

今回は、私が鑑賞前に最も注目している映像と美術、そしてこの異色のプロジェクトを成立させた意外な立役者に迫ります。

本作が公開された1980年という年は、映画史を振り返っても非常に象徴的な年です。 この年、映画界はまさに特殊効果(SFX)の黄金時代を迎えていました。

『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』に代表されるように、未来的で壮大なスケールの物語を描くSFが時代の潮流であり、最先端の技術で未知の世界を具現化することが映画の至上命題となっていました。

同時に、ホラー映画の分野でも革命が起きていました。スティーヴン・キング原作の『シャイニング』や、特殊メイクによるショッキングな描写が話題となった『13日の金曜日』が公開されたのも、奇しくも同じ1980年です。

SFが「未来」を映し、ホラーが「視覚的な恐怖」を追求し、特殊効果という魔法に世界中が熱狂していたその瞬間に、デヴィッド・リンチは全く逆の方向を向いていました。

あえて色彩を捨てた「白黒」の手法を選び、そこで「特殊メイク」の力を一人の人間の内面と尊厳を描き出すために注ぐという、異端ともいえる美学を貫いたのです。

bitotabi
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この記事では、映画史に残る本作のビジュアルがいかにして生まれたのか、以下のポイントを中心に整理しています。

  • 1980年という映画の転換点: 他の超大作と並べて見る本作の異質さ。
  • アカデミー賞を変えた特殊メイク: 一人の技術者が起こした奇跡。
  • 白黒映像に隠された意図: カラー全盛期にあえて色彩を捨てた理由。
  • カルトとコメディの融合: 制作を支えた意外なプロデューサーの正体。
ダニー
ダニー

どれも気になるぜ!

カルトの帝王を支えた、コメディ界の巨匠

デヴィッド・リンチという当時はまだ無名の新人を支えるために集まったのは、映画界の歴史に名を刻むような、まさに「超一流」のプロフェッショナルたちでした。

後に『ハリー・ポッター』シリーズで魔法の世界を作り上げる美術監督のスチュアート・クレイグや、ホラー映画の撮影で右に出る者はいないと言われた巨匠フレディ・フランシス、そして特殊メイクの概念を変えることになるクリストファー・タッカー。

これほど豪華な布陣が整った背景には、一人の意外な人物の存在がありました。プロデューサーを務めたメル・ブルックスです(それぞれのスタッフの仕事については、後ほど詳しく解説します)。

『プロデューサーズ』などで知られるコメディ界の巨匠である彼は、当時まだ無名に近かったリンチのデビュー作『イレイザーヘッド』を観て、その異才をいち早く見抜きました。「君は狂っている、最高だ!」と監督に抜擢したブルックスは、自分の名前が出るとコメディ映画だと誤解されるのを恐れ、あえてクレジットから自分の名前を外してまでリンチの才能をバックアップしたのです。

アカデミー賞を動かした執念:クリストファー・タッカー

ブルックスが用意した最高峰のスタッフの一人が、特殊メイクのクリストファー・タッカーです。

彼は実際のジョセフ・メリックの遺体から取られた石膏模型を徹底的に研究し、怪物の造形ではなく、一人の人間としての痛みが伝わる造形を追求しました。

あまりに精巧で心揺さぶるその出来栄えは、当時の映画界に衝撃を与えました。当時、アカデミー賞にはまだメイクアップ賞が存在していませんでしたが、本作を機に設置を求める声が殺到し、翌年から正式に新設されることになったのです。一人の技術者の執念が、映画界の歴史を変えた瞬間でした。



光と影の魔術師:撮影監督フレディ・フランシス

これほど精巧なメイクを施しながら、リンチは白黒で撮るという選択をしました。撮影のフレディ・フランシスは、カラー全盛期にあえて色彩を排除することで、ロンドンの煤けた空気や、ガス灯が落とす深い影、そしてメリックの肌の陰影を際立たせました。

モノクロームにすることで、生々しさは抑えられ、代わりに古典芸術のような気品と孤独が宿ります。最新の特殊技術を驚かせのために使うのではなく、人間の内面を映すために使う。これこそが、リンチがあっぱれと称される狙いだったのではないでしょうか。

最高の準備が整いました

後に『ハリー・ポッター』を手がける美術のスチュアート・クレイグによる徹底した時代考証も加わり、リンチのビジョンを支える完璧な舞台が整いました。

プロフェッショナルたちの情熱を知った今、私の期待は最高潮に達しています。

bitotabi
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『イレイザーヘッド』で寝落ちしてしまった私ですが、この贅沢な布陣が生み出した映像美、そしてその先にある人間賛歌を、今度こそこの目で見届けたいと思います。

ダニー
ダニー

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