『クマと民主主義』猟友会の実態と村の知られざる闘い

ドキュメント・ノンフィクション系映画

猟友会ってどういう存在か知ってますか? クマ対策にかかる費用は?

連日のようにニュースで耳にするクマの出没情報。

今の日本においてはどこか情報に麻痺してしまっている部分もあり、政治のニュースから関心を逸らすために報道されているのではないかと感じてしまうことも正直なところです。

しかし、実際のところ問題はほとんど解決しておらず、その場しのぎの駆除だけでは根本的な解決にならないのが現実です。被害は続く一方で、すべてを駆逐すれば可哀想だという世論の声があるのも事実です。

では、一体どうすればよいのでしょうか。背景には、かつて畑だった場所が放置され、手入れされないまま草木が伸び放題になったことで、クマ側の警戒感が薄れ、人里とクマの生活範囲の境界線が曖昧になってしまったという事情があります。だからこそ、移住を補助して人を呼び込むことや、畑を耕せる人を誘致・サポートするといった、人間の生活圏をもう一度しっかり維持する一手が必要なのだと思い知らされます。

本作は、そうしたクマと人間の関係性だけでなく、後半にかけて村長や組合、そして猟友会といった村の運営や政治的な問題へと深く切り込んでいきます。

猟友会に依存してきた村の構造と危うさ

作中で描かれるのは、クマが出没した際に動く猟友会(ハンター)の過酷な現実です。出動の報酬は1回につき2万円、緊急要請であれば3万5千円。そして、相次ぐ出動によってその総額は1千万円を超える規模に膨れ上がっていました。

驚かされるのは、クマを駆除するかどうかの判断や実務の大部分が、あまりにも脆いルールの下で猟友会に丸投げされているという点です。ハンター任せになっているこの状況に対し、役場の主体性を求める住人の声も上がります。その一方で、知床などの先進的な地域では、電気柵(電線を1本通すだけでも大きな効果がある)の設置や、クマが開けられない構造のゴミ箱の導入など、被害を出さないための予防策「共生への一手」が講じられています。

これほどまでに被害が常態化している現状では、人命を守るためにハンターの存在は欠かせません。しかし、猟友会をどのように育成し、配置していくべきかという議論は、まるで国家が軍隊や武器を持つべきかという議論にも通じる、非常に重いテーマを孕んでいます。

北海道・島牧村の事例から見る、対立と条例化への道のり

映画の舞台となった北海道島牧村では、2018年の夏から秋にかけて毎晩のようにヒグマが住宅地に現れ、庭や小屋を荒らすという異常事態が約2か月にわたって発生しました。地域の中で意見が割れ、深刻な溝が生じることを恐れて、住民たちは本音で話し合うことを避けるようになっていきました。

その後、村の議会や行政との間で様々なすれ違いが生じ、猟友会が議会の決定や方針によって簡単に出動できないような事態に陥ります。クマが出没しているにもかかわらず、現場で自由に発砲できない日々が続きました。このハンター依存の構造を打破するため、島牧村ではのちに猟友会の要綱を見直し、行政や議会がしっかりと責任を持つための条例化などへと舵を切っていくことになります。

この過程を経て、行政の責任と指揮系統が明確になったことで、猟友会は「行政の正式な要請(鳥獣被害対策実施隊などとしての出動)」という明確なタイミングで動く仕組みへと移行していきました。報酬面においても、それまでの曖昧な手当から、危険度や出動実態に見合った適正な報酬がしっかりと担保される形へと整えられていくことになります。この一連の経緯は、行政の責任放棄や意思決定の不透明さがいかに現場を混乱させるかを如実に物語っていました。

映画が示すメッセージと、受け取った気づき

映画の終盤、村長は次のように語っていました。クマと人の生活圏をしっかりと分け、その間に可能な限り緩衝帯(バッファゾーン)を作り、最終的には電気柵などで一線を越えない境界線を明確にするという徹底的なアプローチの必要性。暮らす人々自身がクマを誘引するような行動を慎み、万が一出てきた場合には適切に排除すること。そして、そのための切り札として猟友会を正当に評価し、持続可能な形で育てていかなければならないということです。

これまで猟友会はボランティアのような感覚で活動しているものだと思い込んでいましたが、その実態や直面している法的・政治的な壁を知ることで、ニュースの見え方が180度変わりそうなほどの大きな気づきを与えてくれる作品でした。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回はドキュメンタリー映画『劇場版 クマと民主主義』を通じて、表面的なニュースの裏側にある地域社会の構造や、人間側のシステム不全について考えてみました。単なる動物の出没問題にとどまらず、私たちが暮らす社会のあり方や民主主義の機能不全を浮き彫りにする一作です。気になった方はぜひ配信などでチェックしてみてください。

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