『The Substance』は、美しさの追求がもたらす恐怖を描いた容赦ないボディホラーです。
しかし、この作品の真の魅力は、恐怖演出に留まりません。
スタンリー・キューブリック、デヴィッド・クローネンバーグ、アルフレッド・ヒッチコックら、ホラー映画の巨匠たちへの深いリスペクトが随所に感じられる、まさに「映画愛」に満ちた傑作なのです。

あなたはどれだけ気づくことができましたか?

早速紹介していくよ~!
1. スタンリー・キューブリックへの敬意:『シャイニング』と『2001年宇宙の旅』
血まみれの演出や、スタジオの廊下やトイレ、そしてバスルームの下から見上げるショット。これらのシーンは、『シャイニング』への明確なオマージュです。

そして、物語の終盤で壮大に響き渡る『ツァラトゥストラはかく語りき』は、人類の進化と退化という壮大なテーマを扱った『2001年宇宙の旅』を彷彿とさせ、物語をより深みのあるものにしています。
2. デヴィッド・クローネンバーグの遺産:『ヴィデオドローム』とボディホラー
主人公の唇のアップがテレビ画面に映し出されるシーンは、デヴィッド・クローネンバーグ監督の『ヴィデオドローム』へのオマージュです。
この作品が描いたメディアと肉体の関係性、そして精神の変容というテーマを、『The Substance』は見事に受け継いでいます。さらに、CGに頼らない生々しい特殊メイクと「ねちゃっ」とした音響は、クローネンバーグが築き上げたボディホラーの真髄を体現しており、観客に生理的な不快感を与えます。

3. 女性の狂気を描いた傑作へのオマージュ:『ブラック・スワン』
理想の自分を追い求めるあまり精神的に追い詰められていく主人公の姿は、ダーレン・アロノフスキー監督の『ブラック・スワン』と共通しています。

完璧な自分を演じようとする強迫観念が、やがて現実と幻想の境界を曖昧にし、破滅へと向かっていく様は、現代の女性が抱える葛藤を鋭く描き出しています。
4. ショット単位で再現された狂気:『サイコ』
本作で最も驚かされるオマージュの一つが、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』へのものです。
シャワーシーンがあるだけでなく、そのアングルやカットの繋ぎ方、緊迫感あふれる演出は、ヒッチコックが確立した恐怖の文法を忠実に再現しており、監督がこのジャンルの巨匠に深い敬意を払っていることが伝わってきます。

5. 権力と身体の歪み:『シェイプ・オブ・ウォーター』
テレビ局の権力者ハーヴェイが、トイレの後に手を洗わないという描写は、ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』へのユーモラスでありながら痛烈なオマージュです。
道徳的な腐敗を身体的な不潔さで表現するこの手法は、権力者が抱える内面の歪みを観客に強く印象付けます。

今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
『The Substance』に散りばめられたこれらのオマージュは、遊びや模倣ではありません。
それぞれの作品が持つテーマや映像言語を巧みに取り入れることで、物語に深みと多層的な意味を与えています。
この映画は、過去の傑作への愛を表現しつつ、現代社会のルッキズムというテーマをホラーというジャンルで見事に昇華させた、まさに新たな金字塔と言えるでしょう。

これでもか!というオマージュ数々も、あっぱれです。多分、細かいところを挙げれば、まだまだあると思います。『ブレードランナー』とか。

こんなにたくさんある作品、なかなかないよね。
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