日本やタイのホラー映画に頻繁に登場する「死者の祟り」という概念。怨念を抱いた霊が特定の人間や家系を呪う物語は、アジアホラーの定番です。
では、欧米にも同じような概念は存在するのでしょうか?

こちらの記事をFacebookでアップしたところ「欧米には祟りの概念があるのか?」というコメントをいただいて気になったので掘り下げてみました。

確かに、日本のように因果系のホラーって思い浮かばないような…
結論から言えば、欧米にも死者が生きている人間に危害を加える話はありますが、その恐怖の根源や表現方法には大きな違いがあります。
この記事では、具体的な作品を挙げながら、その違いを深掘りしていきます。
1. 恐怖の根源:精神的な呪い vs. 物理的な脅威
日本・タイのホラー:個人的な怨念と因果応報
アジアホラーの「祟り」は、死者が生前に受けた不当な扱いに対する個人的な恨みから生まれます。その目的は、加害者やその子孫を精神的に追い詰め、破滅させることにあります。

- 『リング』(日本):呪いのビデオを見た人間を7日後に死に至らしめる貞子の怨念は、まさに「呪い」そのものです。物理的な暴力ではなく、じわじわと精神を蝕み、死に至るまでの恐怖を描いています。
- 『呪怨』(日本):家族に殺された伽椰子と俊雄の怨念が、その家に足を踏み入れた人々を無差別に襲い、呪いの連鎖が続いていきます。これは、人間の罪がもたらす因果応報の物語です。
- 『シャッター』(タイ):主人公のカメラマンが、過去にひどい仕打ちをした女性の霊に憑りつかれ、心身ともに衰弱していく物語です。霊の復讐は肉体を傷つけるだけでなく、罪の意識を浮き彫りにします。
これらの作品に共通するのは、物理的な暴力ではなく、不可解な現象や、追い詰められる心理状態を通じて恐怖が生まれる点です。

欧米ホラー:肉体的な暴力と普遍的な悪
一方、欧米ホラーに登場する死者や霊は、より物理的・視覚的な脅威として描かれる傾向があります。

- 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(アメリカ):この作品で確立されたゾンビは、無差別な暴力の象徴です。彼らは怨念ではなく、食欲に駆られて人間を襲い、その目的は命を奪い、肉体を食らうことです。これは個人的な復讐ではなく、生き残りをかけたサバイバルホラーとなっています。
- 『エルム街の悪夢』(アメリカ):殺人鬼フレディ・クルーガーは、生前の恨みから子供たちを夢の中で殺します。これは復讐の物語ですが、夢の中とはいえ物理的な攻撃を仕掛け、対象の命を奪おうとします。
- 『死霊館』(アメリカ):このシリーズに登場する霊的実体の多くは、人間を堕落させ、魂を奪うことを目的とした悪魔です。個人的な恨みを超え、善と悪の普遍的な対立が描かれ、より宗教的な恐怖を喚起します。

2. 文化的背景:霊魂信仰 vs. 宗教的価値観
- アジアホラーは、祖先崇拝や霊魂信仰、仏教・道教における因果応報の思想が根底にあります。死者の魂は現世に留まり、供養や慰霊を怠ると災いをもたらすと信じられており、この考えが「祟り」の概念に深く影響しています。
- 欧米ホラーは、キリスト教的な善悪二元論が強く影響しています。悪魔は人間の魂を堕落させようとする存在であり、ホラーの恐怖は単なる死者の怨念を超え、「善と悪の戦い」として描かれることが多いです。

『エクソシスト』なんかが顕著な例ですね。特にパート3。
3.欧米ホラーにも地縛霊は出てくるが…
欧米のホラー作品にも、その場所に根付く、日本やタイに近い霊が登場するものは存在します。
歴史的に迫害を受けたインディアンとか、無惨に殺されてしまった被害者の霊なんかが多いでしょうか。
例えば『シャイニング』の霊たちは、オーバールックホテルに居着いてしまった霊ですね。グレイディ姉妹なんかは父親に殺された怨念が少し残ってる感じ。でも、どちらかというと、快楽的に人にコンタクトをとっています。他の霊たちもそうですね。
『シックス・センス』はどうでしょう。彼らは主人公の霊が見える少年に助けを求めるために出てきはするものの、加害者を呪い殺すという力は持っていないように描かれますね。
感動作として名高い『ゴースト/ニューヨークの幻』も霊は切なさと愛しさをもって描かれます。
あまり、個人を呪い殺すような力強さと悪さは持っていないように描かれるのが、欧米ホラーの定石のように思えますよね。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
このように、同じ「死者が祟る」というテーマを扱っていても、その表現方法には文化的な違いが色濃く反映されています。
日本・タイのホラーが精神的な闇を覗かせるのに対し、欧米ホラーは物理的な暴力を追求していると言えるでしょう。
また、宗教的や文化的な価値観の違いから、「霊」に対する概念そのものが違うため、表現の仕方も変わってくるようですね。

なかなか面白い考察なのではないでしょうか。あなたはどっちに恐怖を覚えますか?

僕はどっちも恐い!
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