2025年7月11日に公開されたばかりの、ジェームズ・ガン監督による新生『スーパーマン』。
DCユニバース(DCU)の新たな幕開けを飾る本作は、単なるヒーローアクションに留まらない、現代社会が抱える自治的な問題や社会問題に鋭く切り込む、力強いメタファーが込められています。

本作を観る前に知っておきたい見どころを、ネタバレなしで徹底予習していきましょう!

きっと映画の楽しさが一味違ってくるよ!
作品概要:新生DCユニバースの幕開け
この新作『スーパーマン』は、DCユニバース(DCU)の新たな幕開けを飾る最初の作品として位置づけられています。これまでのスーパーマンのオリジンストーリーを繰り返すのではなく、既にスーパーマンが地球に現れてから3年が経過し、記者としてのクラーク・ケントとロイス・レインは既に恋人関係にあり、レックス・ルーサーとは敵対している状態から物語が始まります。
ジェームズ・ガン監督は、本作を「人間の優しさ(Human Kindness)」についての物語だと語っており、シニカルな現代社会に希望をもたらすことを目指しています。
公開日: 2025年7月11日(日米同時公開)
監督・脚本: ジェームズ・ガン 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズや『ザ・スーサイド・スクワッド』などで知られ、DCユニバースの新たな総指揮も務める。
主要キャスト:
- スーパーマン/クラーク・ケント/カル=エル:デイビッド・コレンスウェット
- ロイス・レイン:レイチェル・ブロズナハン
- レックス・ルーサー:ニコラス・ホルト
- ミスター・テリフィック:エディ・ガテギ
- グリーン・ランタン(ガイ・ガードナー):ネイサン・フィリオン
- ホークガール:イザベラ・メルセド
- メタモルフォ:アンソニー・カリガン
- クリプト(スーパードッグ)
あらすじ:葛藤と戦いの始まり
クリプトン星の滅亡から逃れるため、赤子の時に地球に送られたカル=エルことクラーク・ケントは、養父母であるケント夫妻に育てられ、太陽の光によって超人的な能力を得ます。既に地球でスーパーマンとして活動して3年が経ち、メトロポリスのデイリー・プラネット社で記者クラーク・ケントとして働きながら、同僚であり恋人のロイス・レインと共に生活しています。ロイスはクラークの正体がスーパーマンであることを知っています。
物語は、スーパーマンがボラヴィアによるジャルハンパー侵攻を阻止しようとした際に初めて敗北を喫するところから始まります。
地球を守るヒーローとして奮闘するスーパーマンですが、彼の存在を地球の脅威とみなす天才科学者で大富豪の宿敵レックス・ルーサーが暗躍し、彼を陥れようと画策します。
また、本作ではスーパーマンのほかにも、ミスター・テリフィック、グリーン・ランタン、ホークガール、メタモルフォといった他のヒーローたちも登場し、彼らは時に「ジャスティス・ギャング」として協力することもありますが、必ずしもスーパーマンの行動を全面的に支持しているわけではありません。
スーパーマンは、クリプトン星の滅亡の真実や、自身の地球に送られた真の理由を知ることで、自身の出自(エイリアンの遺産)と、カンザス州スモールビルで育った人間の家族としてのアイデンティティの間で葛藤します。彼は、自身の信念を貫き、人々に希望をもたらすために戦います。
現代社会を映し出す、衝撃的なテーマ設定
本作には、現代社会の抱える根深い問題が、スーパーヒーロー物語の枠を超えて描かれています。特に注目すべきは、国際紛争と権威主義、そして情報操作と差別という二つの大きなテーマです。
スーパーマンがボラヴィアによるジャルハンパー侵攻を阻止しようとする物語の導入は、あたかもトランプ前大統領のようなリーダーに率いられた、ロシアのような国が、パレスチナのような国に攻め込むという、現代の国際政治に酷似した構図を映し出しています。こうした設定は、力による現状変更や、独裁的な指導者の存在が世界に与える影響を、ヒーローの視点から描こうとする監督の明確な意図が見て取れます。スーパーマンが平和のために介入しようとする中で、その正当性や世論の反応が深く描かれることは間違いありません。
さらに、レックス・ルーサーがスーパーマンを「エイリアン(異星人・外国人)」として世間の批判に晒そうとする展開は、外国人排斥(ゼノフォビア)の感情や、イーロン・マスクのようなテック富豪がSNSを通じて世論を扇動するような情報操作を象徴しています。スーパーマンは、クリプトン星出身の「異星人」である自身の出自と、地球で人間として育ったアイデンティティの間で葛藤し、最終的に**「僕は人間だ!」**と叫びます。本来当たり前であるはずの「人間性」や「多様性の尊重」が、なぜこれほどまでに重いテーマとなるのか。これは、現代社会が抱える分断と不寛容への、監督からの痛烈な問いかけです。スーパーマンは、本来の「優しさ」や「人間性」が失われつつある世界で、その信念を貫くことの重要性を示します。
注目のキャスト陣と、ヴィラン・レックス・ルーサー
新世代のスーパーマン/クラーク・ケントを演じるのは、Netflixドラマ『ザ・ポリティシャン』などで知られるデイビッド・コレンスウェット。そして、ロイス・レイン役には『マーベラス・ミセス・メイゼル』のレイチェル・ブロズナハンが名を連ねます。
ニコラス・ホルト演じるレックス・ルーサーの「怖さ」
特に注目したいのが、スーパーマンの宿敵レックス・ルーサーを演じるニコラス・ホルトです! 彼の名を一躍有名にしたのは、あのカルト的人気を誇る映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で演じた、印象的なビジュアルのウォーボーイ、ニュークス役ではないでしょうか。
ニュークスで披露した、身体を張った演技と、その中に宿る狂気と純粋さのコントラストは、観客に強烈な印象を残しました。今回は、そうした肉体的な表現とはまた異なる、知性派のヴィランを演じることになります。現代のテック富豪のような、情報戦を仕掛けてくる巧妙で恐ろしい悪役として描かれ、ニコラス・ホルトの高い演技力が、新たなレックス・ルーサー像を築き上げることは間違いありません。

スーパーマンの忠実な相棒「クリプト・ザ・スーパードッグ」が登場!
今作でスーパーマンの相棒として登場するのは、その名もクリプト・ザ・スーパードッグ。コミックでは古くからスーパーマンを支えてきた、彼の忠実なパートナーです。
クリプトもスーパーマンと同じクリプトン星出身で、地球の黄色い太陽の光を浴びることで、スーパーマンと同等の超能力(飛行、怪力、ヒートビジョンなど)を発揮します。コミックではスーパーボーイ(少年時代のスーパーマン)の親友として描かれることが多く、スーパーマンの孤独を癒し、時には彼のピンチを救う頼もしい存在として活躍してきました。
ジェームズ・ガン監督は自身の愛犬オズからインスピレーションを得て、CGで描かれるクリプトを登場させています。コミックでは大型犬として描かれることが多かったクリプトが、今作では中型のミックス犬として登場するようです。過酷な状況下で戦うスーパーマンにとって、クリプトはどのような存在となるのか。ヒーローと犬の心温まる絆にも注目です!

その他のヒーローたち:多様な能力を持つキャラクター群
本作には、スーパーマン以外にも複数のヒーローが登場します。彼らはスーパーマンと同じ「ジャスティス・ギャング」として協力することもありますが、必ずしもスーパーマンの行動を全面的に支持しているわけではなく、物語に複雑さをもたらします。
- ミスター・テリフィック (Mr. Terrific): 超人的な知性と卓越した身体能力が主な力の源。T-スフィアと呼ばれる浮遊するコンピューター搭載の鉄球を操り、情報収集や戦闘に活用します。
- グリーン・ランタン (Green Lantern): 地球出身のガイ・ガードナーが登場。意志の力を具現化する「パワーリング」の使い手で、宇宙の平和を守る「グリーン・ランタン・コァ」の一員です。
- ホークガール (Hawkgirl): 「Nthメタル」製の翼で飛行し、同じくNthメタル製の武器で戦います。古代の転生者という設定を持つこともあります。
- メタモルフォ (Metamorpho): 放射性隕石に触れたことで、自らの肉体をあらゆる元素に自由自在に変形させる能力を得ました。
彼らはそれぞれ異なる背景や科学的、あるいは神秘的な起源によってスーパーパワーを得ており、スーパーマンの物語にさらなる深みと多様な視点をもたらすでしょう。
新生『スーパーマン』に期待すること:現代に響くヒーロー像
今回の『スーパーマン』は、単なる勧善懲悪のヒーロー物語ではなく、私たちが生きる現代社会の抱える深刻な問題に、正面から向き合う作品となるでしょう。
物語の冒頭でスーパーマンが敗北を経験するという展開は、従来のヒーロー像を打ち破るもので、彼の人間的な葛藤や成長をより深く描く上で非常に効果的でした。ただ強いだけのヒーローではない、というメッセージが伝わってきます。

そして、クリプトン星の遺産を持つ「異星人」でありながら、地球で人間として育ったスーパーマンが、自身の存在意義や帰属意識に悩むアイデンティティの揺らぎは、まさに本作の核となるテーマの一つです。レックス・ルーサーからの「エイリアンめ!」という攻撃に対し、スーパーマンが「僕は人間だ!」と叫び返すシーンは、彼の深い葛藤と、それでも人間としてのアイデンティティを選び取る強い意志が表れていて、胸に迫るものがあります。本来当たり前であるはずのこの言葉が感動的になるという、今の時代の空気を象徴するシーンと言えるでしょう。
さらに、イギー・ポップの「パンク・ロック」が流れるシーンは、意表を突かれつつも、作品の持つメッセージと見事に調和しています。スーパーマンという古典的なヒーローが、反体制的で自由な精神を象徴するパンクロックを背景に活躍するというのは、まさに「旧来の枠にとらわれない新しいスーパーマン像」を提示しているようでした。パンクロックが持つ、既存の権威や体制への反抗、そして自分自身の信念を貫く姿勢は、まさにレックス・ルーサーが代表する情報操作や差別、そして国際的な権力闘争といった現代社会の”嫌な時代”に立ち向かうスーパーマンの姿と重なります。
「当たり前のことが感動的になってしまう、嫌な時代」だからこそ、スーパーマンが示す「優しさ」や「人間性」のメッセージが、観る者の心に深く響くことは確実ですし、これらの要素が組み合わさることで、単なるエンターテインメントに終わらない、深く考えさせられる作品になっています。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。

単純に見どころがたくさんありますし、何より、今の時代の嫌な雰囲気に対抗するパンクなカッコよさがあります。

いよいよ公開が始まった新生スーパーマンの活躍とそのメッセージを、ぜひ劇場で体感してください!
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