1980年に公開された『プロムナイト』は、80年代スラッシャー映画ブームの幕開けを告げた作品の一つであり、その後のホラー映画に多大な影響を与えました。
単なる恐怖だけでなく、当時の若者文化や、後に「お約束」となる多くの要素が詰まった本作の魅力を深掘りしていきましょう。

先日『スクリーム』を観て、劇中のセリフで「『プロムナイト』の真似なんだ!観れば分かる!」というものがあったので、それを真に受けて鑑賞したのです。

なるほどね~。
作品概要とあらすじ
作品概要
『プロムナイト』は1980年に公開されたカナダ製作のホラー映画です。監督はポール・リンチが務め、スラッシャー映画の代名詞とも言える女優ジェイミー・リー・カーティスが主演を務めました。彼女は前年の『ハロウィン』(1978年)で「絶叫クイーン」としての地位を確立しており、本作でもその魅力を遺憾なく発揮しています。その他、のちにコメディ俳優として名を馳せるレスリー・ニールセンが、高校の校長役で出演している点も注目に値します。

あらすじ
物語は、1974年の設定から始まります。幼い兄妹たちが、古い廃校で「かくれんぼ」をしている最中、無邪気な遊びが悲劇に転じ、誤って友人を死なせてしまいます。その忌まわしい秘密を誰にも打ち明けられないまま、6年の歳月が流れます。

そして、彼らが高校生となり、華やかなプロム(卒業ダンスパーティー)の夜を迎える頃、過去の秘密が彼らを蝕み始めます。プロムが盛大に開催され、生徒たちが浮かれ騒ぐ中、6年前の事件の関係者である生徒たちが、一人、また一人と何者かに狙われ、次々と無残な形で殺されていくのです。犯人は、フード付きの黒い衣装を身につけ、プロムの会場を徘徊する謎の人物。はたして、6年前の忌まわしい事件の真相が暴かれるのか、そして、生徒たちはこの血塗られた夜を生き残れるのか──?

『プロムナイト』の主な見どころ
1. 「絶叫クイーン」ジェイミー・リー・カーティスの存在感
本作の最大の魅力は、やはりジェイミー・リー・カーティスの出演にあります。彼女は『ハロウィン』で築き上げた「絶叫クイーン」のイメージを本作でも継承し、恐怖に怯えながらも必死に生き残ろうとするヒロインを力強く演じます。単に逃げ惑うだけでなく、時に立ち向かい、強い意志と正義感を持って困難に挑む彼女の姿は、観客に強いカタルシスと共感を与え、その後の多くのホラーヒロインの原型となりました。

2. 「ハレ」の舞台が「ケガレ」の場に変わる緊張感
卒業を祝う華やかなダンスパーティー「プロム」という、希望に満ちたイベントが殺人鬼の惨劇の舞台となるギャップは、観客の安心感を打ち砕き、独特の緊張感を生み出します。若者たちの他愛ない会話やダンス、当時のファッションや音楽といった日常的な描写が丁寧に描かれることで、そこへ暴力が侵食してくる際の衝撃がより際立ちます。パーティーの熱狂と、その裏で進む殺戮の対比が、作品に深みを与えています。

3. スラッシャー映画の「定番」を確立したプロット
『プロムナイト』は、後のスラッシャー映画で頻繁に用いられることになるプロットの基礎を確立しました。
- 過去の罪が現在の惨劇を招く: 物語の序盤で、登場人物たちの過去に起きた悲劇が描かれ、それが現在の連続殺人の動機となるという流れは、殺人鬼の行動に「理由」を与え、単なる無差別殺人ではないサスペンスを生み出します。
- 殺人鬼の正体と動機: 犯人がマスクを被っている、あるいは正体を隠していることで、観客は「誰が犯人なのか?」という謎解きに引き込まれます。その動機が明らかになった時の衝撃や、時には悲哀を伴う結末も魅力です。
- 「若者の逸脱行為」と報復: 性的関係、飲酒、ドラッグといった当時のホラー映画で描かれがちだった「若者の逸脱行為」が、殺人鬼に狙われるきっかけになるという、ある種の道徳的なテーマも見て取れます。
4. 巧みな演出と見せ方
現代のホラー映画に比べると、序盤の「溜め」が長く、なかなか殺しが始まらないと感じるかもしれません。しかし、これは決してマイナスではありません。むしろ、プロムの雰囲気やキャラクターの背景が丁寧に描かれることで、殺人事件が始まった際の衝撃と緊迫感が最大限に高まります。
また、殺人シーンにおいては、直接的なゴア描写に過度に頼らず、被害者が死の恐怖に直面した瞬間の表情や、緊迫した状況を丁寧に映し出すカメラワークが巧みです。観客の想像力を掻き立てることで、間接的に「何が起こったのか」を推測させ、より深いレベルでの不安や恐怖を感じさせる手法は、古典的ホラー演出の妙と言えるでしょう。

個人的にはこの二つの魅せ方こそが、『プロムナイト』が優れた作品であるポイントだと思いました。
5. 感情に訴えかけるエンディング
スラッシャー映画でありながら、単なる殺戮の連鎖で終わらない点が『プロムナイト』の際立った特徴です。殺人鬼の動機や背景に人間ドラマが絡むことで、物語に深みが加わり、観客に強い印象を残す感動的なエンディングは、本作を単なるB級ホラーに留めない魅力となっています。

今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
『プロムナイト』は、その後のホラー映画、特にスラッシャー・ジャンルの礎を築いた作品であり、その影響は後の多くの傑作に見ることができます。
現代ホラーのルーツを知る上で、あるいは当時の映画文化に触れる上で、非常に見応えのある一本となるでしょう。

教科書的な魅力を楽しめつつ、しっかりホラーとしても良質な作品です。

ホラー好きは必見だね!
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