桜桃の味を忘れてしまうのか?それはダメだ。
映画『桜桃の味』をAmazon Prime Videoで鑑賞しました。
本作は1997年にカンヌ映画祭にて、最高賞パルムドールを受賞した作品です。
監督は『友だちのうちはどこ?』『白い風船』のイランの巨匠アッバス・キアロスタミ。
あらすじはこんな感じだよ!
人生に絶望した男が老人との出会いを通して希望を取り戻していく姿を、繊細かつ大胆な演出で描き出す。土埃が舞う道を走る1台の車。運転する中年男バディは街行く人々に声をかけては車内に誘い入れ、多額の報酬と引き替えに自殺を手伝って欲しいと依頼する。クルド人の兵士もアフガニスタン出身の神学生も拒絶するが、最後に乗せた老人バゲリは依頼を承知の上で、自分の過去についてバディに語り始める。
https://eiga.com/movie/42925/
私はめちゃくちゃ衝撃を受けました…。
本作はラストの解釈がかなり難しい作品で、観る人によっては退屈な映画、訳の分からない映画になってしまうかもしれません。
ですが、そんな映画にパルムドールが与えられるはずはありません。
そこで、今回の記事では、『桜桃の味』のラストについて解説していきます!
映画鑑賞後に読んでね!
序盤からラスト前まで
本作では、主人公の中年男性が、「服薬自殺をした後、自分の死体を埋めてくれ」と色々な人に頼むストーリーです。
しかし、作中に登場する人々の多くはとっても気さくで優しい。
誰からもなかなかOKをもらえないんです。
イランの人々の温かさや物腰の柔らかさに癒されるのも、本作の魅力と言えるでしょう。
ようやく一人の老人から、了承を得ます。
しかし、彼もまた、心優しい人物で、彼が自殺をしないように様々な言葉をかけるんですね。
「夜明けの空、夕焼けに染まった空を、もう一度見たくないのか?冷たい泉の水を飲み、その水で顔を洗いたくないのか?自然の四季を思い出して!あの桜桃の味を」
この時の老人のセリフがまた、心に刺さるものばかりなんです。
次第に主人公は、決心が鈍っていきます。
「埋める前に、キチンと死んでいるか肩を揺すってくれ」
と、生への執着をみせる発言まで飛び出します。
そして次の日の朝、いよいよラストを迎えるのですが…。
衝撃のラストシーン
暗い夜道、タクシーに乗って、目的地である自分を埋める穴まで向かう主人公。
しとしとと、雨まで降っています。
いよいよ到着し、穴の中に寝転がります…。
しばらくの間、雨音や風の音だけが流れますが、やがて荒っぽい全く別の映像にカメラが切り替わるんです。
男性の集団(トレーニング中の兵士?)がランニングをしているシーンが映ります。
周りにはカメラマンや監督のような人物までいるんです。
一体主人公はどうなったの!?
あえて宙ぶらりんにするのが、この映画のすごいところ。
おそらくこれは映画の撮影のオフショットの映像。
オフショット風なのか、本当に何かの作品のオフショットなのかは定かではありません。
しかし、「これは映画のオフショットですよ」と伝えたいのは明らかです。
ここにキアロスタミ監督のメッセージがあるんですね。
キアロスタミ監督は、映画の登場人物に感情移入しすぎるのはよくないという考えを持っています。
そのため、あえて主人公の結末は曖昧にし「これは映画なんだ」と伝えているんです。
また、映像が切り替わった後の撮影場所は、同じような山間の土地なんですが、これまでの砂地ではなく、青々とした緑に溢れた風景なんです。
きっと、四季の巡りや、緑の美しさ、人と人が笑い合うことの素晴らしさも伝えたかったのでしょう。
「嫌なこともあるけど、自然って美しい。生きるって素晴らしい」そんな人間讃歌が込められているんだと、私は感じました。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます!
映画『桜桃の味』について解説しました。
これぞ、人間讃歌。衝撃のラスト。圧巻です。
ちなみに桜桃はサクランボのことだよ。
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