【読書感想文】『ここにひとつの□がある』古典と前衛が融合する、枠に囚われない恐怖の形

映画

ネット怪談やモキュメンタリーホラーの旗手として注目を集める梨さんの作品、『ここにひとつの□がある』を読みました。

本作は、全体を通して奇妙な読み味が漂うオムニバス形式の作品です。一見すると独立したエピソードの集まりのようでありながら、読み進めるうちに足元が崩れていくような、特有の居心地の悪さと恐怖を味わうことができます。

そして何より、本という媒体を非常にうまく利用した実験的な試みや、古い文学への目配せなど、多面的な魅力が満載の一冊でした。

bitotabi
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今回は、本作を読んで感じた面白さについてご紹介します。ネタバレなしです。

結末がもたらす分かりやすい恐怖

全編を通して様々なスタイルの恐怖が描かれていますが、その中でも比較的分かりやすく、ストレートな怖さを感じられたのが第二章の「放課」と、第三章の「カシル様専用」でした。

これらの章はストーリーの結末がしっかりと描かれているため、状況の異常さや怪異の存在がダイレクトに伝わってきます。物語としての区切りが明確だからこそ、読後に残るゾッとするような余韻が際立っており、まずはここで物語としてのしっかりとした恐怖を堪能させてくれます。



古典と前衛が入り混じる独特の雰囲気

また、本作を読み進める中で興味深かったのが、昔の文学作品を解釈し直したかのようなエピソードがいくつか散りばめられている点です。

古くから語り継がれてきたような怪異の質感や、伝統的な文学の骨組みがベースにあるからこそ、その後に続く展開の異質さがより際立ちます。歴史を感じさせる古典的な要素と、後半に向けて加速していく前衛的なアプローチ。この二つが地続きで入り混じる雰囲気が実にお見事でした。新旧の恐怖が交錯することで、どこか時代感覚が揺らぐような、奇妙な味わいを生み出しています。

本という媒体を遊び尽くす、枠に囚われない可能性

第四章の「練習問題」や、第六章の「穴埋め作業」など、後半の展開には圧倒されました。ここではクイズ形式の図がふんだんに取り入れられており、読者はただ文章を追うだけでなく、視覚的・能動的にページと向き合うことを求められます。

さらに、文字が揺れているように見えたり、滲んでいるように感じられたりするような、テキストの配置や視覚効果の使い方も実に見事です。このような自由な表現手法は、紙の本という物質的な媒体だからこそ、その効果が最大限に発揮されるのだと感じます。

言葉の意味を理解させるだけでなく、文章や図そのものが放つ異様さに圧倒される感覚は、これまでの小説の枠組みには収まらない新しさを感じさせます。まさにタイトルにある「□(箱)」という概念に囚われないような、表現の自由さと小説というジャンルが持つ可能性の広さを、まざまざと見せつけられた気がします。

今日の本学

最後までお読みいただきありがとうございます。

分かりやすいホラーとしての面白さを提示し、古典的な不気味さを漂わせ、前衛的な表現で読者を深く引きずり込んでいく。その構成の妙にすっかりやられてしまいました。

文章を読むという行為そのものが奇妙な体験へと変わっていく、不思議な満足感が残る一冊です。

これまでにない一風変わったホラー体験や、新しい表現に触れてみたい方には、ぜひ手に取っていただきたい作品です。

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梨さんが関わった『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』などの番組もめちゃくちゃ面白いのでぜひチェックしてみてくださいね。

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