「呪怨 ザ・ファイナル」は、観る者の日常にまで忍び寄るような、深く根源的な恐怖を描き出した作品です。この映画の核となるのは、佐伯伽椰子の怨念だけでなく、その息子である俊雄が「呪いの核」として進化し、その恐るべき伝播力・感染力をじっとりと広げていく様です。

シリーズの根源に辿り着くような、考察のしがいのあるストーリーが面白いんですよ。

とにかく俊雄の凄さが分かったよね。
俊雄が広げる新たな呪いの形
シリーズの最終章として、「ザ・ファイナル」では呪いの形態が大きく変化しています。
従来の「呪怨」が、特定の「呪われた家」を訪れることで呪いが移るという構図だったのに対し、本作では俊雄自身が新たな呪いの根源となり、その影響下にある人々を通して、呪いがまるでウイルスのように拡散していきます。
特に、佐伯俊雄以前の山賀俊雄が呪いの根源とされている点は、その呪いの歴史と深みを一層際立たせています。俊雄の姿を見る者、その声を聞く者、そして彼の存在に触れた者へと、容赦なく呪いが広がり、逃げ場のない絶望感を与えます。
俊雄が鍵を握る呪いの新たな方程式:伽椰子との相乗効果
「俊雄が伸びれば伽椰子も伸びる!」という図式は、「呪怨 ザ・ファイナル」の核となる恐怖の進化を見事に捉えています。これまでのシリーズでは伽椰子の怨念が直接的な呪いの源でしたが、本作では俊雄が関わることで呪いが感染・伝播し、その感染範囲や関係する場所に伽椰子も干渉できるようになるという、新たな方程式が構築されています。
俊雄は呪いの媒体となり、彼に触れたり、彼と関わったりする人々へと、呪いを能動的に「感染」させていきます。この感染は、まるで病原菌が新たな宿主を見つけて増殖するように、じっとりと、しかし確実に広がっていきます。そして、俊雄が呪いを広げた場所や、彼が関わった人物を通じて、伽椰子もその場所や関係者に干渉できるようなパワーを得るのです。俊雄が新たな呪いの拠点を築くたびに、伽椰子の怨念が影響を及ぼせる範囲も拡大し、物理的な制約を超越した、より広範囲で執拗な恐怖が展開されていくわけです。
呪いの「家」のじっとりとした増殖と日常への侵食
この作品で最もゾッとさせられる要素の一つが、呪いの拠点となる「家」がじっとりと増殖していくことです。特定の家に行かなければ安全、という従来のホラーの定石が通用せず、俊雄を介して呪いが新たな「宿主」を見つけ、その宿主が住む場所をも呪いの拠点へと変えていきます。これは、呪いが焦がすような熱を持って急激に広がるのではなく、冷たく、ゆっくりと、しかし確実に新たな「家」を蝕んでいくことを意味します。これにより、恐怖は特定の場所から解放され、どこにでも、誰にでも襲いかかる可能性を秘めることになります。
この「家のじっとりとした増殖」は、「もしかして、私たちの家にも…」という観客自身の根源的な不安を煽ります。友人や知人が呪いに触れ、それが気づかぬうちに自分の家に持ち込まれるかもしれないという想像は、これまで何気ない日常の風景だったはずの自分の家を、一瞬にして恐ろしい場所へと変貌させてしまいます。安全な場所などないのだという、究極の絶望感を突きつけるのです。

呪いの家が無くなっても一つも安心できないという恐ろしさがいいですよね。
古典的な恐怖演出、捨てても戻る日記、そして「ぐるぐる」が示す輪廻
本作の恐怖演出は、単なるジャンプスケアに留まりません。音楽や魅せ方には、スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」を彷彿とさせる古典的な手法が用いられています。オーケストラを用いた不協和音や低音の唸り、そして広大な空間や長い廊下をゆっくりと移動するカメラワーク、不気味なものが遠くからじわじわと近づいてくる演出は、精神的な不穏さや狂気を表現し、持続的な不快感と絶望感を植え付けます。
さらに、「捨てても捨てても戻ってくる日記」という象徴的なアイテムが、この執拗な恐怖を具現化しています。この日記は、呪いが物理的な形で執拗に追ってくるという現実的な恐怖を象徴しており、何度捨てても持ち主の元に戻ってくることで、「呪いからは決して逃れられない」という強烈なメッセージを突きつけます。
そして、前作から謎だった日記に書かれた「ぐるぐる」の模様が、俊雄の呪いの本質を示しています。この「ぐるぐる」は、俊雄の呪いが単発的な出来事ではなく、終わることのない、繰り返される「輪廻」であることを象徴しています。一度始まってしまえば、もう逃れることのできない無限ループに陥ることを意味しており、その絶望感は計り知れません。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
このように、日記の不気味さ、古典的な演出、そして「ぐるぐる」が示す輪廻の概念が融合することで、「呪怨 ザ・ファイナル」は、観る者の心に深く残る、忘れがたい恐怖体験を提供していると言えるでしょう。

俊雄は新たな命へと寄生し続け、誰かしらを母親とし、呪いとして存在し続けるのでした…。

この輪廻の恐さは、「呪怨2」のラストをより詳細にしたって感じですね。
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