『異端者の家』宗教とは何かに迫る問題作

ホラー映画

宗教とは何なのかを問いかけるテーマ

本作は、単なるスリラーとしてだけでなく、「宗教とは何か」という根源的な問いを観る者に投げかける可能性を秘めています。宗教や教典は、人々の共通の認識や価値観を形成し、共有することで社会的な繋がりを生み出す側面があります。

一神教のルーツとされるユダヤ教は、その歴史的な影響力の大きさに反し、世界の総人口に占める割合はわずか約0.2%に過ぎません。もちろん、長きにわたる迫害や虐殺の歴史もこの数字に影響を与えていることは否定できません。しかし、この少数派であるという事実は、宗教というものが、必ずしも多数派を形成し、広大な支配力を持つことだけを目的として生まれたのではない可能性を示唆しているとも言えるのではないでしょうか。むしろ、特定の集団の結束を高め、独自の規範意識を醸成する機能こそが、宗教の根源的な役割なのかもしれません。

翻って本作『異端者の家』では、モルモン教という、キリスト教から派生しつつも独自の教義を持つ宗教の信者たちが描かれます。彼らの純粋な信仰心が、ある家との出会いによってどのような変容を遂げるのか。それは、宗教が時に個人の内面を深く支配し、予期せぬ狂気を生み出す可能性を示唆しているのかもしれません。

 



宗教は単なる支配のための仕組みなのか

宗教的な教えは、信者にとって神や預言者から与えられた絶対的な真理として伝えられます。例えば、豚肉が禁じられている宗教では、「神が豚を不浄なものとしたため、食べることを禁じる」といった教えが、神聖な規範として存在します。しかし、その背景には、単に精神的な理由だけでなく、より現実的な要因が影響している可能性も考えられます。

  • キリスト教(カトリック): カトリック教会において同性愛や婚前交渉が禁じられているのは、聖書の言葉を根拠とし、神の意志に沿った生き方として教えられます。一方で、これは結果的に子孫の増加を促し、社会の基盤となる家族制度を維持する役割も果たしたと考えられます。神聖な教えと、人口維持という現実的な側面が共存していると言えるでしょう。
  • イスラム教: イスラム教では、クルアーンにおいて豚肉は明確に禁じられています。これはアッラーの啓示であり、信者にとっては絶対的な戒律です。一方、現実的な背景として、かつてアラビア半島を含む地域では、豚は暑さに弱く、衛生管理が難しかったため、病気の媒介となることが多かったという説があります。神聖な教えとしての「禁忌」が、結果的に人々の健康を守る役割を果たしたとも考えられます。
  • ヒンドゥー教: ヒンドゥー教のカースト制度は、神話的な起源を持ち、神聖な社会秩序として教えられてきましたが、実際には社会階層を固定化し、労働力を効率的に管理する機能も果たしたと考えられます。神聖な枠組みが、社会的な役割分担という現実的な構造を支えていたと言えるでしょう。
  • 仏教: 仏教の教え、例えば輪廻転生や業(カルマ)の思想は、物語や教典を通して伝えられ、現世の行いが来世に影響するという因果応報の考え方は、人々の倫理的な行動を促す規範となりました。苦の受容や執着からの解放といった教えは、社会の安定にも寄与したと考えられます。

このように、宗教的な教えは、神聖なものとして信じられる一方で、その成立や普及の背景には、当時の社会状況や人々の生活、衛生環境といった現実的な要因も深く関わっていることが多いのです。

『異端者の家』は、信仰の純粋さと、そこで生まれるかもしれない歪みを通して、宗教というものの多面性を私たちに問いかけてくるのかもしれません。

感想

もう単純に、めちゃくちゃ攻めた内容だなと思いました。

宗教を語る上で、アンタッチャブルというか、敬虔な信者たちがあえて目を瞑ってきたことを、ドンドンドンドン明るみに出しちゃうんですよね。

だから、モルモン教を中心に、結構この映画は批判される声が多いそうです。

特に宗教の派生とか広がりを、ファーストフードや音楽、ボードゲームなんかに例えるのがめちゃくちゃヤバいなと思いましたね。

でも、納得できちゃうのがまたね、面白いんですよ。

私は無神論者なので、ヒュー・グラント演じる人物のその辺の語りにもの凄く納得しちゃったんですけど、これ、あまり熱心じゃない信者が観たら危険だよな~と思いましたね。

しかし一方で、最終的にはクロエ・イースト演じるヒロインが、宗教を信じることとはどういうことかという結論にも辿り着く。ポジティブな結論に。そこが救いにもなってるし、まあそうかもなとも感じました。

でも、ヒュー・グラントが言ってることの方が、強いし、印象に残っちゃう。そんな問題作でした。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

『異端者の家』について解説しました。

bitotabi
bitotabi

ホラーとして単純に面白いだけでなく、宗教とは何か、信仰心とは何か。そういったことを深く考えさせられる映画でした。

ダニー
ダニー

ヒュー・グラントの演技にも注目だね!

 

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