1981年に公開されたサム・ライミ監督の『死霊のはらわた』は、その容赦ないゴア描写と革新的な映像表現で、日本におけるスプラッター映画の火付け役と言っても過言ではないでしょう。
わずか35万ドルという低予算ながらも、観る者を底なしの恐怖へと突き落とすその衝撃は、多くの観客に強烈な印象を与え、後のホラー映画に大きな影響を与えました。

全世界で2400万ドルから2940万ドルの興行収入を記録し、低予算ホラー映画としては異例の成功を収めた本作の魅力に迫ります。

まずは作品概要から!
作品概要
- 監督・脚本: サム・ライミ
- 撮影: ティム・ファイロ
- キャスト:
- ブルース・キャンベル(アッシュ・ウィリアムズ)
- エレン・サンドワイス(シェリル)
- リチャード・デマニンコール(スコッティ)
- テレサ・ティリー(リンダ)
- ベッツィ・ベイカー(シェリー)
- 製作費: 35万ドル
- 興行収入: 全世界で2400万ドル~2940万ドル
あらすじ:大学生のアッシュとその友人たち(シェリル、スコッティ、リンダ、シェリー)は、休暇を利用してテネシーの森にある古い山小屋を訪れる。そこで彼らは、地下室に置かれた謎の古代書物「死者の書(ナトルム・デモンテ)」と、それを朗読したテープを発見する。テープの再生と共に、眠っていた悪霊たちが蘇り、一人、また一人と仲間たちに取り憑いていく。外界から隔絶された山小屋で、アッシュは次々と襲い来る悪霊と壮絶な戦いを繰り広げることになる。
低予算が生んだ独創性
『死霊のはらわた』の特筆すべき点は、低予算という制約を逆手に取った革新的な映像表現です。潤沢な資金がない中で、サム・ライミ監督をはじめとする製作陣は、独創的なアイデアと工夫によって、観る者を圧倒する恐怖映像を作り上げました。

その一つが見事な編集にあります。
編集の妙とジョエル・コーエンの協力
当初わずか65分しかなかったという脚本を、編集によって100分以上の長さに仕上げた手腕は見事です。
さらに、そこから劇場公開に向けて85分に再編集された本作の構成には、後に『ファーゴ』などで知られるコーエン兄弟のジョエル・コーエンも協力しています。
彼の参加が、作品のテンポやリズム感を洗練させる上で貢献したと言えるでしょう。
革新的なカメラワークが生み出す異次元の恐怖
撮影を担当した ティム・ファイロ は、低予算という制約の中で、想像力を駆使した数々の印象的な映像を生み出しました。悪霊の視点を捉えたとされる、地面を這うようなローアングルや、森の中を疾走するような主観ショットは、観客を否応なく物語の世界へと引きずり込みます。
- 悪霊の視点: 殺戮の瞬間や、死体を埋める場面などで多用される悪霊側の視点は、通常のホラー映画にはない斬新さです。あえて霊側の視点で描くことで、人間の暴力性や、スプラッター映画として血なまぐささを演出していますよね。
- ダイナミックな移動撮影: 上から下へ、遠くから近くへ、予測不能なアングルからのショットは、単調になりがちなスラッシャー映画に動きと変化を与え、常に観客を飽きさせません。特に、ラストシーンの畳み掛けるようなカメラワークは圧巻で、思わず声を上げてしまうほどの衝撃です。
異質な愛の描写と、目を背けたくなるストップモーション
本作におけるラブシーン(と呼べるかはさておき)の描写もまた、独特の異様さを放っています。恋人たちが見つめ合うシーンでさえ、どこか不穏な空気が漂い、視線のアップなどが効果的に用いられ、むしろ恐怖感を煽ります。
そして、特筆すべきはストップモーションアニメーションの活用です。特に、死体が朽ちていく過程を表現したシーンは、そのグロテスクさとリアルさで観る者の目を釘付けにします。アナログな手法ならではの質感は、CGでは決して味わえない異様な迫力を持っています。
衝撃的な描写の数々:木によるレイプ
『死霊のはらわた』を語る上で避けて通れないのが、ヒロインが木に襲われるというショッキングな描写です。
このシーンは、倫理的な議論を呼ぶこともありますが、常識を打ち破る強烈なイメージとして、観る者の脳裏に深く刻まれます。
分かりやすくはじめに出る実害として描かれるのがこのシーンだったというのもまた、この映画のどぎつさを物語っていますね。
人間ドラマの存在
過激な描写が目を引きますが、本作には登場人物たちの人間ドラマも確かに存在します。例えば、恋人が悪霊に取り憑き、変わり果てた姿になっても、バラバラに切断することができない主人公アッシュの葛藤は、観る者の心を揺さぶります。
極限状態における人間の脆さや、愛情の深さが垣間見える瞬間です。
製作秘話:監督の手
物語終盤、主人公アッシュが壁の後ろから悪霊の手に捕まれる印象的な演出がありますが、これはなんとサム・ライミ監督自身の腕によるものです。当時の厳しい予算と配役の都合上、撮影は監督とカメラマンの二人きりで行われることもあり、この場面では監督が自ら悪霊の手を演じたとのことです。
低予算ゆえの工夫が、作品のクライマックスをより印象的なものにした興味深いエピソードと言えるでしょう。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
低予算ながらも、独創的なカメラワーク、容赦ないゴア描写、そして製作陣の創意工夫によって、ホラー映画史に強烈な爪痕を残した『死霊のはらわた』。

その革新性は、後の多くの作品に影響を与え、今なお色褪せることのない衝撃を与え続けています。

未見の方は、ぜひこの機会に、唯一無二の恐怖体験を味わってみてね!
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