2025年9月に公開された劇場版『チェンソーマン レゼ篇』。
主人公デンジと、彼の前に現れるボムの悪魔・レゼとの束の間の交流を描くこの物語の核には、一本の古典的な映画が存在します。
それが、ソ連の『誓いの休暇』(原題: Баллада о солдате、英題: Ballad of a Soldier、1959年公開)です。
原作の重要なシーンでデンジとマキマが共に鑑賞するこの映画は、レゼ篇が描くテーマ、特に「戦争(非日常)と愛(日常)」という対立構造に深く共鳴し、物語の情緒的な深みを増幅させています。

映画好きの藤本タツキですから、もちろんこの映画を使ったことには深い理由があるはずです。

詳しく解説していくよ~。
『誓いの休暇』とは? 純粋な愛と戦争の悲劇

『誓いの休暇』は、第二次世界大戦下のソ連を舞台に、戦場で功績を挙げた若き兵士アリョーシャが、故郷の母親に会うために与えられたわずか6日間の休暇を描く作品です。
道中、彼は困っている人々を助けたり、純粋な愛を経験したりしますが、その優しさゆえに時間を費やし、結局母親と再会できたのはほんのわずかな時間でした。
この映画は、戦争の悲惨さを直接的に描くのではなく、極限状況下においても失われない人間の優しさ、愛の純粋さ、そして命の尊さを、詩的かつ感動的に描き出しています。

ちなみに二人が涙したのはこのシーンですね。


藤本タツキの「映画愛」が示すテーマの重要性
『チェンソーマン』の原作者である藤本タツキ氏は、作中に様々な映画のオマージュや引用を巧みに組み込む稀代の映画ファンとして知られています。彼にとって、物語の重要な局面で特定の映画を引用することは、単なる遊びではなく、その映画が持つテーマ、結末、そして感情を、キャラクターの運命に重ね合わせる重要な演出手法です。
『誓いの休暇』の起用は、まさにこの藤本氏の意図が強く込められているのではないでしょうか。
- 「束の間の幸福」と「別れ」: 『誓いの休暇』でアリョーシャが母親や恋人と過ごす「束の間の幸福」は、デンジとレゼが悪魔との戦いという非日常の中で体験する「期限付きの普通の日常」と深く呼応しています。その短い期間の純粋な愛と、避けられない悲劇的な別れという運命を、この名作映画が暗示しているのです。
- 「普通」への渇望: 戦争の中で「普通」の生活や愛を求めたアリョーシャの姿は、「まともな人生」と「誰かとの温かい繋がり」を求めるデンジの根源的な願いを象徴しています。


マキマと映画を観るシーンではありますが、レゼとの交流でデンジが知ってしまった16歳の「普通の日常」や「束の間の恋愛」などを投影しているような気がしますね。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が、このソ連の傑作映画をどのように視覚的に用い、デンジとレゼの切なくも激しいロマンスを深めたか。

なんとなくこの記事を読んでおわかりいただけたのではないでしょうか。

もう一度映画を観たくなるね。
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