『FLEE』壮絶なる「逃避行」の記録

アニメ映画

私たちは、ニュースや他のフィクション映画を通じて「難民」や「亡命」という言葉を何度も耳にしてきました。

しかし、『FLEE』が描き出す現実は、これまでに観てきたどの作品とも異なる新鮮さと、息をのむような恐怖を私たちに突きつけてきます。

本作は、ある一人の青年が歩んできた、あまりにも過酷な半生を紡いだドキュメンタリーです。なぜ彼は、これほどまでに壮絶な道を歩まねばならなかったのか。その背景にある、あまりにも重い真実の数々をご紹介します。

bitotabi
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かなりキツイ内容ですが、その分、アカデミックな学びのある作品です。

ダニー
ダニー

ネタバレなしで見どころを解説するね。

『FLEE フリー』の作品概要

  • 公開年:2021年(日本公開は2022年)
  • 監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン
  • 脚本:ヨナス・ポヘール・ラスムセン、アミン・ナワビ
  • あらすじ: デンマークで成功を収め、恋人との結婚を控えた30代の優秀な研究者アミン。しかし彼には、20年以上にわたり誰にも明かしたことのない秘密がありました。それは、かつて内戦下のアフガニスタンから家族とともに脱出し、過酷な密入国を繰り返して現在の地位にたどり着いたという、壮絶な難民としての過去でした。親友である映画監督の問いかけに応じる形で、アミンは重い口を開き始めます。

タイトル「FLEE」が意味する、終わりのない逃亡

本作のタイトルである「FLEE」は、「逃れる」あるいは「敗走する」という意味を持つ英単語です。この言葉が示す通り、主人公アミンの半生は、まさに命がけの逃亡の連続でした。

安全な場所を求め、密入国に次ぐ密入国を重ねる日々。人身売買業者に大金を払い、劣悪な環境のコンテナに詰め込まれ、あるいは極寒の森を歩かされる。一歩間違えれば命を落とす状況が延々と続く展開は、観ているこちらの胸を締め付けます。私たちは彼らが無事に逃げ切ることを祈るしかありませんが、その道程があまりにも長く、険しいことに圧倒されます。



綺麗事では済まされない、生々しい現実の描写

ドキュメンタリー映画の多くは、悲惨な現状を伝えるために様々な手法を用いますが、本作はアニメーションという表現を軸にしながらも、その恐怖を一切オブラートに包みません。

劇中では、時折当時の実際のニュース映像が挿入されますが、そこにはしっかりと死体が映し出される瞬間があります。フィクションの映画であれば「演出」として処理できるものが、実際の映像として目に飛び込んでくることで、アミンたちが直面していた世界の危険さがどれほど本物であったかを、観客は嫌というほど思い知らされることになります。アニメーションだからこそ油断していたところに、本物の現実が襲いかかってくる構造は、非常に強烈です。



「アフガニスタンに同性愛者はいない」という絶望

アミンが抱える苦悩は、難民としての過酷な境遇だけではありません。彼は自身の性的指向、つまりゲイであることについても、深い孤独を抱えて生きてきました。

当時の彼が育った環境において、「アフガニスタンに同性愛者はいない。その言葉すらない」という認識が一般的でした。アフガニスタンをはじめとする中東地域では、イスラム教の厳格な戒律が社会や法律の根底にあるため、同性愛は宗教的に重大な罪とみなされ、法的には死刑すら規定されている国もあるほど、文字通り命がけのタブーとなっています。

自分が何者であるかを表現する言葉さえ存在せず、存在そのものが完全に否定される世界。周囲にその事実を知られれば命の保証はないという恐怖は、想像を絶するものがあります。自国が不安定であるという政治的な危機に加え、自分自身のアイデンティティのために命の危険に晒される環境からも逃れなければならなかったアミンの苦しみは、この映画のもう一つの大きな核となっています。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

映画『FLEE』は、一人の男の過去を紐解く私的なドキュメンタリーでありながら、今もなお世界中で繰り返されている難民問題の縮図でもあります。

密入国を繰り返した末に手に入れた「一見平穏な日常」の裏で、アミンがどれほどのトラウマを抱え、何を失ってきたのか。彼が命をかけて「逃れよう」としたものの正体を、ぜひその目で確かめてみてください。毎度新鮮な衝撃を与えられるこの手のジャンルにおいて、本作は間違いなく、生涯忘れられない一本になるはずです。

ダニー
ダニー

怖いけどキチンと知っておきたいよね。

bitotabi
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