皆さんはホラー映画に何を求めていますか?「怖がらせてほしい」というのはもちろんですが、それ以上に、一人の監督が放つ圧倒的な作家性や、常識を覆すような映像表現に出会いたい……そう思うことはないでしょうか。
私にとってホラーというジャンルは、映画が持つ可能性を最も純粋に、そして過激に突き詰めた最高のエンターテインメントです。今回は、私の映画観そのものを形作ったと言っても過言ではない、愛してやまない海外作品を5本選んでみました。

これらは現代のホラー映画クリエイターたちの「源流」とも言える作品ばかりで、ホラー好きを自負するなら絶対に見逃してはいけないものばかりです。

あなたのお気に入りも入ってるかな?
1. シャイニング(1980)

- 監督: スタンリー・キューブリック
- 脚本: スタンリー・キューブリック、ダイアン・ジョンソン
- キャスト: ジャック・ニコルソン、シェリー・デュヴァル
- あらすじ: 冬の間閉鎖される山奥のホテル。管理人としてやってきた作家志望のジャック一家が、過去の惨劇の記憶と孤独によって狂気に蝕まれていく。
この作品は、私の映画鑑賞の基盤とも言えるほど大切にしている一本です。ホラーの枠組みを完全に超えて、一つの芸術作品として愛しています。キューブリックによる異常なまでの映像美や音楽へのこだわりは、それまでのヒッチコック的な古典ホラーの手法から脱却し、映画の歴史を塗り替える大きな転換点となりました。
特に素晴らしいのが、恐怖の正体をあえて曖昧にしている点です。あれは果たして本物の怪異の仕業なのか、それとも閉ざされた山荘という極限状態からくる精神異常なのか、はたまたアルコール依存症がもたらす脅威なのか……。その境界が巧妙にぼかされているからこそ、観るたびに異なる解釈が生まれ、底知れない恐怖が持続します。完璧な構図の中、俳優陣が見せる鬼気迫る演技は、何度観ても震えるような感動を与えてくれます。
2. エクソシスト(1973)

- 監督: ウィリアム・フリードキン
- 脚本: ウィリアム・ピーター・ブラッティ
- キャスト: リンダ・ブレア、エレン・バースティン
- あらすじ: 悪霊に取り憑かれた12歳の少女リーガン。科学では解決できない事態に、二人の神父が命懸けの悪魔払いに挑む。
物語の背後に「カウンターカルチャーの脅威」というメタファーが込められている深みはもちろん、ウィリアム・フリードキン監督の異常なまでの執念が結晶となった伝説の一本です。
俳優から本物の恐怖を引き出すために撮影現場で突如銃声を鳴らしたり、極寒のセットで俳優を凍えさせたりといった、狂気すら感じる徹底した演出が、この世のものとは思えないリアリティを生んでいます。また、映画史に残る「キメのショット」がいくつも存在することも魅力。カラス神父が霧の中に佇み家を見上げるシーンや、リーガンの姿にパズズの影が重なる瞬間など、グラフィカルでカッコいいショットの連続には目を奪われます。伝統的な信仰の敗北という重いテーマと相まって、今なお他の追随を許さない風格があります。
3. 悪魔のいけにえ(1974)

- 監督: トビー・フーパー
- 脚本: キム・ヘンケル、トビー・フーパー
- キャスト: マリリン・バーンズ、ガンナー・ハンセン
- あらすじ: テキサスを訪れた5人の若者が、チェーンソーを振り回す大男「レザーフェイス」を擁する殺人一家の餌食となる。
70年代ホラーの金字塔であり、後世に多大な影響を与えた象徴的な作品です。特に夕日を背にチェーンソーを振り回すラストシーンの、残酷でありながらも神々しい美しさは圧巻。
本作の影響力は映画界に留まらず、現代のポップカルチャーにも深く根を張っています。例えば、大人気漫画『チェンソーマン』における暴力と狂気の描き方や、象徴的な武器のチョイスにも、本作への計り知れないリスペクトと影響が見て取れます。また、タイ・ウェストの『X エックス』やコラリ・ファルジャの『ザ・サブスタンス』といった現代ホラーの旗手たちにとっても、本作は重要なインスピレーションの源です。低予算という制約を逆手に取り、残酷描写を直接見せすぎず、音響とカメラワークで観客の想像力を最大限に引き出した演出は、まさに映画的な奇跡。理不尽な暴力の中に美術的な強度を感じさせる、唯一無二の存在です。
4. NOPE/ノープ(2022)

- 監督・脚本: ジョーダン・ピール
- キャスト: ダニエル・カルーヤ、キキ・パーマー
- あらすじ: 突如現れた空に浮かぶ「不気味な飛行物体」。それを撮影して一攫千金を狙う兄妹の戦いを描く。
「見上げてはいけない」というシンプルな恐怖を、これほどまでにスリリングな映画体験として提示した手腕にはあっぱれと言うほかありません。ジョーダン・ピール監督が自身の好きなものを自由に、かつ一級のエンタメとして描き切っており、その情熱が『AKIRA』のバイクシーンを筆頭とする数々のオマージュから伝わってきます。
特筆すべきはキャラクターの立ち方で、主人公兄妹に加えて、技術屋のエンジェルや一流カメラマンのアントラー・ホルストが共闘する構図はまさに『JAWS』的。あえて皆でビールを飲むシーンを入れるなど、バディ・ムービーのようなチーム感が物語を熱く盛り上げます。さらに、ジョーダン・ピールらしい人種差別のメッセージや「見世物としての搾取」という批評性もしっかりと芯に据えられている。現代の監督が過去の傑作をどう継承し、自身の作家性と融合させるかを見事に示した一本です。
5. アルタード・ステーツ/未知への挑戦(1980)

- 監督: ケン・ラッセル
- 脚本: シドニー・アーロン(パディ・チャイエフスキー)
- キャスト: ウィリアム・ハート
- あらすじ: 意識の極限を追求する科学者が、幻覚剤と感覚遮断タンクを用いて実験を繰り返すうち、肉体そのものが人類の祖先へと「逆進化」を始める。
SFなのかホラーなのか、ジャンルの境界線を軽々と飛び越えてしまうカルト的魅力に満ちた一本。意識の変容をテーマにしたサイケデリックな映像美と、肉体が「逆進化」していく生理的な不気味さ。ケン・ラッセル監督による理屈を超えたエネルギーは、一度観れば忘れられない記憶として刻まれます。こればかりは、四の五の言わずに「観たことがないなら、とにかく一度観てほしい」と強くおすすめしたい、強烈なオリジナリティを持った作品です。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
振り返ってみると、私が惹かれるのは、恐怖を通じて「何か新しいもの」を見せてくれる作品たちなのかもしれません。皆さんのオールタイムベストには、どんな作品が入っていますか?

さて、海外編の次は、また違った手触りの恐怖が待っている「日本映画編」についても、じっくりとお話ししていきたいと思います。

お楽しみに~。
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