『蒲田行進曲』名作の棚で異彩を放つ、私のかけがえのない一本

ドラマ映画

私の部屋の棚には、厳選された数少ない映画の円盤が並んでいます。その数、50本にも満たないほど。

主に大学生の頃、夢中で名作や話題作を夢中で観ている中で、「これは何度も観るかも!」「手元に置いておきたい!」と感じて購入した作品です。

大学生ですから、もちろん経済面は豊かじゃない。そんな渦中で吟味した作品群。私の自室の中にはそんな作品たちが並んでいます。

スタンリー・キューブリックが構築した完璧な映像美の世界があり、コッポラが綴ったマイケル・コルレオーネの諸行無常があり、『ニュー・シネマ・パラダイス』が呼び起こす映画への郷愁があり、そして『ロッキー』が与えてくれる不屈の闘志が並んでいます。

映画史に燦然と輝く名作たちが整然と並ぶその一角に、少しだけ毛色の違う、しかし誰よりも熱い熱量を放つ作品が混じっています。

それが、深作欣二監督の『蒲田行進曲』です。

正直に言えば、並み居るハリウッドの大作や芸術映画の中にこれがあると、少し浮いているようにも見えます。

それでも、この作品は私にとって、それらの名作と肩を並べる、あるいはそれ以上に手放せない宝物なのです。

ダニー
ダニー

どんなところが面白いのか、教えて!

bitotabi
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それではここから『蒲田行進曲』の魅力を存分に語らせていただきます。

時代も国境も超える「映画狂い」たちの肖像

本作を観るたびに、ある種の既視感を覚えることがあります。それは近年、世界中で絶賛されたハリウッドの巨匠たちの作品と通底する熱量です。

例えば、クエンティン・タランティーノが1960年代のハリウッドへの愛を爆発させた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。あるいは、デイミアン・チャゼルがサイレントからトーキーへと移り変わる狂騒の時代を描いた『バビロン』。

これらに共通しているのは、単なる映画制作の裏側を描いた物語ではないということです。そこにあるのは、映画という魔法に魅せられ、同時にその魔力によって人生を狂わされてしまった者たちへの、残酷なまでの肯定と深い愛です。

意外にも、日本映画の中でここまでストレートに、かつ狂気的な熱量で「映画愛」そのものを叩きつけた作品は多くありません。ハリウッドの巨匠たちが現代の技術で描いたあの「映画へのラブレター」を、深作欣二監督は40年以上も前に、京都の撮影所という泥臭い舞台で見事に描き切っていたのです。

bitotabi
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やっぱり深作欣二ってすごいですよ。

「死ぬ気でやる」のは誰のためか

物語は、スター・銀ちゃんの身勝手な振る舞いから動き出します。落ち目になった愛人の小夏を、忠実な大部屋俳優のヤスに押し付ける。ヤスは戸惑いながらも、身重の彼女を懸命に支えます。

この映画のクライマックス、最大の見せ場である「階段落ち」。 かつては銀ちゃんのために何でもするヤスでしたが、あの命懸けのスタントに挑む動機は、物語が進むにつれて変化していきます。

それは単なる銀ちゃんへの忠誠心ではありません。これから生まれてくる新しい命、そして家族となった小夏との未来を守るための「稼ぎ」であり、一人の男としての「意地」でもあります。一介の斬られ役でしかない自分が、愛する者のために何を残せるのか。その切実な問いに対する答えが、あの凄まじい落下の衝撃に込められています。

華やかなスクリーンの裏側で、泥にまみれ、血を流し、プライドをかなぐり捨ててでも守りたいもののために生きる。その泥臭い「生」のエネルギーこそが、観る者の胸を激しく揺さぶるのです。



最高のメタ演出:すべてを祝福するカーテンコール

そして、本作がありふれた「撮影所の悲劇」で終わらないのは、あの伝説的なラストシーンがあるからです。

物語が最高潮を迎え、観客の感情が極限まで揺さぶられた直後、カメラは魔法を解くようにゆっくりと引いていきます。映し出されるのは、セットの裏側、照明機材、そして忙しく動き回るスタッフたちの姿。

つい先ほどまで死闘を繰り広げ、血を流していた俳優たちが、満面の笑みで主題歌に合わせて踊り、練り歩く。この「これは映画ですよ」と種明かしをするメタ的な演出こそ、本作の真骨頂です。

このカーテンコールのようなエンディングによって、それまでの悲劇は一気に昇華されます。「撮影現場は過酷で、人生はままならない。けれど、映画という虚構を作るこの時間は、こんなにも幸福で、美しい」……そんな作り手たちの声が聞こえてくるようです。観客を現実へ引き戻しながらも、映画という嘘の素晴らしさをこれ以上ない形で肯定してみせる。これほど粋な終わり方を、私は他に知りません。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

完璧な名作たちが並ぶ私の棚で、この映画が少しだけ浮いて見えるのは、おそらくこの作品が持つ「体温」があまりに高いからでしょう。

『ロッキー』を観て拳を握りしめるように、『蒲田行進曲』を観るたびに、私は表現することの美しさと恐ろしさを思い知らされます。

映画を愛するすべての人に、そして何かに一生懸命になりすぎて自分を見失いそうになっている人に。

あの階段落ちの先にある、最高のカーテンコールを目撃してほしいと思います。

bitotabi
bitotabi

映画作りをテーマにした映画。どれも素晴らしいですが、日本の作品というだけでも感動が一味違います。かつ、本作は沸き立つような熱がある。

ダニー
ダニー

映画好きで見たことが無い人はぜひ観てみてね!

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