キャスリン・ビグロー監督が手掛けた政治スリラー映画『ハウス・オブ・ダイナマイト』は、エンターテイメントとしてだけでなく、現代世界が抱える最も深刻なリスクを突きつけるドキュメンタリーのような作品として話題を呼んでいます。
「世界はまるでダイナマイトで出来た家だ」という言葉が象徴するように、核ミサイルが飛び交う極限状況を、徹底した取材とリアルな視点で描き出しています。

このあまりにもリアルな視点が、ある意味、どんなホラー映画よりも恐怖を覚えます。

詳しく解説していくよ!
着弾まで19分 極限下のシミュレーション
物語は、米軍がアメリカ本土に向けて核ミサイルが飛来していることを発見するところから始まります。着弾までの猶予はわずか19分。
この映画の秀逸な点は、単一の視点から描くのではなく、危機管理室の大統領の判断から、アラスカの迎撃システム、軍の現場など、あらゆる角度からこの極限の事態を見せつけてくれる点にあります。



これは、もし実際に核攻撃を受けた場合、一体何が起こるのかという、リアルなシミュレーションを見せられているかのようです。監督は、さまざまな現場を取材し、その知見を基に極めて現実的な見解を示しています。

『シン・ゴジラ』は「もしゴジラが本当に東京に進出してきたら…」というシミュレーションでしたが、本作はいつ現実に起きてもおかしくない出来事なので緊張感が一層強いです。
ジャーナリズムの視点を持つキャスリン・ビグロー監督
監督を務めるのは、アカデミー賞受賞歴を持つキャスリン・ビグローです。彼女は、これまでにビン・ラディン関連の作戦や、原子炉爆発の危機など、ジャーナリズム的な視点と高いリアリティを持つ作品を数多く手掛けてきた女性監督として知られています。
本作でも、その徹底した取材力が遺憾なく発揮されています。

脆弱すぎる迎撃システムと核抑止の恐怖
劇中では、核兵器をめぐる現実が冷酷に突きつけられます。
大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、一旦宇宙に出てから地球に向かってくるため、迎撃が極めて困難です。迎撃システムのあるアラスカから発射しても、宇宙空間で約20分、地球に向かい始めてからはわずか90秒で着弾すると言われています。

迎撃の成功率は61%とされていますが、迎撃ミサイルは一発500億ドルと高額であり、アメリカですら44発しか保有していません。
一方で、ロシアはICBMを1500発も保有しており、迎撃しきれないことは明白です。この状況こそが、「どう考えても迎撃しきれない。それはまるでダイナマイトでできた家に住んでいるようなもの」という、本作のテーマを象徴しています。
また、北朝鮮が保有するミサイルは1発でも広島の原爆の18倍の威力があり、シカゴに着弾すれば瞬間の死者だけで1000万人に達するといった、核兵器の破壊力の恐ろしさも生々しく描かれています。
⚖️ 大統領の重すぎる決断「フットボール」
大統領が常に携帯を義務付けられている黒いカバン、通称「フットボール」の中には、核ミサイルの発射装置とマニュアルが入っています。

もし攻撃された場合、大統領は同程度の報復、中程度の報復、全弾ぶち込むという3つのオプションから、報復の度合いを瞬時に決定しなければなりません。報復をすれば、地球崩壊の危機となる可能性が伴います。
この、人類の運命を決める重すぎる決断と、それに挑む人々の葛藤が、本作の最大のドラマです。
さらに、現在の国防の主要ポストにプロフェッショナルがいないという、アメリカの抱える問題も提示されており、フィクションを超えた危機感を覚える作品となっています。
最後に問いかけられる「私たちの選択」
「ハウス・オブ・ダイナマイト」は、観客に緊張感を与えるだけでなく、核兵器を巡る国際情勢や、ひとたびボタンが押された際の避けられない破局、そして政治的・軍事的な判断の重さを突きつけます。
日本海にミサイルが落ちるニュースが「実験や撹乱」という意図も持っている可能性を鑑みれば、この映画が描く危機は決して遠い国の話ではありません。
報復の連鎖が地球崩壊の危機につながる現代において、私たち一人ひとりがこの「ダイナマイトの家」の住人であることを自覚し、そのリスクを直視することこそが、未来を考える上での重要な一歩となるでしょう。

日本でもある時期、よく北朝鮮からのミサイルアラートが鳴っている時期があり、当時は鈍麻していたように感じます。どこまで恐がればいいのか。難しいところですよね。

本当にミサイルありすぎて怖くなってきたよ。
X(旧Twitter)はこちら
https://twitter.com/bit0tabi
Instagramはこちら
https://www.instagram.com/bit0tabi/
Facebookはこちら
https://www.facebook.com/bit0tabi/
noteはこちら
https://note.com/bit0tabi


コメント