国民的アニメとして愛され続けるジブリ作品『となりのトトロ』。
その裏側には、単なるファンタジーでは語りきれない、日本の自然観や神々との関係性を描く深いテーマが隠されていることをご存知でしょうか。

実は、ちょっと怖いシーンもあるんです。

サツキとメイが体験する不思議な出来事から、改めて紐解いてみよう!
作品概要
- タイトル: となりのトトロ
- 公開年: 1989年
- 監督・脚本: 宮崎駿
- 音楽: 久石譲
- 声の出演: 坂本千夏(草壁サツキ)、日髙のり子(草壁メイ)、糸井重里(草壁タツオ)、島本須美(草壁靖子)
- あらすじ: 昭和30年頃の日本を舞台に、田舎に引っ越してきた小学6年生のサツキと4歳のメイの姉妹。二人は、家のそばにある大きな森に住む、不思議な生き物「トトロ」と出会います。そして、トトロやネコバスとの交流を通じて、日本の豊かな自然の神秘に触れていく物語。

序盤はまるでホラー?神々からのコンタクト
映画の序盤は、むしろホラー映画のような雰囲気が漂います。サツキとメイが引っ越してきた古びた家や、その周囲の森はどこか不気味さを感じさせ、以下のような現象が立て続けに起こります。
- 階段から転がり落ちるドングリ
- 屋根裏に住み着くまっくろくろすけ
- サツキを襲う突風
これらは、新しい住人であるサツキとメイに対し、森の主であるトトロたちが「歓迎」または「警告」として接触を試みていると解釈できます。
特に、ドングリはトトロたちの存在の誇示であり、突風はトトロがサツキの存在をはっきりと認識した証と考えることができるでしょう。まっくろくろすけは、サツキたちが住み始めたことで居場所を失い、新しい住居を探しに引っ越していくシーンがはっきりと映されています。

トトロは精霊か、はたまた神か?
『となりのトトロ』には、トトロが単なる精霊ではなく、より高次の存在であることを示唆するセリフや描写が複数登場します。
- サツキとメイの父は、トトロを「この森のヌシ(主)」と表現しています。
- 巨大なクスノキには、神聖な場所であることを示すしめ縄が巻かれています。
- バス停の稲荷社は、古くなってボロボロになっています。
これらの描写は、かつては人間と森の神々が密接に関わっていたものの、時代が流れるにつれてその関係が希薄になっている現状を物語っているのかもしれません。

また、制作当時の初期設定では、小トトロが109歳、中トトロが679歳、そして大トトロが1,302歳という具体的な年齢が考えられていたといいます。この途方もない年齢は、トトロが人間とは比べ物にならないほどの長い年月を生き、森の歴史を見守ってきた存在、つまり「神」や「精霊」に限りなく近い存在であることを強く示唆しています。

トトロが蒔かせた種の意味
トトロがサツキとメイにプレゼントした「ドングリ」は、単なる友好の印にとどまらない深い意味を持っています。これは、森の神々からの「自然を愛し、大切にする気持ち」を育んでほしいという願いが込められていると捉えることができます。
ドングリは成長してやがて大きな木となり、新たな森を育みます。この行為は、トトロたちと人間が協力し、共に自然を未来へ繋いでいくことの象徴です。

メイとサツキが参加する「木を生やす儀式」は、神聖な儀式であり、ドングリが芽を出したことは、トトロと人間が再び心を通わせたことを示す、重要なシーンと言えるでしょう。

神様は、忘れられないことや、大事にされること、ひいては信者を増やすことで、その影響力を高めるものです。なので、そういったねらいもまた、あったのかもしれません。
『火垂るの墓』との対比が示す宮崎駿の葛藤
この映画を語る上で、公開時に同時上映された『火垂るの墓』との対比は欠かせません。宮崎駿は、高畑勲監督が手掛けた『火垂るの墓』の持つ強烈なメッセージ性に、大層悔しがったと言われています。

メイと『火垂るの墓』の節子。一方は豊かな自然の中で家族の愛に包まれて生き、もう一方は過酷な戦争の末に命を落とすという、あまりにも対照的な運命が描かれています。不自由のない生活を送るメイと、生きることに精一杯だった節子。奇しくも二人の年齢はどちらも同じ4歳。宮崎駿は、ファンタジーを描いた自身の作品が、高畑監督のリアルな反戦映画と並べられたことに、表現者としての葛藤を抱えていたのかもしれません。
それぞれの作品が持つテーマ性の違いは、両監督の思想を象徴しており、この組み合わせで上映されたからこそ、それぞれの作品の持つメッセージがより深く浮かび上がると言えるでしょう。
「メイは死んでいる」という都市伝説は本当か?
この映画には、昔から「メイはすでに死んでいて、トトロは死後の世界への案内人である」という都市伝説が囁かれています。その根拠の一つとして、終盤で発見されたサンダルがメイのものであり、彼女が池で命を落としたとされています。しかし、この説は事実ではありません。
実際に映画をよく見ると、池で見つかったサンダルと、メイが履いていたサンダルは色や大きさは似ているのものの、デザインが違います。

制作サイドもこの都市伝説を公式に否定しており、サツキとメイが最後に母親の元を訪れるシーンは、姉妹が生きていることを明確に示しています。
この都市伝説は、作品に秘められた神秘性やホラー要素が拡大解釈されたものと言えるでしょう。しかし、それほど多くの人々の想像力を掻き立てるほど、『となりのトトロ』が奥深い物語を持っている証拠とも言えますね。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
『となりのトトロ』は、子供たちの無邪気な冒険物語としてだけでなく、日本の風土に根ざした自然観や神々の存在、そして人間と自然の関係性を深く問いかける作品です。
何気ない日常の中に、見えない世界との境界線が描かれ、私たちが失いつつある大切な何かを語りかけているのかもしれません。

今回の考察が、皆さんが改めてこの作品を観る際の新たな発見につながれば幸いです。

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