ホラー映画の世界は、常に我々の好奇心と恐怖心を同時に刺激する魅惑的なジャンルです。
しかし、時にその予測不可能な展開は、観る者に息をのむような緊張感を与え、スクリーン越しの登場人物たちの運命に固唾を飲むこともしばしば。
そんなホラー映画の世界で、もし自分が登場人物だったらどうするのか?
そんな究極の問いに、ユーモアと知性をもって答えてくれる一冊が、今回ご紹介する『ホラー映画で殺されない方法』(原題:How to Survive a Horror Movie: All the Skills to Avoid the Axe)です。

私は先日、このユニークなガイドブックを読破し、その奥深さと面白さにすっかり魅了されました。
おもしろおかしいネタ本としてだけではなく、ホラー映画というジャンルを深く理解し、愛するすべての人にとって必読の一冊だと確信しています。

早速本について紹介していくよ~。
概要:恐怖の法則を解き明かす、賢明なサバイバルマニュアル
『ホラー映画で殺されない方法』は、ホラー映画に登場する典型的なシチュエーションやキャラクターを詳細に分析し、それぞれの状況下で生き残るための実践的なアドバイスを提供してくれる、いわば「ホラー映画サバイバルマニュアル」です。
しかし、その内容は決して真面目一辺倒ではありません。著者の鋭い洞察力とユーモアセンスが随所に光り、読者は恐怖の法則を学びながらも、思わず吹き出してしまうようなファニーな視点でホラー映画の世界を楽しむことができます。

ゾンビに遭遇した際の対処法から、サイコキラーに追い詰められた時の脱出術、はたまた呪われた家から生きて帰るための心構えまで、あらゆるジャンルのホラー映画に共通する「あるある」を網羅。さらに、なぜかいつも助かってしまうヒロインの行動パターンや、真っ先に犠牲になる人物の特徴など、ホラー映画における定石を逆手に取った生存戦略が具体的に示されています。
本書は、ホラー映画のセオリーを理解することで、観客がより深く作品を楽しめるようになるだけでなく、万が一(ありえないことですが)自分がホラー映画の中に放り込まれたとしても、生き残る術を身につけられるという、なんとも実用的な(?)一冊なのです。
著者について:ホラー愛に満ちた専門家による珠玉の分析
著者のセス・グラハム=スミスは、アメリカの作家であり、ホラー、SF、ファンタジーといったジャンルに精通した脚本家でもあります。

彼の作品は常に、ジャンルへの深い愛情と、それを捻り、ユーモアを交えて再構築する遊び心が満ち溢れています。
特に、古典文学とホラーを融合させたユニークな作品で知られ、『高慢と偏見とゾンビ』や『大統領とリンカーン:ヴァンパイア・ハンター』といった、一度聞いたら忘れられないようなタイトルを持つベストセラーを生み出してきました。さらに、彼はその才能を活かし、ティム・バートン監督の映画『ダーク・シャドウ』(2012年)の脚本や、スティーヴン・キング原作のホラー映画『IT』(2017年)では製作総指揮、そしてカルト的な人気を誇るホラーシリーズのリブート版『チャイルド・プレイ』(2019年)の製作総指揮も務めています。

グラハム=スミスは、自らホラー映画の脚本や製作にも携わることで、単に批評家としてだけでなく、作り手の視点からもホラーの「お約束」や「法則」を深く理解しています。彼の筆致からは、ホラー映画を徹底的に愛し、その魅力を余すことなく伝えたいという情熱がひしひしと伝わってきます。だからこそ、本書は単なるお笑いネタ本ではなく、ホラー映画をより深く、多角的に楽しむための優れた入門書としても機能しているのです。
オススメポイント:ホラー映画の新しい扉を開く多角的な魅力
本書を読み終えて、私が特に素晴らしいと感じたポイントは以下の通りです。
1. ホラー映画を俯瞰してファニーに楽しむ視座をもてる
本書の最大の魅力は、なんと言ってもホラー映画を「俯瞰」し、「ファニー」な視点で楽しむという、これまでの鑑賞体験にはなかった新たな視座を提供してくれる点にあります。これまでは、スクリーンの中の恐怖にただただ身をすくめていたかもしれませんが、本書を読むことで、登場人物たちがなぜその行動を取るのか、なぜそのシチュエーションに陥るのか、という「ホラー映画の文法」を理解できるようになります。
例えば、なぜ主人公は、明らかに危険だとわかっているのに地下室へ降りていくのか? なぜ、携帯電話が通じない場所ばかりに逃げ込むのか? こういったホラー映画の「お約束」を、本書はユーモラスに分析し、時にツッコミを入れながら解説していきます。これにより、私たちは「またこのパターンか!」とニヤリとしながら、登場人物たちの「生存戦略」を予測するような、ゲーム感覚でホラー映画を鑑賞できるようになるのです。恐怖体験が、いつの間にか知的なパズルへと変貌を遂げる。これは、ホラー映画ファンにとってまさに革命的な体験と言えるでしょう。
2. 「あるある」を楽しめる! ホラー映画愛を深める共感の宝庫
ホラー映画には、誰もが一度は目にしたことのある「あるある」が満載です。本書は、そういった「あるある」をこれでもかとばかりに詰め込んでいます。例えば、「セックスしたカップルは真っ先に殺される」「警察はいつもあてにならない」「通信手段が使えなくなる」「何でもない物音に驚く」などなど。これらの「あるある」が、著者独自の分析とユーモアを交えて語られることで、読者は「そうそう、これこれ!」と膝を打ち、ホラー映画ファンとしての連帯感を覚えることでしょう。
また、これらの「あるある」を単なるネタとして消費するだけでなく、それがなぜホラー映画において定着したのか、その背景にある心理や物語の構造まで踏み込んで解説してくれるため、より深いレベルで「あるある」を楽しむことができます。自分のホラー映画鑑賞経験と照らし合わせながら読み進めることで、読者は自身のホラー映画愛を再確認し、さらに深めることができるはずです。
3. ホラー映画を紹介してくれるからより知識を広げられる
本書は、単にホラー映画のセオリーを解説するだけでなく、具体的な映画作品を例に挙げながら説明が進められます。そのため、ホラー映画の知識がそれほど深くない読者にとっても、本書をきっかけに多くの名作・珍作に触れることができる貴重な機会となります。
クラシックなホラー映画から、スラッシャー映画、ゾンビ映画、心霊ホラーまで、幅広いジャンルの作品が紹介されているため、自分の好きなジャンルを深掘りしたり、これまで敬遠していたジャンルに挑戦するきっかけにもなるでしょう。本書を読みながら、気になった映画をメモし、実際に鑑賞してみることで、ホラー映画の世界がさらに広がることは間違いありません。まさに、ホラー映画入門書としても、ベテランファンが新たな発見をするためのガイドブックとしても機能する一冊です。
4. ニッチな情報にニヤニヤできるホラー愛の細部に宿る神
そして、ホラー映画をこよなく愛する者にとってたまらないのが、本書に散りばめられた「ニッチな情報」の数々です。例えば、特定のホラー映画にしか登場しないような細かなルールや、特定のキャラクターが持つ独自の行動原理、あるいはホラー映画の制作背景にまつわる裏話など、一般的にはあまり知られていないような情報が、著者の博識ぶりを伺わせる形で散りばめられています。
こうしたニッチな情報は、まさに「ホラー愛の細部に宿る神」であり、コアなファンにとっては思わずニヤニヤしてしまうような「ご褒美」と言えるでしょう。映画の細かな描写や、登場人物の些細な行動一つ一つに隠された意味を読み解く喜びは、ホラー映画を深く愛する者だからこそ味わえる特権です。本書は、そうしたファンの好奇心を刺激し、より一層ホラー映画の世界に没頭させてくれる、珠玉の一冊なのです。
今日の映学
最後までお読みいただきありがとうございます。
『ホラー映画で殺されない方法』は、ホラー映画というジャンルを愛するすべての人に捧げる、ユニークで知的な、そして何よりも楽しい一冊です。単なるおふざけ本として片付けるには惜しいほど、ホラー映画の構造や法則を深く掘り下げ、観る者に新たな視点を提供してくれます。
この本を読み終えたあなたは、もはやホラー映画の犠牲者候補ではありません。あなたは、スクリーンの中で繰り広げられる恐怖を冷静に分析し、時にクスリと笑いながら、登場人物たちの命運を予測する「ホラー映画の達人」となるでしょう。

ホラー映画をこれまで以上に深く、そしてユーモラスに楽しむための究極のガイドブックとして、自信を持って本書を推薦します。

さあ、あなたもこの一冊を手に、ホラー映画の世界で生き残る術を学び、恐怖を笑いに変える新たな鑑賞体験に飛び込んでみませんか?
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