『ポルターガイスト』の裏側 スピルバーグの影と超常現象の謎

ホラー映画

1982年に公開されたホラー映画の傑作『ポルターガイスト』。

トビー・フーパーが監督を務めたこの作品は、単なる怖い映画というだけでなく、製作・脚本を担当したスティーブン・スピルバーグの強い影響を感じさせる作品としても知られています。

bitotabi
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今回は、そんな『ポルターガイスト』の裏側や、物語に散りばめられた謎について深掘りしていきましょう。

ダニー
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最近ホラーの名作が多いねぇ。

作品概要

  • 公開: 1982年
  • 監督: トビー・フーパー
  • 製作・脚本: スティーブン・スピルバーグ
  • 音楽: ジェリー・ゴールドスミス(当初ジョン・ウィリアムズが予定されていたが変更)

あらすじ:郊外の新興住宅地に住むフリーリング一家。ある日、末っ子のキャロル・アンがテレビを通じて奇妙な声と交信するようになる。やがて家の中でポルターガイスト現象が頻発し、キャロル・アンは異次元の世界に連れ去られてしまう。両親は超常現象の専門家や霊媒師の力を借り、娘を取り戻すために立ち向かう。

『ポルターガイスト』は公開当時、世界中で大きな反響を呼び、約7660万ドルの興行収入を記録する大ヒットとなりました。その斬新な特殊効果と、家族の愛を描いたストーリーは多くの観客を魅了し、80年代のホラー映画ブームを牽引する一作となりました。また、子供が超常現象に巻き込まれるという設定は、後の多くの作品に影響を与えています。

  • アカデミー賞: 3部門ノミネート(視覚効果賞、音響効果賞、作曲賞)

監督:スピルバーグの威光とフーパーの立場

公式にはトビー・フーパー(当時38歳)が監督を務めていますが、当時のスティーブン・スピルバーグ(当時35歳)はすでに『ジョーズ』(1975年)、『未知との遭遇』(1977年)、『レイダース/失われた聖櫃《アーク》』(1981年)といった大ヒット作を連発し、ハリウッドで絶大な影響力を持つ監督となっていました。対照的に、トビー・フーパーはカルト的な人気を誇るホラー映画『悪魔のいけにえ』(1974年)などで知られていたものの、商業的な大成功という点ではスピルバーグほどの地位を確立していませんでした。

3歳年下のスピルバーグが製作・脚本を手がけた『ポルターガイスト』の現場では、スピルバーグが実質的な指揮を執っていたという証言が多く聞かれます。俳優への演出指導や特殊効果のアイデア出しなど、彼の意向が強く反映されたことは想像に難くありません。フーパーとしては、複雑な思いもあったかもしれません。

音楽に関しても、スピルバーグ作品の常連であるジェリー・ゴールドスミスが担当しており、『未知との遭遇』などを彷彿とさせる、壮大で時に幻想的なスコアは、スピルバーグ作品らしさを色濃く感じさせます。

意外な事に、超常現象調査チームの一人が顔面の肉を剥がされる衝撃的なシーンでは、スピルバーグ自身が嬉々として演出を行ったという逸話も。フーパーの得意とするゴア描写とスピルバーグの演出が融合した、印象的なシーンと言えます。

 



印象的なシーンの裏側

  • アニメのような映像: 娘キャロル・アンが最初に出会う、テレビに現れる奇妙なアニメーションのような映像は、異次元への入り口を視覚的に表現したものです。
  • 積み上がる椅子: 母親が目を離した一瞬の隙に椅子が高く積み上がっているシーンは、巧妙なセットチェンジと編集技術によってノーカットのように見せています。
  • 母親が引きずり回されるシーン: 天井や壁を母親が這い回るシーンは、ワイヤーワークを駆使して撮影されました。このシーンで、ダイアン(母親)が激しいポルターガイスト現象に翻弄されながらも、下着が見えないように必死に押さえる仕草は、観る者に彼女の恐怖と人間的な脆さを強く印象づけました。この行動が脚本によるものか、ジョベス・ウィリアムズのアドリブによるものかは定かではありませんが、彼女のリアルな演技が光る瞬間と言えるでしょう。

エスパー要素、霊の目的、そして『ポルターガイスト2』

『ポルターガイスト』は、単なる幽霊屋敷ものという枠を超え、超能力(ESP)的な要素が物語の重要な鍵を握っています。娘のキャロル・アンは、ポルターガイスト現象とコミュニケーションを取る特別な力を持っており、その純粋で強い霊的な感受性が、霊たちにとって魅力的な存在として描かれています。霊媒師タンジーナが彼女を「とても強い光を持っている」と語るように、キャロル・アンの特異な能力が、ポルターガイスト現象の中心にあると言えるでしょう。霊たちは、彼女のその「光」に引き寄せられ、現世との繋がりを求めたり、彼女自身を彼らの世界へ連れ去ろうとしたと考えられます。

考察として、映画前半に起こる家具がひとりでに動いたり、スプーンやフォークが曲がったりするなどの一連の異常現象は、キャロル・アン自身の潜在的な超能力が引き起こしていた可能性も考えられます。 彼女の無意識の力が、周囲の物体に影響を与え、それがエスカレートしていく中で、より強大な霊的な存在を引き寄せてしまった、という解釈も成り立つかもしれません。

続編となる『ポルターガイスト2』では、この超能力的な要素がさらに掘り下げられます。キャロル・アンだけでなく、彼女の祖母(ダイアンの母親)も非常に強い透視能力を持っていることが明かされ、彼女たちの特別な感受性が、新たな脅威に立ち向かうための力となります。

この、感受性の強い子供や家族が超常現象に巻き込まれるという構図は、スタンリー・キューブリック監督の傑作ホラー『シャイニング』とも共通する点が見られます。『シャイニング』でも、息子のダニーが持つ特別な力「シャイニング」が、呪われたホテルで起こる異質な出来事と深く結びついていました。『ポルターガイスト』と『シャイニング』は、超常的な力を通して、家族の絆や恐怖を描いているという点で、類似したテーマを持っていると言えるかもしれません。



呪われた家

物語の背景には、家の建設前にそこが墓地であったという事実があります。開発業者が墓石だけを移動させたため、眠っていた霊たちが怒り、ポルターガイスト現象を引き起こしたとも考えられます。

こういった古典的な設定も大事にしている点が面白いですよね。

テレビと映画館、時代への風刺?

1982年当時、家庭へのテレビ普及が進み、映画館離れが懸念されていた時代でした。『ポルターガイスト』で、娘のキャロル・アンがテレビを通じて異次元と繋がってしまう描写は、単なる物語の導入以上の意味を持つかもしれません。

テレビを手軽な娯楽として捉える風潮に対し、点けっぱなしで寝てしまうような受動的な視聴習慣への警鐘、ひいては、より能動的な体験ができる映画館での映画鑑賞を促す、一種の風刺として読み解くこともできるのではないでしょうか。スピルバーグ自身、映画というメディアへの強い愛情を持つことで知られており、そうしたメッセージが込められていても不思議ではありません。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

『ポルターガイスト』は、当時すでにハリウッドの頂点に君臨していたスティーブン・スピルバーグのプロデュースと、異才トビー・フーパーの演出という、二つの才能が融合して生まれた稀有な作品です。スピルバーグの持つエンターテイメント性と、フーパーならではの恐怖演出が見事に調和し、従来の幽霊屋敷ものに斬新な視点を加えました。

古典的な幽霊の怨念という設定を基盤に、キャロル・アンの超能力という現代的な要素を掛け合わせることで、物語に深みと新奇性をもたらしています。さらに、当時最先端のセットやワイヤーワークを駆使した斬新な特殊撮影は、これまでにない視覚的な衝撃を生み出し、観る者を恐怖の世界へと引きずり込みます。

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古き良き幽霊譚の雰囲気と、革新的な映像技術が見事に融合した『ポルターガイスト』は、ホラー映画史に残る傑作として、今なお多くのファンを魅了し続けています。

ダニー
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フーパーとスピルバーグ、どっちの雰囲気も感じられる稀有な作品!

 

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