『チャップリンの移民』浪漫漂う移民の物語

コメディ映画

チャールズ・チャップリンがミューチュアル社時代後期に手がけた短編映画『移民』(1917年)。

揺れる船上でのコミカルな描写、アメリカンドリームを夢見る放浪者の姿は、観る者の心にどこか温かい郷愁と未来への希望を抱かせます。

特に、チャップリンの演じる「小さき放浪者」が新天地アメリカへと足を踏み入れる、その始まりを予感させるような浪漫を感じさせる作品です。

bitotabi
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この物語から、彼のアメリカにおける喜劇の数々が始まった、いわばエピソード0的な解釈を思わずしてしまう作品ですね。

ダニー
ダニー

30分以下の短い時間だけど、そう思うとグッとくるものがあるよね!

作品概要

  • 製作:1917年
  • 監督・脚本: チャールズ・チャップリン
  • 出演: チャールズ・チャップリン、エドナ・パーヴァイアンス、エリック・キャンベル
  • あらすじ: ヨーロッパからアメリカへと向かう移民船を舞台に、一文無しの放浪者(チャップリン)が、船内での騒動や、そこで出会う少女との淡い交流を通して、アメリカへと辿り着くまでを描きます。新天地での希望を胸に上陸するも、予期せぬ現実に直面する姿を、チャップリンならではのユーモアとペーソスで描いた作品です。

揺れる船の演出は?

揺れる船の演出は、当時の映画製作における創意工夫の賜物です。具体的な方法としては、以下の技術が用いられました。

  • セットの揺らし: 撮影セットの床全体を複数の人間が手動で揺らすという手法が基本でした。船内のセット、例えば食堂のセットなどは、ロッキングチェアのように揺れるように作られていました。
  • カメラワーク: 撮影には、カメラ自体を左右に揺らすことができる特殊な三脚が使用されました。カメラに重い振り子を取り付け、船の動きに合わせてカメラも動くようにすることで、揺れの効果をさらに高めています。
  • マイムと組み合わせた演技: チャップリン自身も、この揺れに合わせて体を大きく傾けたり、必死に手すりにつかまったりする演技を見せることで、その効果をさらに高めています。

これらの技術を組み合わせることで、荒波にもまれる船内の臨場感を効果的に表現しました。



船内の動き – 驚異的な身体能力

『移民』の揺れる船内で見せるチャップリンの動きは、単なるコミカルな演技を超え、彼の驚異的な身体能力を如実に示しています。コメディアンとしてのイメージが強い一方で、チャップリンは非常に運動神経に優れており、舞台俳優としてのキャリアを通じて培われたバランス感覚や身のこなしは卓越していました。

1917年当時、チャップリンは28歳前後であり、肉体的にもピークに近い時期でした。特筆すべきスポーツ歴といった記録は多くありませんが、彼の映画で見せる動き、例えば『サーカス』での綱渡りや、本作での予測不能な動きは、並外れた身体能力とそれを活かすための訓練の賜物と言えるでしょう。不安定な船上で、あたかも重力を感じさせないかのように跳ね回り、時には危険な体勢を平然とこなす彼の動きは、観客に笑いとともに、その身体能力の高さへの驚きを与えます。揺れる状況を逆手に取った、洗練されたアクションとも言えるでしょう。

赤狩り

1950年代、チャップリンはアメリカの赤狩りの標的となり、国外追放の憂き目に遭いました。その際、この『移民』における移民局員を蹴り飛ばすシーンが、反米的な演出であると一部で解釈されました。しかし、このシーンは物語の流れの中で、不当な扱いを受ける移民の怒りをユーモラスに表現したものであり、当時の社会状況に対するチャップリンなりの批判精神が込められていたとも言えるでしょう。

 



デカいウェイターは?

印象的なデカいウェイターを演じているのは、エリック・キャンベルです。

彼はチャップリンのミューチュアル社時代の作品に多く出演し、強面ながらもどこか抜けている悪役として、チャップリンのコメディに欠かせない存在でした。

『移民』でも、その巨体と横暴な態度で、チャップリン演じる放浪者を困らせる重要なキャラクターを演じています。

オチ – 強引な結婚と当時のコメディ

ラストシーンは、チャップリン演じる放浪者が、女性(エドナ・パーヴァイアンス)と、強引に結婚しようとする展開で終わります。戸惑いながらも結婚を強いられる様子は、現代の視点から見ると倫理的に問題があると感じられるかもしれません。

しかし、当時のコメディ映画においては、社会的な規範や個人の意思を無視した、突飛で強引な状況設定が笑いの要素として用いられることがありました。『移民』のラストも、異文化の中で生き抜くために必死な移民たちの、ある種滑稽な状況を描き出す意図があったと考えられます。現代の価値観からすると受け入れがたい描写ではありますが、当時の観客は、このような強引な展開の中に、チャップリンならではのナンセンスなユーモアを見出していたのでしょう。移民という不安定な立場の人々が、生きるためになりふり構っていられない状況を、誇張して描いたとも解釈できます。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

『チャップリンの移民』について解説しました。

bitotabi
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チャップリンの身体能力、工夫を凝らした撮影技法、そして小さき放浪者のオリジンとも感じるような非常に興味深い1本です。

ダニー
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ぜひ観てみてね!(YouTubeにあります)

 

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