チャップリンの『Work』不倫と肉体が目を引く

コメディ映画

チャップリンの『Work』を鑑賞しました。

チャップリン演じる放浪者が初めから定職についていることや、不倫がテーマの一つになっているというかなり珍しい作品です。

bitotabi
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見どころと共に、解説していきましょう。

ダニー
ダニー

まずは作品概要から!

作品概要

監督脚本: チャールズ・チャップリン

出演:

  • チャールズ・チャップリン(大工の見習い)
  • エドナ・パーヴァイアンス(家の妻)
  • チャールズ・インスリー(家の夫)
  • ビリー・アームストロング(大工の親方)
  • レオ・ホワイト(伯爵)

時代背景: 1915年、第一次世界大戦勃発直後のアメリカで製作されました。当時の社会は、急速な工業化と都市化が進んでおり、チャップリンの作品には、そうした社会における労働者や貧しい人々の生活が反映されていることがあります。ただし、本作は直接的に戦争や社会問題を扱ったものではありません。

あらすじ: 大工の親方(ビリー・アームストロング)と見習いのチャーリー(チャップリン)は、ある家の修理の仕事を請け負います。しかし、チャーリーはドジばかりで、壁紙をめちゃくちゃにしたり、ペンキをこぼしたりと、作業は全くはかどりません。家の主人(チャールズ・インスリー)は神経質で、家が混乱するたびに怒り心頭。さらに、そこに空気の読めない伯爵(レオ・ホワイト)が現れて事態をさらにややこしくします。

やがて、家には据え付けられていたストーブが忘れられた頃に突然爆発。家は木っ端みじんになり、住人たちは瓦礫の中から顔を出す始末。チャーリーは爆発したストーブの中から顔を出すという、ドタバタで終わるコメディです。

この作品は、チャップリンが初期に多く手がけた、ドタバタ喜劇の要素が強い作品の一つです。

チャップリンがはじめから働いてるのが珍しい

チャップリンの初期の作品では、放浪者(トランプ)が職にあぶれていたり、ひょんなことから騒動に巻き込まれ、その過程で一時的に仕事をすることはあっても、『Work』のように映画の冒頭から明確に「労働者」として登場し、その仕事の様子が主体的に描かれるのは少し珍しいかもしれません。

  • 初期作品の傾向: 多くの初期作品では、チャップリンは社会の枠組みから外れたキャラクターとして描かれることが多く、仕事はその日暮らしの手段であったり、騒動のきっかけとなることが多いです。例えば、『Mabel’s Strange Predicament(メーベルの窮境)』(1914) や『The Tramp(チャップリンの失恋)』(1915) などでは、定職についていないキャラクターとして登場します。
  • 『Work』の位置づけ: 『Work』はエッサネイ社時代の作品で、チャップリンがキャラクターをより深く掘り下げ始めた時期にあたります。この作品では、ペンキ職人という具体的な職業を通して、労働のドタバタや人間関係の滑稽さを描いています。この「労働」というテーマは、後の『Modern Times(モダン・タイムス)』(1936) などにも繋がっていく萌芽と言えるかもしれません。

筋肉質な腕が観られる

チャップリンは、その小柄な体格に似合わず、非常に身体能力が高く、アクロバティックな動きを得意としていました。実際に、彼の腕はしっかりと筋肉がついていたと言われています。

本作ではチャップリンが上着を脱ぎ、タンクトップ一枚になるシーンがあり、彼のたくましい二の腕を確認できます。

  • 身体表現の重要性: サイレント映画において、俳優の身体は言葉以上に多くのことを語ります。チャップリンの鍛えられた肉体は、彼のコミカルな動きやスラップスティックな演技を支える重要な要素でした。
  • 労働者としてのリアリティ: 『Work』でペンキ職人という肉体労働を演じる上で、彼の筋肉質な腕はキャラクターにリアリティを与えていたかもしれません。
  • ギャップ萌え?: 放浪者のイメージが強いチャップリンの意外な一面として、ファンにとっては魅力的に映った可能性もありますね。

 



適当な話でメイドを口説こうとするスケベな役

これはチャップリンの演じるキャラクターの典型的な一面とも言えますね。彼の演じるキャラクターは、しばしば女性に対して積極的(時には下心を持って)アプローチします。

本作では特にその印象が強いです。

  • リトル・トランプの多面性: 放浪者というと、純粋でロマンチストな面が強調されがちですが、初期の作品では特に、抜け目がなく、ちゃっかりしていて、女性に目がないといった人間臭い側面も描かれています。
  • コメディの要素: こうした「スケベ」な行動は、ドタバタコメディの中で笑いを誘う要素として機能しています。メイドとのやり取りは、しばしば階級差や男女間の駆け引きをコミカルに描くための舞台装置となります。
  • 当時の社会通念との関係: 当時のコメディ映画では、ある程度のお色気や下ネタは観客を楽しませる要素として受け入れられていた側面もあります。

記事では、この「スケベ」な役柄が、単なる下品さではなく、チャップリンのキャラクターの人間味や、当時のコメディの作法としてどのように機能しているのかを分析すると面白いでしょう。

妻の浮気相手が登場するって、当時的にはどう?

本作では、終盤に妻の浮気相手が登場します。

1915年当時、「妻の浮気」というテーマは、現代ほどオープンに語られるものではなかったかもしれませんが、実は決して目新しいものではありませんでした。

  • ヴィクトリア朝の道徳観の影響: 当時はまだヴィクトリア朝時代の道徳観が残っており、特に中流階級以上においては、夫婦の貞節は重んじられていました。しかし、その裏では、現実として不倫や家庭内の問題は存在していました。
  • 演劇や文学におけるテーマ: 19世紀後半から20世紀初頭の演劇や文学では、不倫はしばしばドラマチックなテーマとして扱われていました。ヘンリック・イプセンの『人形の家』(1879) などは、その代表例です。
  • 初期映画におけるメロドラマ: 初期のアメリカ映画では、メロドラマが人気ジャンルの一つであり、そこでは不倫や三角関係が描かれることも少なくありませんでした。ただし、多くの場合、最終的には道徳的な結末(不倫した側が罰を受けるなど)を迎えることが多かったです。
  • コメディとしての扱い: チャップリンの『Work』では、このテーマがシリアスなドラマとしてではなく、ドタバタコメディの要素として使われています。浮気相手が隠れたり、見つかりそうになったりするドタバタは、笑いを誘うためのものです。この「笑い飛ばす」というアプローチは、深刻なテーマを扱う上での一つの方法だったと言えるかもしれません。
  • 検閲の状況: 当時のアメリカ映画界には、まだ後のヘイズ・コード(1934年本格施行)ほど厳しい全国的な検閲規定はありませんでしたが、各州や都市には独自の検閲委員会が存在し、わいせつな表現や非道徳的な内容は問題視される可能性がありました。しかし、『Work』のようなコメディで、かつ直接的な性的描写がない場合は、比較的寛容だったと考えられます。

今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

チャップリンの『Work』について解説をお届けしました。

bitotabi
bitotabi

チャップリンの色々な側面が垣間見える、面白い作品です。

ダニー
ダニー

特に、恋愛事情が面白いね。

 

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