ホラー映画界に常に新たな衝撃をもたらし続けるA24が手掛ける最新作『ブリング・ハー・バック』は、その類稀なる恐怖演出と深く胸に突き刺さるテーマ性で、観客を戦慄の渦に巻き込みます。
『トーク・トゥ・ミー』で話題となったダニー・フィリッポウとマイケル・フィリッポウ監督とA24のタッグが再び実現したということで、気になる方も多いのではないでしょうか。
狂気と悲しみ、そして人間関係のねじれが織りなす悪夢のような物語は、観る者の心に深く刻み込まれることでしょう。

子役の演技の恐さにも注目なんだよ!

あの名ホラーへのオマージュも観られました。
ネタバレなしで解説していきます。
作品概要
- 年: 2025年
- 監督: ダニー・フィリッポウ マイケル・フィリッポウ
- 脚本: ダニー・フィリッポウ ビル・フィンツマン
- キャスト: サリー・ホーキンス ソラ・ウォン ジョナ・レン・フィリップス ビリー・バラット
- あらすじ: 父親の死後、里親のローラのもとに預けられたアンディとパイパーの兄妹。ローラは亡き娘を蘇らせるために恐ろしい儀式を企んでおり、兄妹はその狂気の計画に巻き込まれていく。
キャストについて
本作の恐怖を最大限に引き出すのは、才能溢れるキャスト陣の熱演によるところが大きいです。
- 狂気を体現する母役 母親役を演じたサリー・ホーキンスは、そのキャリアで数々の名演を見せてきた実力派女優です。『シェイプ・オブ・ウォーター』や『パディントン』『ロスト・キング』などで有名です。『シェイプ・オブ・ウォーター』では、話せない障害を持つという役どころでしたが、今回は障害者をサポートするような立ち位置。愛する娘を失った悲しみから狂気に囚われていく母親の姿を、時に繊細に、時に圧倒的な迫力で演じ切っています。彼女の過去の出演作での演技とは全く異なる、ゾッとさせるような新たな一面を本作で開花させています。

- 本当の視覚障害者である妹役 妹役のパイパーを演じたソラ・ウォン。彼女が実際に視覚障害者であるという事実は、役柄に驚くほどのリアリティをもたらしています。視覚に頼らない繊細な演技は、観客がパイパーの恐怖や混乱をより深く共感する助けとなり、物語に重層的な奥行きを与えています。また、本作が彼女の映画デビュー作という点も驚き。14歳の少女のこれからの活躍にも期待です。

- 鳥肌が立つほど不気味な子役 口のきけない甥オリバーを演じたジョナ・レン・フィリップスの演技は、まさに鳥肌もの。彼の発する言葉の代わりに、表情や身体表現だけで感情や苦しみを伝えるその能力は、見る者を圧倒します。特に、不気味な儀式に利用され、見る見るうちに変わり果てていく姿は、観客に深い衝撃と不快感を与え、物語の核となる恐怖を強烈に印象付けます。

前作『トーク・トゥ・ミー』との比較
両監督の前作『トーク・トゥ・ミー』は、「降霊って気持ちいい」という、その画期的なアイデアで注目を集めましたよね。

しかし、『ブリング・ハー・バック』は、さらにその領域をもう一歩先へ踏み込んだ作品と言えるでしょう。
『トーク・トゥ・ミー』でも見られたゴア表現は、本作でさらに磨きがかかっています。血しぶきや肉体が損傷する描写は、単なる視覚的なショックにとどまらず、物語の根底にある狂気と痛みをまざまざと突きつけてきます。

ゴアが苦手な人は注意が必要なレベルです。
また、恐怖演出においても本作は倍増しています。『トーク・トゥ・ミー』が若者の間の危険な遊びから生まれる恐怖を描いたのに対し、『ブリング・ハー・バック』は、より根源的で異質な「儀式」に根差した恐怖を提示します。ローラが行う悪魔的な儀式は、理解不能な行為でありながら、その不気味さと目的の狂気が、観客の心にじわじわとまとわりつき、深い不安感を与えます。特に、その儀式がもたらす肉体的、精神的な変貌は、観る者に強烈な印象を残し、まさに悪夢のような体験を提供します。

シャワーシーンはサイコのオマージュ
アンディが父親の死にトラウマを抱えながらシャワーを浴びるシーンは、映画史に名を刻むアルフレッド・ヒッチコック監督の傑作『サイコ』の有名なシャワーシーンへの明確なオマージュです。

水と血、暴力が交錯するこのシーンは、『サイコ』がそうであったように、観客に心理的な緊張と視覚的な不快感を同時に与えます。単なる模倣に終わらず、アンディの精神的な苦悩と父親の影が重なり合うことで、このシーンは本作独自の意味合いを持ち、観客を物語の深淵へと引き込みます。
ポスターについて
本作のポスターによくご注目ください。

ある単語だけ、表記が逆になってますよね。
これ、めちゃくちゃよくできた仕掛けだなと思います。
どうしてこの表記なのかは、ぜひ実際に映画を観て確認してみてくださいね。
感想
最後に、感想を少しだけ。ネタバレはしないように伝えますのでご安心を。
本作のテーマ自体は、まあありがちっちゃありがちなんです。アイデアでいうと、前作『トーク・トゥ・ミー』のほうがオリジナリティは感じます。
でも、恐怖度は圧倒的にこちら。とにかく甥っ子役の子どもの演技が巧すぎます。本当に恐いです。
ちょっと、目を覆いたくなるレベルのシーンも演じています。ハンニバル・レクターを演じたアンソニー・ホプキンスに迫る狂気とでもいいましょうか。
サリー・ホーキンスももちろんいい演技してます。いい感じに狂ってます。
ゴア表現がかなりきついですが、ホラー好きにはオススメしたい一本ですね。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
『ブリング・ハー・バック』について解説しました。
A24らしい雰囲気とエンターテインメント性が融合した本作は、ホラーファンのみならず、人間の心理や家族のあり方について深く考えさせられる作品と言えるでしょう。
観終わった後も、その不気味な余韻と、狂気の淵に堕ちた人間の悲しみが、あなたの心から離れることはないはずです。

何より、甥っ子役のジョナ・レン・フィリップスの凄まじい演技力に引き込まれます。

よくもまあ、こんなやばい役を演じさせたよね。
ぜひ、この衝撃の体験を劇場で味わってみてください。
X(旧Twitter)はこちら
https://twitter.com/bit0tabi
Instagramはこちら
https://www.instagram.com/bit0tabi/
Facebookはこちら
https://www.facebook.com/bit0tabi/
noteはこちら
https://note.com/bit0tabi
コメント