夢と教訓の皮をかぶったトラウマ製造機? ディズニー版『ピノキオ』は立派なホラー映画だ!

映画

ディズニーの古典アニメーション『ピノキオ』(1940年)は、誰もが知る名作です。

しかし、大人になって改めて観ると、その描写の過激さ、そして恐ろしさにハッとさせられるのではないでしょうか。

この物語は、道徳的な教訓に留まらず、人間の弱さや誘惑、そしてそれに伴う「罰」を極めて生々しく描いた、ほとんどホラーと呼べるダークファンタジーの側面を持っています。

bitotabi
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なぜ、『ピノキオ』にこれほどの恐怖を感じるのか。その主要なトラウマ要素を解説していきます。

ダニー
ダニー

なんだかドキドキするよ…

1. 友情が崩壊し、人間の尊厳が失われる恐怖:快楽の島(プレジャー・アイランド)のロバ化

本作最大級の恐怖シーンといえば、欲望の赴くままに振る舞った少年たちがロバに変えられてしまう「快楽の島」のエピソードでしょう。

  • 身体変異(ボディ・ホラー)の生々しさ: 仲間であるランプウィックがロバに変わる際の描写は、生理的な嫌悪感を伴います。耳や尻尾が生え、手足が蹄に変わっていく際の断末魔のような叫び声は、子供心に深く突き刺さります。
  • 人間性の喪失というテーマ: 恐ろしいのは、ロバになった姿だけではありません。彼らはロバ化させられた後、二度と人間に戻れず、「労働力」として売り飛ばされるという冷酷な現実が待っています。これは、無知と放蕩の結果、人間としての自由と尊厳を完全に剥奪されるという、社会的な恐怖をも含んでいます。

彼らは文字通り「一生」をロバとして生きる運命を背負わされます。「ロバになっちゃった!」で済まない、この逃れられない絶望こそが、このシーンを真のホラーにしています。

bitotabi
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双方のシーン、見せ方がめちゃくちゃ怖いですし、解決シーンが全くないんです。これは怖ろしい。

2. 自然の巨大な力と孤独な死の予感:クジラ(モンストロ)の脅威

ピノキオが対峙するクジラ「モンストロ」は、ディズニー映画における「自然の圧倒的な、抗いがたい力」の象徴です。

大きな怪物というだけでなく、その獰猛さと狂暴性は、観客に「生きたまま飲み込まれる」という極限の恐怖を与えます。飲み込まれた後の胃袋での生活も、いつモンストロが再度暴れ出すか分からない、密室での極度の緊張感に満ちています。

そして、モンストロからの逃走シーン。嵐の中で繰り広げられる絶望的な追跡劇と、津波のようなクジラの勢いは、映画の緊張感を最高潮に高め、観客を孤独な死の予感へと誘います。

bitotabi
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とにかく絵が恐い。信じられないほど恐いビジュアルです。



3. 幼い命が沈む静かな絶望:ピノキオの「溺死」

モンストロとの格闘の末、ピノキオが海中で動かなくなり、水面に浮かび上がる一連の描写は、本作のクライマックスにおける最も悲痛なシーンです。

  • 音の演出が示す「終わり」: 海中での動きが止まり、そして続くゼペットの慟哭。その静けさが、観客に「彼は本当に死んでしまった」という認識を強烈に与えます。
  • 「奇跡の復活」を際立たせるためのダークな仕掛け: 命が宿った人形とはいえ、「死」の描写をここまで明確に描くことは、ディズニー映画としては異例です。これは、後の「本物の人間になる」という奇跡を際立たせるために、物語が一旦、最も暗い結末を迎えるという、周到な演出上の仕掛けであると言えます。
bitotabi
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こんな残酷なシーンがあったのかと、唖然としました。

【深掘り】海底シーンの「こもった声」の正体は?

恐怖感を増幅させる要素として、海底のシーンの「音」は極めて重要です。海中でピノキオとクリケットが会話する際、彼らの声は、いかにも水中で話しているような「こもった、遠い響き」を持っています。

これは、当時の音響技術を駆使して作られた特殊なサウンドエフェクトです。

1940年当時には水中でのクリアな録音は不可能であったため、以下のような手法が組み合わされました。

  1. 残響(リバーブ)の付加とEQ処理: 通常通り録音した声に、デジタル技術のない時代に長い残響(エコー)をアナログ機材で加え、さらに低音域を強調し、高音域を抑える(ローパスフィルター)ことで、水を通したような「こもった」質感を再現しています。
  2. 物理的エフェクト(フォーリー): マイクをコップや布などで覆う、あるいは声を大きな容器の中で反響させて再録音するなど、アナログな手法を駆使して、水に囲まれた臨場感を創り出していたと推測されます。

この音響効果が、海中の「隔絶された息苦しさ」を増幅させ、観客の恐怖心を刺激する重要な役割を果たしているのです。


今日の映学

最後までお読みいただきありがとうございます。

『ピノキオ』は、ただの「良い子になりなさい」という教訓の物語ではありません。

それをぼんやり伝えるような甘いものでもない。

「誘惑に負けると、どういう恐ろしい報いを受けるのか」を徹底的なホラー描写をもって示した、非常に稀有な作品と言えるでしょう。

bitotabi
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このダークな側面こそが、時を超えて多くの人々の記憶に残り続ける、真の理由なのかもしれません。

ダニー
ダニー

小さい時に観たらトラウマになっちゃうかもね…。

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